レッツ不意打ち
飛んできた何かに驚く暇も無く、ザバーンと大きな音を立てて川のど真ん中に放り投げられた。
冷たい水に全身がびっくりして、視界が一瞬白飛びする。
幸いそこまで深かったり流れが速かったりしてるわけじゃないから、命の危険はないと思う。
こういうときは大体あの子が関わってるよなぁ、とこっちの世界で出来たできた親友の姿を思い浮かべながら不満げに水中でブクブクと息を吐いて、ゆっくり立ち上がる。
『大丈夫かい?』
「うん、大丈夫。」
盾を足がかりにしてボートに戻った後、辺りをきょろきょろ見渡してこの事件の犯人を探す。
とりあえずあの子にはぐしょぐしょになった服を乾かしてもらわないといけない。
かなり集中しているからか、いつもより遠くまではっきり見えるし、森の中を動く何かの音もよく聞こえる。
ふと、あるところで茂みが動いたのが見えた、と同時に音が止んだ。そこにいるのか。
すばしっこいあの子を捕まえるには、今のぼく一人の力じゃ難しい。だけど。
<ルキ、力を貸して。>
『いいよ、任せて。』
ルキがそう言うと同時に、水を吸ってずっしり重たくなった服の重さも感じないくらい、身体がふっと軽くなった。
<ありがとう、これなら...!>
ボートの縁にしゃがみ、犯人がいるであろう茂みをめがけて飛びかかった。
衝撃で一回転したボートに目もくれず、空中で狙いを定め、姿勢を整える。
ボートから急に飛んでくるのは予想していなかったらしく、その場で目を丸くして固まっている白い犯人の姿がくっきりと目に写った。
「捕まえた...!」
いつもはぼくがやられる側だったけど、今回はぼくが上だ。
ぼくを川に落とした犯人...ガウラくんは観念した、というように両手を挙げて降参のポーズをとっている。
「うへぇ、冷たいよぉ...」
「まったく、誰のせいだと思ってるのさ。」
「ごめんごめん、まさかこんな時間に誰かいると思わなくて。」
「それはこっちのセリフだよ。こんな時間に起きてるなんて珍しいね。」
「でしょ、おねーちゃんもまだ起きてないよ。」
『この子は友達かい?』
あーーー...そうか。どうせならもうこの機会に紹介しちゃおうか。
「そういえばまた尻尾生えたんだねカルミアくん!」
「えっ!?」
慌てて頭とお尻を触って確認すると、確かにふわふわした感触が手に伝わってきた。
やっぱりルキが何か...?
『いや、ぼくはキミの身体能力をパワーアップさせただけだよ。』
え〜...?じゃあやっぱりぼく自身が?だとしたらいまいち発動する条件がわからないなぁ...。
ガウラくんはこの隙に抜け出したらしく、ぶるぶる身体を震わせてぼくにつけられた水滴を払っている。
「まぁいいや、とりあえずぼくを乾かしてよ。」
「わかった、ちゃんと踏ん張ってね?」
「...ちょっと、ぼくを吹き飛ば...!」
そう言い終わらないうちに、下手するとリンドウですら吹き飛ばされそうなくらいの、ものすごい強さの突風がぼくを襲った。
「待って強い強い強い!ルキたすけてぇぇぇぇ!」
『しょうがないなぁ...』
頭の中に直接響いているはずの呆れた声すらかき消されそうな風の中、足にぐっと力を入れる。
それでもまだ飛ばされそうだ...いやどれだけ強いんだよこの風!
展開した盾に捕まりながら全力で踏ん張っていると、いきなりふっと風が止んだ。
「うわぁ!?」
押してくる力が急になくなったせいで前に倒れ込みそうになったところを、すんでのところで踏みとどまった。
ガウラくんをじっと睨むと「てへっ☆」と言わんばかりの顔をしていたので、飛びかかって全身をめちゃくちゃにわしゃわしゃもふもふしてやった。




