わからせ
「ふぅ…。」
「にゃぁ、流石に…やりすぎじゃないかなぁ…?」
ガウラくんをめちゃくちゃに(撫で回)した後、お互い息を切らしながらゆっくりと立ち上がる。
ガウラくんのもふもふな毛並みはボサボサになり、服も乱れている。目はとろんと今にも溶けてしまいそうに潤んでいて、ちょっとやりすぎたかな、と思わないこともない。
それでもまだやり足りない感じはあるけれど、ちゃんと服は乾いてるしまぁこれくらいで許してあげてもいいか。
「はぅ…。そういえば、さっき叫んでたルキって誰のこと?新しく来た人?」
あぁそうだった。紹介しようと思ってたんだった。と言っても、どう紹介したものか。紹介するの難しいし本人に自己紹介してもらおうか。
〈てことでルキ、お願い。〉
『はいはい、わかったよ。』
ぼくの口は閉じているのに、どこからか声が聞こえたことにガウラくんは驚いて、ぶんぶん頭を振りながら声の出所を探している。
『違う違う、ここだよ。』
「え!?カルミアくん!?」
「違うよ、ほらここ。」
そう言って胸のブローチを指差すと、ガウラくんはようやく見つけられたみたいだ。
『そうそう、ここ。』
「アクセサリーが喋った!?!?」
『アクセサリーというより、あの気味悪い人が言うには魔導具?っていうものらしいよ。』
「魔導具ってオルレアさんとかが持ってるあの?」
まだ他の住民に会ったことのないルキの代わりにこくりと頷く。
「魔導具って喋るものなの…?」
『例の人曰くボクは特別らしいよ。』
姿は見えないけれど、きっとドヤ顔をしているんだろうなと簡単に想像できるほど誇らしげな声でそう言い放つ。ガウラくんはまだぽかんとしていて、頭の処理がしきれていない、という様子だ。
「んーと、要するにすごいってこと?」
『その通り。すごくすごいのさ。』
簡単を通り越してあほっぽい感じになったけれど、なんとなくガウラくんも理解したようで、今度は目をきらきら輝かせている。
『そういえば、キミの名前は?』
「そうだった、僕はガウラ!よろしくね!君がルキで合ってる?」
『合ってるよ。よろしく。』
さて、やっとお互いの紹介を済ませられた。
だけどなんだかガウラくんがうずうずそわそわしてるように見える。
「どうしたのガウラくん?なんかそわそわしてるけど。」
「えへ、バレちゃった?」
そう言うとぼくの胸…ルキが居るブローチを指差してこう言った。
「ルキってすっごくすごいんでしょ?なら、どんな感じかちょっと確かめてみたいな〜って!」
『いいとも。けど確かめるってどうやって?』
「なぁに、簡単だよ。ここで僕と戦ってくれればいい。」
そう言ったガウラくんの口元は吊り上がっていて、真っ白くてギザギザした歯を覗かせていた。
「戦うって言ってもルキはこれだし…」
『これって言うな!…でも、ボクが戦えないのは事実だ。』
「うーん…でもさ、魔法は使えるんでしょ?」
『まぁ、使えるけども。』
「じゃあさ、カルミアくんに代わりに戦ってもらって、ルキが魔法でサポートするってのはどう?」
『わかった、それでいこう。』
…。
………。
「はぁ!?ぼく!?」
「仕方ないじゃんかぁ。ルキが戦えないんだし。」
「えぇ…?」
なんだか厄介なことに巻き込まれた感じがするなぁ…。
「それとももしかして負けるのが怖いとか〜?」
「はぁ?」
ふーん?そんなこと言っちゃうんだ。へぇ?そっかそっかぁ。そっちがその気ならこっちだって。
いつの間にか消えていた耳と尻尾が、今度はあると自覚できるほどはっきり出現した。今なら思うように扱える気さえする。
〈ルキ、やるよ。〉
元の世界からの相棒に心の中で短く、しかし強く合図する。
『ふふ、わかったよ。』
そう返事したルキの声は何故か笑っていた。
ガウラくんを見ると、あちらも準備万端みたいだ。こちらも重心を落として、構える。
「また鳴かせてやる…!」
「やってみなよ!」
気づけば、ぼくの顔にも笑みが浮かんでいた。
煽られたらわからせないとねぇ!




