寄り添い合って
緑色の光が、今度は倒れた2人の身体を包み、弾ける。ガウラに使ったものよりも強い光に思わず目を瞑る。
再び目を開けると、時を戻したように綺麗さっぱり元通りの姿の奴らがいた。
ヤ・ベーはいきなりカッと目を開けると、狂ったように大声で笑い始めた。
「ヒャハハハハハハハハハハハハ!!!素晴らしい!まったく素晴らしい!!まさかこれほどまでとは!私達はしてやられてしまったようだねローズ!」
「そのようですね、ドクター。ですが、これからですよ。」
「その通りだね、さぁ実験を続けようじゃないかね!」
未だ気味悪く笑いながら、ゆっくり、ゆらゆらと立ち上がる。心底楽しそうに笑う顔は口角が不自然なほど吊り上がっていて、気持ち悪い、という一言に尽きる。
それにしても、まだやる気なのこいつら...!
「ガウラくん!アイリスさん!」
「大丈夫かお前ら!」
不意に、後ろからカルミアと、リンドウの声。振り返ると、カルミアとリンドウ、少し遅れてオルレアとヤツリがこちらに向かってきている。走り回ったのだろうか、オルレアとヤツリの息がゼェゼェと上がっている。
「2人を呼ぶのに、ゼェ...時間がかかってね。大丈夫、ハァ...だったかい..?」
絶え絶えな息を落ち着かせながらそう言うオルレアに対し、こちらははっきりと
「「余裕。」」
と同時に返す。こちらには援軍が来た。さぁ、奴らはどう来る?まだ立ち向かってくるつもりなのか。お互い様子を見合ってまだ状況は動かない。
一瞬の静寂を破ったのは、何かに気づいたらしいカルミアの驚いた声だった。
「人間…!?」
その声が奴に聞こえたのかどうかはわからないが、奴らも動き始めた。
「ふむ、こうなってしまってはデータを取る余裕も無いかね?」
「流石に不利すぎるかと思います。」
「そうだね、逃げようかローズ。点火だ。」
「承知しました、ドクター。」
そう言うと機械女はヤ・ベーを抱き抱え、膝を畳んだ。直後、凄まじい勢いで跳躍し、飛び上がったと思えば、背中側、本来なら尻尾がある位置から何やら炎が噴き出している。
「待って!話を!」
「さらばだ諸君!ごきげんよう!ヒャハハハハハ!!!」
カルミアの引き留める声は聞き入れられず、奴らはそのまま飛び去ってしまった。
ようやく嵐が去っていったような感覚になり、深くため息を吐いた。
「はぁぁぁ…疲れた…。」
「僕たちの研究室の案内は、また今度の方がいいかな?」
「ええ、そうして頂戴。あの子とお話しをしなきゃいけないし。」
そう言いガウラのことをチラッと見ると、決まりの悪そうな、なんとも言えない顔で、私から目を逸らしていた。
そのまま解散となり、それぞれの居た場所へ帰っていった。ただ1人カルミアは何か考え事をしていたのかぼーっとしていたのかしばらく立ち尽くしていたが、それに気づき声をかける前に何処かへ行ってしまった。
「さて、2人きりになったことだし、何があったのか教えてもらおうかしら。」
「えーっとぉ…」
「大丈夫よ、怒ったりしないから。」
言いにくそうにしているガウラに笑いながらそう言うと、安心したらしく私が到着するまで何があったか話し始めた。
。
○
◯
後ろからくぐもった声が聞こえて振り返ると、紙袋を被った変な人と、青い薔薇の飾りを頭に着けた、青い女の人がいた。
紙袋を着けた怪しい人にはついていくなとおねーちゃんに何度も言い聞かせられていたので、警戒してじっと身構える。
「誰?おねーちゃんは居ないよ。」
紙袋の人は顎に手を当ててふむ、と呟いた後僕を見つめ、まぁいいかとまた呟いた。
「ガウラクンだね?ちょっと手伝ってくれないかね?」
「...何をさせるつもり?」
いつでも逃げ出せるように構えておく。二人とも雰囲気が他のみんなと違う感じがして不気味だ。
そんな僕の様子を見て、なだめるように笑った。
「ヒャヒャ、そんなに警戒しなくても問題ない。データが欲しくてね、この子と戦ってくれるだけでいいのだよ。」
そう言いながら青い女の人の方をぽんと叩いた。
戦うだけでいいのか...力を試すのに良いかもしれない。勝てたらおねーちゃんに自慢しちゃおう。
「いいよ、こてんぱんにされて泣いちゃだめだよ?」
自信満々にそう言い放ち、逃げようとしていた身体を戦闘態勢に切り替える。
深呼吸し、相手をじっと見つめ、構える。相手は手のひらをこちらに向けて、何かを撃とうとしている。
何をする気かわからないけど、そもそもやらせなければいい話だ。足に風を纏わせ、一直線に飛び込んだ。
◯
○
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「そしたら、あの茨に足掴まれてそのままボコボコにされちゃって...」
「まったくもう...」
てへ、と笑うガウラの頭を思いっきりわしゃわしゃしてから、視線をガウラの顔に移す。
今までのあどけない可愛らしさと元気の中に、どこかたくましさが垣間見えた気がした。
いつの間にこんなに成長していたんだろうと寂しさと喜びが混じった変な感情になるが、それでもこの子はまだまだ子供だ。私が守ってあげないと...いや、それは違うな。
「ねぇガウラきゅん。」
「なぁに?おねーちゃん。」
「私がガウラきゅんを守るから、ガウラきゅんも私を守ってね。」
それを聞いたガウラきゅんはきょとんと不思議そうな顔をしたが、すぐに
「うん!」
と元気な声が響いた。あぁ、このままずっとかわいいままでいてくれないかなぁ、なんて考えがよぎったが、ふるふると頭を横に振ってその考えを振り落とす。成長したって何があったってこの子がこの子であることに変わりはない。ただ、私はこのkと一緒に居られればそれでいい。
やがて日が沈み、ツキヨソウがぽわぽわと優しい光を放ち始めた。
「よし、ごはんにしよっか!」
「わーい!」




