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風は火と共に

ユナのライブ良かった…


ガウラの手を取り、再び立ち上がる。

紙袋はローズという名らしい女の後ろで腕を組みこちらを見ている。随分と舐められたものだ。


さっき掴まれた手を見て、感覚を思い出す。何故かやけに冷たかった。それにあの目と声。おそらく機械か何かだろうか。


ならバラバラにしてもまたいつか復活してくるはず。まぁ今回は好都合だ。気兼ねなくスクラップにしてやれるから。


深呼吸し、構える。両手足に青い炎が灯り、揺らぐことなく煌々と燃えている。


横を見ると、ガウラも同じ構えを取っている。両手足に纏っているのは炎ではなく風だが。

そんな姿に口元を綻ばせつつ、問う。


「やれる?」

「もちろん!今度は負けないよ!」


呼吸を合わせ、ぴたり同じタイミングで走り出す。


対する機械女は棒立ちでこちらを見ている。


「舐めやがって…ッ!」


牽制として火球を放つが、ひょいと容易く躱されてしまう。まぁこれは想定内。


この間にガウラは懐に潜り込んでいる。足下に旋風が巻き起こり、竜巻の如く攻撃を仕掛けている。私もそれに合わせて攻撃を仕掛ける。


練習も訓練もしたことは無いのに、お互いの邪魔をすることなく、むしろ互いの隙を埋め合うような完璧なコンビネーション。さすが私のガウラきゅん、と思いちらっと彼の方を見ると、彼の顔にも楽しそうな笑みが浮かんでいるのが見えた。


2人の熱がどんどん高まっていく。今ならなんだってできそう。いやできる。身体の火も勢いを増していく。


不意に、ボッ、と何かに火がつくような音が鳴った。音の方を見ると、ガウラが纏っている風に火が点いている。私の火が移って引火してしまったのか。このままでは燃えてしまうが…


「大丈夫!消さないで!」


そう言われてしまっては消すわけにはいかない。

それに、今ならなんでもできるんだ。燃やす対象くらい指定できる!


急に足元の石畳がボゴっと盛り上がり、ぶっとい茨が伸び、私たちの足に絡みつく。機械女は能面のような顔の口元をしてやったと言わんばかりに歪ませた。だが…


「「燃えろ!」」


異口同音に叫び、茨を焼き切る。その程度では障害になり得ない。


「「草は火に弱いってお父さんに教わらなかったの?」」


煽るように笑いながらそう言うと、機械女の誇らしげな顔は動揺と悔しさたっぷりな顔に変わる。何で動いてるかは知らないけど、人間らしいところもあるじゃない。


そんな状況を見かねた紙袋が口を挟んできた。


「ふむ、なら私も相手をしようか。こういうのは苦手なんだがね」


そう言うと紙袋は前に出て、チェーンソーを構える。ドドドド、と猛々しい音が響き、本能的な恐怖を掻き立てられる。今まで数々の「被検体」をバラしてきた道具。あれを喰らってはひとたまりも無い。


アイツ自身の強さは未知数だがどうするか…

そう思っていると、背中をちょんちょんと突かれる。


「おねーちゃん、ちょっとあいつら足止めして。」

「わかった、任せなさい。」


そう言うとガウラの顔つきがキリッと変わる。

あー好き…じゃない、きっと何か、大技を出すつもりなんだろう。なら私は最大限サポートする!


「高く、もっと高く…」


私が前を向くと、ガウラは後ろで何か唱え始めた。なるほど、これを邪魔させなきゃ良いのね。

じゃあ私も新技を披露しちゃおうかしら。


こちらの動きに気づいたのか、紙袋達も仕掛けに来る。大振りな動きで振り回されたチェーンソーを躱しながら、向かってくる茨を焼き切る。

ガウラには絶対に向かわせない!


「風にょっ…あぁもう噛んじゃった!」


かわいい〜〜!!あぁクソ、悔しがってる顔を見る余裕はないか。鬱陶しいなぁこいつら!


「大丈夫、落ち着いて!もう一回!」


攻撃をいなしながらそう叫ぶ。ガウラは深呼吸し、再び詠唱を始めた。今のやりとりで、何かしようとしていることに気づいたらしく、矛先がガウラに向く。


「させない!」


両手を開き、2人の敵に向けて、握る。

すると、無数の火球が発生し、瞬く間に2人を囲う。これぞさっき思いついた新技「キツネビ」。

ふふ、殴る蹴る投げるだけが芸じゃないのよ。


後ろではビュォォ、と暴風が吹き荒れる音。そろそろ唱え終わる頃合いか。


「『ウィンドブースト』!」


という叫び声と共に、奴らの足元に巨大な竜巻が発生する。竜巻は炎を巻き込み、炎の渦となって奴らを切り裂き焼き焦がす。


風が収まった後、そこにはボロボロの機械女と研究者が横たわっていた。被っていた紙袋は今の攻撃で燃え尽きてしまったらしく、今なら奴の素顔が見れる。


「やった!大成功だよ!!」


はしゃぐガウラを思いっきり抱きしめる。

いきなりのことでうわっと驚いた声を漏らしていたが、気にせずに抱きしめる力を強める。


「よく頑張ったね…ほんとに、もうダメかと……」


さっき泣き止んだはずなのに、気付けばまた涙がぼろぼろと溢れ出す。


「えへへ、心配させてごめんなさい。」

「ほんとにそうね、後でいっぱいお話聞かせてもらうから…。」


もう一度ガウラをぎゅっとしてから涙を拭い、あいつはどんな惨めな顔で寝てるんだと思い、確認しようと歩き出す。




倒れた奴の顔を覗き込んでみると、そこにあったのは私たちのような獣人の毛に覆われた顔ではなく、カルミアと同じ種族であることを示す平坦な顔と、病的な青白さの、ほとんどの毛のない肌だった。


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