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再点火

前回は実際に傷つけられてはいなかったし、何かされる前に助けることが出来た。だが今度はなんだ。ボロボロにされ、守ることも出来なかった。


こいつらのことは当然として、不甲斐ない自分が許せない。ガウラを見ると、かすかに動いている。死んではいないみたいだが、あれだけやられれば死ぬほど痛かったはずだ。


「こらこら、やり過ぎじゃないかローズ。」


叱ってはいるものの、言葉とは裏腹にどこか嬉しそうに言うその声を聞いた瞬間、全身のあらゆる水分が沸騰する感覚に襲われた。


今度という今度は許さない。こいつはここで殺す。

あちらはまだ私に気づいていない。仕掛けるなら今!


右手をぐっと強く握り、ありったけの怒りと殺意を込めて固める。右手首のあたりから真っ青な炎がゴォ、吹き出し、たちまち拳を包み込む。いつも通りの赤い炎ではなく、完全燃焼を示すどこまでも澄んだ青色。


無防備なあいつの頭に狙いを定め、きれいに舗装された石畳の地面を踏み砕く。身体がロケットのように吹っ飛び、一直線に加速する。


あの時よりも更に火力が上がっているのを感じる。これなら確実に、次の瞬間にはあいつの頭は見事にひしゃげている………はずだった。


隣に立っていた青い女がすんでのところで私に気づき、ギリギリ火の着いてないところをガシッと掴まれる。華奢な細腕は攻撃の勢いを殺しきって尚私を離さない。


「離せ…ッ!」


「ドクター、どうしますか?」


平坦な、機械のような声の青い女は振り返り、黒衣の紙袋に問いかける。

紙袋はようやく私に気づいたようで、まるで何事も無いかのように話しかける。


「おや、キミか。悪いが邪魔を…」


そこまで言った所で、紙袋は口を止める。そして私を数秒見た後、ふむ、と呟いた。


「ローズ、離してやりなさい。」

「はい、ドクター。」


掴む手が緩んだ瞬間、すぐに後ろへ跳び間合いを切る。私を止めたんだ、相当やるに違いない。まずは力量を……


なんだ?紙袋の手が緑色に光り始めた。何をするつもりか知らないが私なら見切れる、問題はない。いや違う。手の向く先は私じゃなくて…ガウラ。この野郎、まさかトドメを刺すつもりなのか。


奴の手の光は、徐々に強さを増していく。

このままじゃまずい!


「やめろぉぉぉぉ!!!」


今まで出した事もない、魂ごと全てを震わせる絶叫と共に、文字通りの火の玉ストレートを全力でぶん投げる。


しかし一足遅かったようで、緑の光はガウラを包み、弾けた。投げた火球も手元が狂ったのか紙袋の端を掠り、彼方へと消えていった。


生きる意味だとさえ思っていた最愛の彼を失った絶望に耐えきれなくなり、膝から崩れ落ちる。まだ僅かに揺れる炎も涙によって消されていく。


世界から音が消え、紙袋の研究者の淡々とした言葉だけが聞こえる。。


「丁度良かった。2対1、そして2対2のデータも欲しくてね。」


何を言っているんだこいつは。ガウラを殺しておいて。だめだ、火が付かない。私はもう....


「おねーちゃん!!」


あの子が呼ぶ声がする。でもこの声は、きっと私の脳が勝手に作った幻聴だろう。


「おねーちゃんってば!」


やめてくれ、もうあの子はもういないんだ。いっそ私もそこへ....


不意に、がくがくと肩を揺さぶられる。幻覚もここまできたか、もう終わりかな。

そう思って顔を上げ目を開けると、涙で歪んだ視界の先に、ぼんやりと白い影が映る。

そんなわけないよと目を拭い、再び影があった方を見る。


「は...?幻覚...?」


今度ははっきりと、死んだと思っていたあの子が、心配そうな顔で私を覗き込んでいるのが見えた。


「幻覚じゃないよ。ほら、ちゃんとここにいるから。」


直後、ふわふわと柔らかい腕が私をぎゅっと抱きしめた。彼の体温がじんわりと伝わり、これは夢でも幻覚でもなんでもないと優しく教えられる。


「ほら立っておねーちゃん。一緒にあいつらやっつけちゃお?」


そう言うと最愛の彼は手を差し出し、私の心に薪を焚べた。

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