口を動かすのも大事
「威力を決めるのは意志力だ。要するに気持ちが強けりゃ強いほど魔法も強くなる。」
「どうやって強くするのさ?」
「1番わかりやすいのはブチギレることだが、お前みたいな奴は難しいだろう。そこで出てくるのが『詠唱』だ。」
「えいしょう?」
あまり聞き慣れない言葉に思わず鸚鵡返しになってしまう。首を傾げる僕を見て、リンドウは困って「うーむ…」と唸る。けどすぐに、何か思いついたのかぱん、と手を叩き口を開いた。
「ガウラ、ちょっと飛んでみろ。」
「はぁ?」
「いいから、ほら。」
何が何だかわからないけど、急かされるまま地面を踏み締め真上にジャンプ。そのまま魔法を発動し、空を切ってさらに高く飛び上がる。
「これでいいー!?」
「おう!戻ってこい!」
魔法を解除し、重力に逆らわずそのまま地面へと引き寄せられていく。この、ひゅーっとどんどん落ちていく感覚はいつになってもあまり好きになれない。衝撃を一瞬だけ風を起こして和らげて着地。舞い上がった砂埃が鼻に入ってくしゃみしてしまう。
「それで、何だったの?」
「今、ただ念じるだけで魔法を使っただろ?」
「だろも何もそれしかないじゃないか、って言いたそうな顔だな。」
「なんでわかったの!?」
「まぁ聞け、詠唱は発動の前に呪文を唱えて威力を上げる技だ。」
「心配するな、呪文は最初からあるわけじゃない。何かの本から文を持ってきてもいいし、自分で考えたっていい。」
「詠唱が何かはわかったけど、なんでそれで魔法が強くなるの?」
「詠唱があった方がやるぞって気持ちが強くなるだろ?その気持ちと言葉に釣られて周囲にあるマナが集まってきて魔法に使えるマナ量が増えるからだな。」
そして何よりかっこいい、と自慢げに腕を組んで笑った。
「最後に1つ。詠唱の長さにほとんど制限は無い。極端に言えば一言でも、本1冊分でも良い…はずだ。多分。長いほどマナが集まって強くなるがその分言いづらいし、逆もそうだ。」
「なんで曖昧なんだよ?」
「何せ詠唱を知ってるのは俺だけ…なんだが、カルミアはどうして…」
「え?」
「なんでもねぇ、とにかく例が少なすぎるってこった。」
リンドウの授業が終わり、帰り道。
飛んでるんじゃなくて、走り回ってるだけ、と言われたのがずっと頭にがんがん響いて離れない。
その声は繰り返す度に大きくなって………
「うるっさい!!」
賑やかな森に、僕の叫び声が反響する。鳥たちがくすくすと笑ってる…気がする。
そこまで言うならやってやる。深く息を吐いて、大きく吸う。呪文はもっと後でよく考えようと思ったけど、いっそもうこの気持ちに任せてしまえ。
「高く、もっと上へ!」
鳥や動物たちの声が止み、辺りに静寂が満ちる。
「疾く、もっと前へ!」
空気が揺らぎ、木の葉がひらりと落ちていく。
「風よ唄え!空を切り裂け!」
轟々と風が吹き荒れ、僕を中心に渦を巻く。
「全部全部突き抜けろ!」
胸が高鳴る。気分が上がる。
「『ウィンドブースト』!!」
風を全身に纏い、視界の端が霞んで見えなくなるくらいの速さで空へと撃ち上がる。
「ひゃっっほーー!!」
僕、今ほんとに飛んでる!飛べてる!
両手を広げて、風を切る感覚を全力で感じ取る。
今までの走り回るやり方じゃなくて、自由自在に空を僕のものにできてる。これならいつまでも、どこまでも飛んで行けそうだ。
ふと下を見ると、僕たちのテントや湖、森や時計塔など、島全体の景色が目に映った。今度おねーちゃんやカルミアくんにも見せてあげたいな。
そうだ、飛べるようになったところをおねーちゃんにも見てもらおう。
そう思ってテントの場所に降り立つ。地面に足が触れると纏っていた風が解き放たれ、木々を揺らす。
「ただいまー!!」
返事はない。どこかに出掛けてるのかな?
じゃあ先にカルミアくんに見せようと思ったときだった。
「おや、1人かね?」
少しくぐもった声が後ろから聞こえた。
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