もっと高く
「おねーちゃん」
「なぁに?」
「僕、強くなりたい。」
「大丈夫だよ、いざとなったら私が守るし。」
「それじゃダメなんだ!」
僕の言葉におねーちゃんは驚いた顔をした。でも、僕だってずっとおねーちゃんに甘え続けるわけにもいかない。
「僕だって、僕だっておねーちゃんやカルミアくんたちを守りたい!」
「よく言った!」
いきなり予想してなかった所から声が聞こえてきた。
「誰!?…ってなんだリンドウか。」
「なんだってなんだよおいコラ」
「いででで、ぐりぐりするのやめてよ〜!」
思いっきり絡まれていると、火の玉がリンドウの頬をかすめて飛んできた。そのまま後ろの木にぶつかり、ドォンと音を立てて消えた。火の玉が当たった部分は抉れて、周りが焦げてぷすぷすと煙が上がっている。
「離れろ。次はお前を焼く。」
炎とは対照的な冷たい目と声。あのリンドウでさえ僕を絞める腕が少し震えている。
「わかったわかった、やめてくれ頼むから。」
やっと解放されたけど、おねーちゃんに聞こえないくらいの小声で「怖ぇ〜…」と呟いていたのは聞き逃さなかった。まぁ、怒らせたら怖いのは正直僕もわかる。
「それで、何しに来たのよ?」
「ガウラとカルミアの様子を見ようと思ってな。カルミアはどこだ?」
「そうね、多分オルレアさん達の家じゃないかしら。」
「ちゃんと元に戻ってたよ!」
「そうか…そいつは良かった。」
リンドウは安心しきった顔でため息を吐き、胸を撫で下ろした。あれ?そういえば。
「リンドウも倒れてたけど大丈夫だったの?」
「あぁ、問題ねぇ。ありゃただのマナ切れだ。」
マナ切れ…
ふと、リンドウが放った特大魔法が脳裏に浮かぶ。カルミアくんを止めきれはしなかったものの、あの白紫の閃光は確実に、まともに喰らえばただでは済まない威力を持っていた。そうだ、あれが出来れば僕ももっと強くなれるはず。
「ねぇリンドウ。僕にもあのすごい魔法教えてよ。」
リンドウは「あぁ?」と嫌そうな返事をしたけど、僕の顔を見ると
「ハッ、小せえクセに良い眼してるじゃねぇか。いいぜ、お前を鍛えてやる。」
にっと笑ってそう言ってくれた。
リンドウの黒い腕が僕の体を抱え、そのままひょいっと軽く持ち上げる。なんだか空を飛んでるみたいだ。
「てことでちょっと借りてくぜ。」
「ちょっと!どこに連れてくつもり!?」
「なぁに、心配はいらん!すぐに返す!」
そう言うと翼を広げ、勢いよく空へ飛び上がる。
あっという間におねーちゃんの姿が小さくなっていった。
「まったく…。あの子はどうしてあんなに可愛いのかしら。」
抱えている腕が僕のお腹を締め付ける。
僕が落ちないためなんだろうけど、普通に苦しいし僕だって飛べる。
ただ、風を切って進む感覚だけは心地良い。
着いた場所は、リンドウの家の近くの砂浜。
カルミアくんが暴走した跡が残っている。
「ゔ〜っ、あんなに強く絞めなくたっていいじゃん…。僕だって飛べるんだしさ…。」
「飛ぶって言ったってお前は空を走り回ってるだけだ。本当に飛ぶ感覚は今みてぇに飛んでみねぇとわかんねぇもんだろ?」
うーん?言ってることはわかるけど、何が言いたいのかはわかんないぞ。
「いいか、魔法の限界は意志と想像力の限界。これは知ってるだろ?」
こくり、と頷く。
オルレアさんたちがそんなことを言っていた気がする。
「だがお前は、ただ空を走り回ってるだけで、本当に飛んでるわけじゃねぇ。」
「何が言いたいのさ?」
「お前には可能性があるって言ってんだよ。お前はその魔法を覚醒したとき何を想っていた?何を願っていた?」
僕の、願い?それは……
「飛びたかった。速く、高くへ行きたかった。」
「まぁ、それもあるだろう。だがお前の魔法は『飛行』じゃない。『風』なんだ。もっと、強く願ったものがあるんだろ?」
風…そうだ、風だ!
「風になりたかった!風みたいにどこまでも飛んで行きたかった!おねーちゃん達と一緒に!」
ずっと願っていたはずのものを再び思い出して、心に、声に熱がこもる。そんな僕の様子を見てリンドウは豪快に笑い、わしゃわしゃと僕の頭を撫でる。
「それを思い出せたんなら良い。もう、お前の魔法は『風』なんだってことを忘れんなよ。速く飛ぶ以外にもやれることは沢山あるんだからな。」
「うん!ありがとう!」
「さぁ、次はお待ちかね、魔法の威力を高める方法についてを教えてやるよ。」
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