温度
鳥のささやきで目を覚ます。空の色が変わっている。いつの間にか寝ちゃってたみたいだ。
いつものベッドじゃなく、硬いベンチで寝たせいか身体が痛い。起き上がるのもめんどくさいしこのまま二度寝でも....
ぐぎゅ〜〜〜〜〜〜
だめだ、お腹すいた。そういえば昨日からまったく食べてないんだっけか。
どうしようか、ペンタスさんが何か作ってくれたりしてないかなぁ。想像するだけでまたお腹が鳴りそう。
ゆっくり起き上がり、固まった身体をほぐすよう大きく伸びをして家路につく。
木々の間を抜け、一応ノックしてからドアを開ける。
「おはようございま〜す...」
「おかえりカルミアくん。」
「ひっ」
はっきり声とか顔に出てるわけじゃないけど、ペンタスさんすごい怒ってるような...
いつもの優しい笑顔が今は怖い。
「ガウラくんとリンドウが一緒だったから大丈夫だとは思ってたけど、まさか朝帰りなんて...」
「ごめんなさいっ!」
やっぱり怒ってる〜!
「ふふ、そんなに縮こまらなくても、別に叩いたりしないよ?」
「へ?」
あれ?なんでぼくこんな....
あぁそうだ、ちゃんとしてなきゃぶたれるから。
守らないと打ちどころが悪いと息ができなくなる。
痛いのも苦しいのも嫌だ。誰も、お母さんでさえも助けてくれなかった。そうだ、そうだった。だからぼくは.....
『少し思い出したみたいだね。』
!?頭の中で声がする。答えようと口を開いても声が音にならない。
『大丈夫。声に出さなくてもボクには聞こえるよ。それと、ボクの声はキミ以外には聞こえない。』
『なんでボクがいるって思ってるでしょ。言ったでしょ?そばにいるって。だからキミのことはなんでもわかるのさ。そう、「なんでも」ね。』
『さて、続きはまた今度。今日みたいに起こしてくれたらまた話そう。』
「カ…ア…!」
「…ルミ…く…!」
「カルミアくん!」
肩を掴まれ、意識が現実へと引き戻される。心音が頭に響いてうるさいし、冷や汗で服が肌にくっついて気持ち悪い。
「大丈夫?」
「...はい、ちょっと嫌なこと思い出しちゃって。」
これ以上心配させないよう、精一杯取り繕った笑みを浮かべて言う。引きつってないかな、大丈夫かな。
「え...?」
不意に、ふわっ、と暖かくて、柔らかい羽に身体を包まれる。
「もう、大丈夫だよ」
とだけ言い、ペンタスさんはそっとぼくの頭を撫で、抱きしめている。優しく、だけどしっかり抱きしめられているせいでペンタスさんの表情までは見えない。
陽だまりのような暖かさに身体を預けているうちに、いつの間にか、顔がびしゃびしゃになってしまっていた。
「お腹空いたでしょ、ご飯用意するね。」
そう言うと棚から本を取り出し、コンロに手をかざした。火が灯り、置かれていた鍋が温められていく。ふつふつと煮える音が耳を打ち、バターや野菜の香ばしい香りが鼻をくすぐる。
「いただきます」
涙でくしゃくしゃになった顔を拭い、出された料理を口に運ぶ。空腹も相まって、食べる手が止まらずあっという間に全て食べてしまった。ペンタスさんは「そんなに急いで食べなくていいのに」と笑っていたけど、丸一日くらい食べてなかったし、美味しいから仕方ない。それを伝えると、そっか、と今度は嬉しそうに笑った。
いつの間にか心に冷たく刺さってあた氷のトゲが、少し解けていった気がした。
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