一難去って カルミア編
祝30話
読んでくれているあなたに感謝。
これからもよろしくお願いします。
「もうやめてよかったのかい?」
暗がりから、知らない誰かの、だけどどこか懐かしい声が聞こえてきた。
「なんのこと?」
「復讐さ、君を傷つけたあの男へのね。」
「リンドウのこと?」
「リンドウ?誰だいそれは。そんな名前じゃなかっただろう?」
だめだ、ますますよくわからなくなってくる。
「だからわかんないよ。それに、君が誰かもわからないし。」
「まさか全部忘れてしまったの?寂しいなぁ、親友だったじゃないか。」
親友だって?ガウラくん...じゃないよね。それに「だった」って...
ぼくの親友...いや、そんなまさか。心当たりがないわけじゃない。そうだとしたら「あの男」が誰のことなのかもわかる。でもそんなはずはない。だってここにいるはずはないから。
「その様子だと気付いたみたいだね。よかったよかった。」
「待って!なんで君が...!」
「ボクも君ともっと話したいけど、残念ながらもう時間みたいだ。」
「....!」
ああだめだ、なぜか名前が出てこない!
「またね、ボクはずっと君のそばにいるよ。」
「あ、起きた!おはよ、カルミアくん!」
「おはよ、ガウラくん」
白くて、ひんやりした壁と床。ここは...ガウラくんの家かな。
さっきのは夢だったのかな。ぼんやりしてよく覚えてないけど、確かそばにいるって,,,
ガウラくんは相変わらず笑顔が眩しい。あれ?
「ほっぺ怪我してる?どうしたの?」
ガウラくんははっとした様子で慌てて傷を手で隠す。
「大丈夫、ちょっと木の枝に掠っただけ。なんでもないよ!」
引っかかるものはあるけど、本人がそう言うならあまり深くは訊かないでおこう。
「そういえばぼくはどうしてここに?」
「覚えてないの?リンドウに蹴られてそのまま気絶しちゃってたから運んで来たんだよ。」
そうだっけ?まだ何かあったような気もするけど、確かにあの後の記憶はない。
もしかしたら、ガウラくんの傷はリンドウと戦ったときにできたのかも。
「起きたのね、二人とも」
「アイリスさん!」
「おねーちゃん!」
ガウラくんはアイリスさんの顔を見るやいなや抱きついていった。自分からアイリスさんに抱きつきに行くのは珍しい気がする。
「ふへ、ガウラきゅん...?」
さすがのアイリスさんも一瞬戸惑って固まったけど、すぐに口元が緩んでしまった。
「海岸の方ですごい光が見えたから何事かと思って見に行ったの。そしたら二人が倒れてて。ほんとびっくりさせないでよね?」
「「ごめんなさ〜い」」
「まったく...無事でよかった。」
これ以上邪魔をするのも悪い気がしたから、2人にお礼を伝えて、オレンジに染まった道を歩き出した。
噴水広場のベンチに腰掛け、ぼんやりと夢の内容を思い出す。
「ずっとそばにいる、か...」
それが本当なら今も近くにいるはずなんだけど、周りを見渡しても誰もいない。ここにいる動物のどれかに化けているとかなのかな。それが1番可能性がありそうだけど、どの子なのかわからないな。
ふと、ポケットに入れっぱなしだったブローチのことを思い出した。
取り出してみると、何故か前より輝きが増している気がする。
もしかしてこのブローチに.....?
「...まさかね。」
さすがにそれはないよな、と思い直し再びブローチをポケットに放り投げた。
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