全身全霊
課題は3つだ。
1つ目 どうやって攻撃を躱す、または防ぐか。
2つ目 どうやってあのガードを崩すか。
3つ目 これが最も重要。どうやってあのカルミアを止めるか。
1つ目はともかく2つ目は簡単だ。あの盾を全て、とは言わずとも大部分を攻撃に回させればいい。問題はどうやってそれを凌いで攻撃まで持っていくか。3つ目に関しては情報がなさすぎる。暴走なんて初めてだ。強いて言うなら、ただ殴ってもあまり効果は無さそう、というか本人の身体能力や体術が強すぎて殴る蹴るだと通らないことくらいか。
「「行け」」
とうとう、無慈悲な命令が下されると、おぞましい量の花が一斉にこちらに向かって飛んでくる。
花びらは固まったままの直線的な攻撃。これならまだ避けきれる。
飛んできた花を跳んで回避。カルミアの無機質で冷たい殺意を宿した両目は未だこちらをはっきりと捉えている。まだ何か_____?
不意にごう、と下へと強い風が吹く。体勢が崩れ地面へと降ろされる。この風はガウラか?まさか寝返ったのか?
すぐ上でヒュンと風を切り裂く音。なるほど、ガウラが居なければ切り裂かれていたのは俺だったのか。
「すまねぇ、助かった!」
「気をつけてよ!」
相手はまだ魔法を覚醒して間もない、とはいえ油断は禁物か。舐めてたら本当に死ぬ。ぴしゃり、と両頬を叩き気合を入れ直す。まずはあの厄介な盾を消す。これはあくまで予想だが、いきなりこれほどまで魔法が強化されたのには『詠唱』が絡んでいるはず。それなら納得がいくし、一度解除させればすぐには再使用できないはず。『詠唱』は俺しか知らないと思っていたが、いつの間に気付いたのか。いや、そんなことは今はどうでもいい。
魔法はいわば意志の力。一瞬でも気を失えば解除される....はずだ。確証を持って言えることはこの場にないが、今はこの推論に賭けるしかない。
「ガウラ!少しあいつを引き付けられるか!?」
「一人で!?あれを!?無理無理無理無理!」
「30秒でいい!機動力を活かせ!頼んだぞ!」
「ちょっとリンドウ!」
これでこっちは『とっておき』に専念できる。さぁ、正真正銘全身全霊全マナを注ぎ込んだ一撃を叩き込んでやる。
◇
あーもう、大変な役目を押し付けられちゃった。カルミアくんはまだリンドウを見ている。まずは狙いを僕に移さないといけない、んだけどどうしようか。とりあえず大声?そうだ、石か何か飛ばしてみようか。
適当な小石を拾い、真上へ投げる。落ちてきたタイミングに合わせて、蹴る!
蹴り飛ばされた小石はドンピシャでカルミアくんの頭へ向かう、けどギリギリ避けられた。
カルミアくんの怖い顔がこちらを向く。
「こっちだぞーーーー!!」
よし、多分注意はこっちに向いた。ここまでで10秒。あと20秒はあの攻撃を凌がなきゃいけな___________
「うわぁぁぁぁ!!」
いきなり全力ぶっぱはズルじゃん!上下左右、そして前を囲うような配置の攻撃。確実に傷つけるつもりなのか、容赦がない。後ろに飛んで逃げようとしても追いかけてくる。
「ちょっとくらい手加減してよぉぉぉぉ!」
カルミアくんからの返答は追加の攻撃だけ。いつもの優しいカルミアくんはどこに行ったんだろう。冷たい刃が頬を掠めていく。頬が熱くなり、鋭い痛みが奔る。視界の端で赤い何かが飛び散っていったのは見なかったことにしよう。
飛び回って避けるのもそろそろ限界が近い。いい加減30秒は経ったはず。リンドウは何をしてるの??
◇
よし、ガウラに注目が行ったみたいだ。こっちもやるか。
大きく息を吸って、吐く。再び吸った空気を、今度は声と変え、喉を震わせる。
「我は龍。全の宙を統べる龍。」
人差し指の先をカルミアの方に向け、親指を立てて狙いを定める。
「我が肉体は雷と共に在り」
噛んだら最初からやり直し。だがガウラにこれ以上の負担はかけられない。
「我が魂は守るべき仲間と共に在る」
緊張で震える手を無理矢理押さえつける。
「我が翼は空を撃ちて宙を舞い」
全神経を照準に、全マナを指先に込める。
「我が両の手足は如何なる障壁をも打ち砕く!」
クソ、動き回るせいで狙いにくい…!
「雷よ!我が言の葉に応えよ!」
なんだ?カルミアが止まった…?ここを逃すわけにはいかねぇ。詠唱も終わる。ここで決める!
「穿て!」
全身、そして周囲の地面にまでバチバチと散る電気が全て指先の一点に集まる。吹き荒ぶ風も既に意識の外にある。
止まってくれカルミア……!
「『ドラゴニック・ライトニング』!」
『ドラゴニック・ライトニング』
全てを焼き溶かすあの煉獄の炎への憧憬と、更なる力への渇望を。
あいつらの前では強くてカッコいい兄貴分でなくちゃいけねぇからな。




