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「……」
「おい。……おーい。盟しか任務内容知らないぞー。……反応がない。屍のようだ」
「大体お前のせいだろ」
榛原の呼びかけや東雲の頬ツンツンに臨波が反応しなくなってしまった。南無。
「仕方ない。とりあえず、はいコレ。俺と盟の『適正テスト』結果と『不適合性』診断結果」
榛原はそう言ってオレに資料を差し出した。
これから共同で任務をするなら、ちゃんと頭に入れておこう。
まずは臨波。
『臨波 盟(所属……諜報部)
適正テスト結果
情報支援……S
近接戦闘……B
戦闘支援……A
特殊工作……B
精神衛生……A』
……えーと。
「結構武闘派なんだな」
「高校の時はヤンキーしてたからね。喧嘩もそこそこしてたよ……俺のせいで巻き込まれることの方が多かったけど」
「ヤンキー……?」
ヤンキーって柄には全然見えない。
むしろ委員長タイプじゃないのか。
それはさておき、臨波の『不適合性』は……やっぱり、東雲から聞いていた通り『千里眼』か。
基本的に全てのものが透けて見える。普段は負担を軽減する為に目隠しを装着していて、それでやっと一般人並みの視界になっている。尚、その状態でも集中すれば全方位を視認することはできる模様。目隠しを外せば、一方向には最大十キロ、全方位には最大五キロ認識できる。負担が大きすぎると、目から流血する。
と、そんな感じか。
……え、目隠しでどうにかなる辺り羨ましい。
オレなんか完全遮音ヘッドホンしてても、徒歩十分の距離の学校での生活音が聞こえるんだが。
「ちなみに、あの『救』党首の宇正さんに会ったことあるらしい。なんならスカウトされたって。それでバイト先をここに決めたんだって」
「えぇ……」
ノリが軽すぎだろ。本当に同一人物か?成り代わってない?もしくは榛原と入れ替わったか。
次に、榛原の資料に目を通す。
『榛原 朔(所属……実務部)
情報支援……C
近接戦闘……A
戦闘支援……A
特殊工作……A
精神衛生……S』
「俺も昔は若くてさー。よく喧嘩してたんだよね。で、警察とは大変お世話になってたんだけど、そしたら宇正さんに目をつけられてたらしい。……まあそんなの知らなくて、単純に、盟がここに入ったって言うから、盟バカ真面目すぎて潰れないかなーって思って追いかけたんだけど」
『昔は』って今も若いだろとか、警察に大変お世話になるってなんでそんなまで喧嘩してたのかとか、『救』党首とかいう大物に目をつけられるとかどんな規模の喧嘩だったんだとか、色々ツッコミどころはあるけどそれは置いておいて。
榛原、何だかんだ臨波のこと心配して追っかけるっていう思いやりはあったんだな。普通に良い奴じゃねえか。
……まあ、からかいすぎているようには思うが、それも榛原なりのやり方なのかもしれない。
で、榛原の『不適合性』は『完全適応』。毒、電気、高温、低温、圧力、放射線など様々な外部刺激を複数回受けると、耐性ができて無効になるというもの。デメリットは特にないとか。
「喧嘩したり、怪我して病院で骨折の検査でレントゲン撮られたり、紫外線浴びたりしてたら、いつの間にかこうなってた。いやー、日光浴するなら放射線だよね。青酸カリはエナドリにちょうどいい」
「そう思ってんのお前だけだよ」
何言ってんだこいつ。
そして不良同士の喧嘩で毒とか持ち出すな。殺意しかないじゃないか。
「ながれー。いざなみがお話したいってー」
情報共有が終わったところで、ずっと臨波を看ていた東雲からそう声がかかる。
やっと立ち直ったようだ。
ちょうど良かった。さて、任務の詳細を聞くか。
ーーー
臨波から共有された『解決』任務は、なるほど確かにテロ事件とも関係がありそうだ。
最近、市内で『爆弾』を使った犯罪が多発している。
その『爆弾』は同じような形式をしていて、同一犯が作成している疑いがある。
爆弾魔を特定し、爆弾の無効化と爆弾魔を『終了』することで、爆弾の件の収束を図れ。
……というのが任務内容らしい。
『爆弾魔』がいるというのは、ギドウに警察が事情聴取をした結果分かったことだ。なんでも、爆弾の原材料を回収して、それと引き換えに六つを指定の場所に仕掛けてもらったとか。
つまり、次に爆弾事件があれば、そこに爆弾魔がいるかもしれない訳だな。
「一応、一通り街を見たけど。ボクが見える範囲では爆弾魔のアジトらしきところはなかったね。街中にあったら楽だったんだけど」
「そりゃそうだろ。街中にアジトなんてあってみろ、爆弾の音とかオレも聞こえてるはずだ。……ちなみに、アジトがあったらどうする気だったんだ?」
「当たり前じゃん。突撃するんだよ。今回は最強の矛と最強の盾があるんだから、使わない手はない」
「……侵入した瞬間に起爆されたらどうすんだ?よしんば榛原は耐えたとして、東雲は危なくね?」
「あっ」
【悲報】臨波、脳筋だった。
「元ヤンって聞いて全然そのイメージなかったけど、これは確かに元ヤンかもしれない」
「俺の話、嘘だと思ってたの?酷ー」
オレの感想に榛原は心外そうに眉を顰めた。
榛原、日頃の行いを改めてから言ってくれ。
「待って。朔、ボクの経歴を勝手に話したの!?」
一方、臨波は阿鼻叫喚と言った様子で榛原の胸倉を掴んで一心不乱にブンブンと振り回す。榛原は堪える様子もなく「情報共有は大事っしょ」と真顔で返答する。
それはどんな感情だよ。
「……たしかに、適正テスト結果を見せるならいずれわかる話か。なら良い」
臨波は臨波で納得すんのかい。
臨波は胸倉を掴むのを止めて榛原を放り投げる。榛原は「あーれー」と結構な速度でクルクル回っていく。 お前そんなに体幹弱くないだろ。
案の定、ピタッと回転を止めた榛原は、特に目を回した様子もなく口を開いた。
「そそ。だから、中学以前の話はしてないんだよ。褒めて褒めてー」
「む。褒めて遣わす。中学の頃の話までしてたら火山の火口に突き落としていたところだよ」
「ははー、ありがたき幸せー。『邪が』」
「じゃがいもが好きなんだ。ボクにお土産買う時はそれを念頭に入れておくんだね」
臨波と榛原が軽口を叩きあっていると思いきや、榛原の発言を途中で遮って臨波が唐突に好物の話をした。
中学……『じゃが』……あー。
中二でアニメに触れたことがある人は誰もが通る道か。
オレは耳が良すぎて、そこを通過するどころじゃなかったけど、いたなークラスに。『右手が疼く!』とか宣ってる奴。
厨二病って凶悪だよな……ほぼ永遠に後遺症が残るから。
そして榛原、臨波が安心した途端に黒歴史を暴露しようとするとか容赦ないな。
そこに痺れない憧れない。
どんどん臨波の委員長イメージが崩れていく感覚がする中、会議はまだ踊る。
とりあえず、次の事件は何処で発生するのかを確認して、急ぎ現場に向かうという方向性でまとまったのだった。
「ねー、ながれ」
「どうした?東雲」
「いざなみって、じゃがいも好きなんだね。ポテチあげたら喜ぶかなぁ。ぷりぷり怒るのやめて仲良くなれるかなぁ」
「……あー。うん、やめとけ」
「???わかったー」




