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静寂のトリガー  作者: 桜油
1章
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13/22

13

ショッピングモール1階。

6階の爆弾を解体した後、下っていきながら爆弾解体を進めていたが、どうも主犯のギドウとやらも爆弾にはそんなに詳しくないらしく全部同じ型だった。お陰で何もトラブルなく爆弾を無力化することが出来たが、テロリスト連中は色々と杜撰すぎる。

見張りを任せていた東雲も、4、5階で更に一人ずつ、計2人沈めてくれた。これで放送室、6階担当、5階担当、4階担当、どこ担当かよく分からないが見回りに来たっぽい奴に寝てもらっていることになる。

残るはギドウ含めて4人だが、3階、2階では出会さなかった。2階、3階担当は下に降りてくるようにって言いつけられてたはずだし、多分1階にいるんだろう。

各個撃破が理想だったが、こればかりは仕方ない。一人ずつ誘き寄せる方法が思いつかなかったら、東雲にまとめて相手してもらおう。

入口が狭いところに籠城して、入ってくる人数を制限する作戦なら思いついたが、東雲が大立ち回りしにくいだろうし……どうしたものか。

幸い、爆弾解体も手馴れてきた。1階の爆弾をこうして目の前にしているが、これも同じ型らしいから気を緩めなければ無事解体できそうだ。

後はギドウの居所さえ掴めれば、不意打ちを警戒せずに済むんだが。


……自分で言ってて何だが、『爆弾解体も手馴れてきた』って大概変だな。何言ってんだ、オレ。


「ながれー。どう?バクダンぶっ壊した?」

「おう、今ちょうど終わったところだ」


そんなことをウダウダ考えつつも手は止まらず、無事に最後の爆弾も音が止まった。そんな頃合に東雲が壁から顔を覗き込ませたので、軽く返答する。

考え事しながら爆弾解体できてるのが我ながら恐ろしいな。慣れって怖……。


「それで……まあ静かだったからだいたい察してるが、どうだ?誰か来たか?」

「ううん。結局来なかった。つまんないの」


東雲がそうぶすくれる。


「まあ、もう爆発の心配もない。この後は派手に暴れて、残ってる四人をまとめてぶっ飛ばしていいぞ」

「えっ、いいの!?」


が、オレの言葉に掌を返して目を輝かせる。分かりやすく物騒な奴だな、本当。


「この後どーする?どーやってぶっ飛ばす?」

「広場に突撃したら人質が危ないから、スーパーのエリアとかに誘き出したいところだな」

「スーパー?」

「家電量販店の隣にあっただろ?売ってる家電から上手く音を鳴らせるならそれが一番手っ取り早いんだが」


それに単純にスーパーだと手頃な武器を入手しやすいし。卵とか、お茶が入ったペットボトルとか。

あと、商品棚を倒してテロリストの進路を妨害するのも良さそうだ。

そういった感じで多対一でも有利に立ち回れるし、オレも自衛できるから東雲は後ろを考えずぶっ飛ばすだけでいい。


「ながれ、天才だね!」

「いや、本当大したことねえから。もっといいやり方を思いつく奴もきっといる」

「そー?あたしはそー思わないなー」

「そうだな、『はいばら』とか『いざなみ』はどうだ?お前の同僚なんだろ。もっといい作戦が浮かぶんじゃないか?」

「うーん……」


首を傾げて考え込む東雲の返答を待っていると、広場の方から声が聞こえる。

いざ答えようとした東雲に「すまん、ちょっと静かにしてくれ」と一言断ってからヘッドホンを再度外した。


『おい、DからHの全員連絡つかないんだが』

『……してやられたか』

『はぁ?どういうこと?』

『Hは脱走した人質2名を殺したと言っていたが、あれは偽装だったということだ』

『ほーん。ギドウ、お前マヌケだったんだな』

『五月蝿い。たかが数回やり取りをしただけ、数日の付き合いのほぼ赤の他人を声だけでどう区別しろと言うんだ。そんなに文句言うならお前が指揮すれば良かったんだ』

『何言ってんだテメー。こちとら、テメーが『何したところで罪に問われない』って言うから乗っかっただけで、別にやる気じゃ無かったし?こんなことになるとか知ったこっちゃねーし?』

『マジでそれな。はー、つく相手ミスったわ。まじで無能じゃん』


「仲間割れかよ……烏合の衆みたいだな、本当に」


思わずそう呟いた。

お陰で、ギドウが今ラウンジにいるってことまで分かったし。

醜い争いはまだ続く。


『黙れ、お前らまで俺を認めないのか……っ!』

『お、本性現したぞ。いいぞいいぞ、もっと晒せ』

『上司は何でもかんでも無責任に仕事を押し付けて、キャパオーバーで失敗したら人格まで否定してくるし、部下はとことん腹の立つ発言ばかりでこちらを舐め腐っているし、同僚は使えないし、家族はこちらのことを家族と認めていない、どころか基本的人権すら無視する癖に一方的に物を頼んで、あまりに虫が良すぎるし、友人や知人もこちらのことを理解してくれない!』


「……よく分かんないけど、しごともかぞくも止めて逃げたらだめなの?」

「あー、うん。そうだな」


東雲がポツリと感想を漏らす。全くもって正論なので頷いた。

というか、声でかすぎだろ。オレはともかく、東雲まで聞き取れちゃってるじゃないか。

東雲と話している間にも更に仲間割れは続いた。


『多分ギドウが悪いんじゃね?』

『黙れ黙れ黙れ!大体なんだ、『救』とかいうクソ政党は!『幸福が義務』?『幸福じゃないなら死ね』?どの口が……っ』

『あっ、ヤバイヤバイヤバイ。一旦シャラップ!テメーはどーでもいーけど政党批判はマジでヤベーって!ほら、人質共も目が据わってんじゃん!』

『ひぇ……っ、お、俺らは別にそんなこと思ってないしぃ?犯罪したからって不幸な訳じゃないしぃ?全部こいつが言い出したことなんで!』

『何ビビっちゃってんの?別に『救』いないから言論の自由は変わらんだろ』

『バカ!絶好のチクリ魔がここに大量にいんだろが!……ああ、と、とりあえずギドウ!パクった材料から作った爆弾、そろそろ爆発すんだろ?まだなんか?』

『……確かにおかしい。もう爆発しているはずなのに……それまで解体されたのか……っ!クソ、クソクソクソ!この辺吹っ飛ばして、ムカつくもん全部ぶっ壊して、俺は正しいって世間に認めさせればいいって思ってたのに!全部、全部台無しだ!』

『えぇ……終わった……』

『ええい!黙れ黙れ!世間のせいで俺は終わった!世間も俺のせいで終われ!運命共同体のお前らも同罪だ!』

『んな殺生な……』

『分かった分かった。とりあえず捕まらないように最善を尽くす、それでおけ?』

『はー……最初からそう言っておけばいいのだ……』


といった会話で仲間割れはやっと終わったらしかった。


「……ながれ、どーする?」

「同情の余地も無いくらい腐ってる連中だな。……誘き出そう。オレに構わず、好き放題遊んどけ」

「うん、わかった!」

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