↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/10

第六話:鳥取城包囲網!「絶対に火は使うな!!」の厳命

「火気厳禁! 焚き火禁止! 禁を破った奴は即座に首を刎ねると思え! 鳥取の町を一筋の煙でも包んでみろ、ワシ自らがお前たちを八つ裂きにするぞーっ!」


慶長五年(1600年)九月。因幡国・鳥取城を包囲した陣中で、赤松広秀の怒号が響き渡っていた。


兵士たちは「殿はなぜそこまで火を恐れておられるのだ……?」と首を傾げ、隣陣の亀井茲矩にいたっては「あのお方は火の妖怪にでも取り憑かれているのでは……」と恐怖に震え上がっていた。


「赤松殿……落ち着いてくだされ。鳥取城は名城。1500の城兵が籠もっております。火も使わずにどうやって落とすおつもりか?」


冷や汗を拭いながら尋ねる茲矩に対し、広秀はドヤ顔で胸を張った。


「亀井殿、甘いな。城を落とすのに火など要らん。『宴会と精神攻撃』があれば十分だ!」


「えんかい……!?」


広秀の仕掛けた「絶対に火を使わない鳥取城攻略作戦」は、実にバカバカしくも苛烈を極めるものだった。


第一に、城下町の防衛である。広秀は赤松軍の半分を「消防隊」として編成。万が一、城内から火の手が上がったり、不審火が起きたりした瞬間に消火できるよう、水桶と濡れむしろを持たせて町中に配置した。


第二に、徹底的な兵糧攻め。鳥取城への補給路を完全に遮断し、兵糧の搬入を遮った。


そして第三に、前代未聞の「昼夜問わずの城外大宴会」である。


「野郎ども! 鳥取城の奴らに向けて、肉の焼ける美味い匂いと、楽しげな歌声を浴びせるのだ! 酒を飲め! 踊れーっ!」


広秀は城の目と鼻の先に大やぐらを組み、但馬から取り寄せた牛肉を(風下に配慮して煙を出さずに)じっくり蒸し焼きにし、酒を酌み交わしながら連日連夜の大どんちゃん騒ぎを繰り広げた。


城外からは楽しげな太鼓の音と、香ばしい牛肉の匂い。

一方、城内は補給を絶たれ、日ごとに米が減っていく絶望的な状況。


「くそっ……外の奴らは肉を食べて酒を飲んでいるというのに、なぜ我らは雑草をかじっているのだ……!」

「赤松の軍勢、羨ましすぎるだろ……」


城兵たちの士気は凄まじい勢いで削られていった。


「赤松殿……まさか『美味い匂い』で城兵の胃袋と精神を破壊するとは……何という恐ろしい男だ……」


茲矩は広秀の思いもよらない嫌がらせの才能に、ただただ舌を巻くばかりだった。


そんな中、広秀は本陣で秘かに「日誌」を書き綴っていた。


『本日、鳥取城下は快晴。我が軍による放火被害ゼロ。亀井殿も火をつけておりません。町民から『赤松様は優しい』と感謝の柿をもらいました。家康公、ワシは無実です』


「殿……その日記、毎日家康公への報告書と一緒に送るおつもりですか?」


呆れる小野木に、広秀はニヤリと笑った。


「当たり前だ! 証拠は多ければ多いほど良い! ワシの危機管理(危機回避)策は止まらんぞ!」


(そう、未来の『濡れ衣切腹』を完全に粉砕するまでな!)


絶対無傷で鳥取城を落とす――広秀の奇妙な執念が、城内の宮部軍をジワジワと追い詰めていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。