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境界の樹  作者: 佐賀葬送
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3/5

拠点

1週間ぶりです。読みに来てくださり感謝。

まだ少しノッてこないかもしれませんが、ここからどんどん調子上げて書いていくので、最後までお読みいただけると幸いです。

             3


 僕を助けてくれた女性に連れられて、狭い路地を歩く。半壊してしまった僕の家から数キロ離れた場所だった。


 壁面にはスプレーの落書きが大量にあり、道には時々ゴミが捨てられている。


 僕は騙されているんじゃないかとも思ったが、目の前を歩くこの女性が僕を助けてくれたことも事実だし、姉を殺した奴らへの復讐も諦めたわけではない。


 「着いたぞ」


 おもむろに女性が言う。そこには厚みのある鉄の扉があった。女性はこちらを向きながら扉を開ける。


「入れ」


 僕は言われるがまま扉をくぐった。


 女性が扉を閉める。ギギィ…という重い音と共にその鉄扉は固く閉ざされた。


 部屋の中は真っ暗だった。


 女性が奥に歩いてゆき、パチッとスイッチを押して明かりをつける。光が行き届いた部屋は、何やら近未来的だった。


 「そこにでも座っていてくれ」


 そう指差された先にはなにやら透き通ったジェルのようなものでできた丸い物体があった。


「これですか…?」


「それ以外座る場所がどこにある」


 僕は言われた通りその球体の上に座る。すると、まるでクッションのように僕の体が沈み込んだ。すると球体が変形を始める。僕の腰に巻き付いたかと思うと、座面が持ち上がり始めた。


 みるみるうちにその球体は椅子の形になり、見た目はジェルでもガラスの用な硬さになっている。


「どうなってんだこれ…」


 困惑を隠せなかった。椅子から降りて周りを観察したり触ってみたりしたが、何も分からなかった。


「ふふ…」


 女性が笑いながらティーカップを持ってきて、椅子の前にある机に置く。


「す、すみません…」


 僕は恥ずかしくなって謝った。しかし女性の表情は微笑みのままだった。


「なに、気にするな。面白いやつだと思っていたんだ」


「いや、僕は混乱してるんですけど」


 ティーカップに入っていたものは、普通のコーヒーだった。まるでSF映画の宇宙船みたいな部屋をしているのに、いたって普通のインスタントコーヒーがでてくる。しかもよく見てみれば日常生活の跡が窺えるものも部屋中に散乱していた。


 「ここが家なんですか?」


 僕は気になっていたことを聞いた。


「いや、正確には違う。ここは拠点の1つというべきかな。私はいくつか拠点を持っているから」


「何をするための拠点なんですか? さっきの奴らを殺すためのですか?」


 落ち着いてきたが故に、色々な思考が頭に生まれてきた。さっきまでは色々な情報が多すぎて上手く考えが回らなかったが、今は冷静に物事を考えられる。


 女性は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに平生の顔に戻る。


「きみは面白いやつだな。身内を殺されて、復讐を誓って、ここまで冷静でいる人間もあまりいまい」


 確かにそうかもしれない。けれど、僕の復讐心は全く衰えてはいない。今もすぐにでも仇をとりたいと衝動的になってしまいそうだ。


 僕はそれを理性で押さえつける方法を知っている。首の皮一枚かもしれないけれど、ここで暴れても何の意味もないと脳が理解しているからだ。


「冷静なんかじゃないですよ。怒りで気が狂いそうです」


 僕は言った。


「それを抑えられるのが凄いのさ。人間、絶対に抑えられない感情というものがある。きみはそのハードルが高いんだ。確かに戦闘職には向くかもな」


 女性はそういうと席を立ち、なにやら小さな紙片を持ってきた。


 それは名刺だった。


「私の名前は浅田光里(あさだひかり)だ。以後、よろしく頼む」


「ぼ、僕は樹田紀人といいます。よろしくお願いします」


 お互い名乗り合う。名刺を渡した浅田さんは、僕の向かい側に座った。


 浅田さんは、コーヒーを一杯口に含む。すると、みるみるうちに眉間に皺が寄っていく。


「く、くぅ〜…やはりブラックはだめだな…」


「なんで砂糖入れないんですか…ミルクとか」


「うちにそんなものはない」


「え」


 まるで当たり前かのように言われてしまった。多分成人超えてると思うんだけどなぁ…生活力低いのかな、と思った。が、違うらしい。


「いや、違うぞ? ここはただのいち拠点だ。無駄なものを置くのは効率が悪いし衛生上も良くないからな」


 弁明くさく少し焦った口調で言う浅田さん。もしかしたらこの人は、よくある戦闘以外できない人なのかもしれない。


「じゃあ、ここらへんの服とか片付けたらどうですか?」


 僕はそう言って指差しながら床に散乱しているものを指摘する。


「う、うぅ、それはだな…あっ!」


 浅田さんが何かに気付いたように僕の後ろは猛ダッシュで駆けていった。走る勢いのまま床に落ちていたナニかを掴むと、体の後ろに隠しこちらに向き直る。


「な、何もないぞ?」


 冷や汗を掻いているのがわかる。そしてそこから察せる。下着だな、と。分かっているが、高校男子を家に連れ込むなら少しは準備してほしい。まぁ向こうにとっても想定外だったのかもしれないが。


 注意してくれ、の意を込めて一応一言言っておこう。


「下着は片付けといて下さいね」


「〜〜〜っ!!」


 浅田さんは、そこら辺の服を一息に拾い上げると、隣の部屋に行ってしまった。


 ああいう仕草を見ると少し幼く見えてしまう。


 実際僕はこの家に来てやっと浅田さんの顔を見た。僕の家では完全に意識が姉さんの死体や色々な負の感情で支配されていたので、顔を見る余裕などなかったのだ。


 黒髪ロングに引き締まった身体。少し上がり目で鼻筋はスッと通っている。少し薄い唇は常に締まっているが、時折見せるあの微笑みがギャップを感じさせる。


 頭が整理できてきた気付いたが、控えめに言ってもあの人は美人なのだ。そしてこちとら男子高校生。一つ屋根の下にそんな女性と2人きりで色々考えないわけもなく…となるのだが。今はそれどころではないのであんまり意識はしなかった。というか、「へぇ、美人だなぁ」くらいで終わっていた。


 そんなことを考えながらコーヒーを啜っていると、隣の部屋から浅田さんが出てきた。ベージュ色の女の子らしいパジャマを着ている。


「え、あの、僕、いますよ?」


 今日あったばかりの女性がこうもあけっぴろでは怖いものである。危機感とかないのだろうか。


「それがどうした、ここは私の家だぞ? 私がどんな格好でいようがなんの問題もない」


 さっきの出来事などなかったかのように、今までの調子を取り戻している浅井さん。


「さて、紀人くん。君はどこから知りたい?」


 部屋のドアの前で仁王立ちで言う浅井さん。ムードとか考えない人なんだな…。


「それ、座って話す選択はないんですか?」


「座るとも。当たり前だろう」


 そう言って浅田さんは、また僕の向かい側の椅子に座った。


「どこから知りたい、と聞いたが、君にはまずこの状況自体上手く飲み込めていないだろう」


「はい、何もわからないです」


 浅田さんは神妙な面持ちになると、姿勢を正して口をひらいた。


「そうだなぁ、まずは、さっき落ちてきた隕石の由来からだな」


 そう言って浅田さんは話し出した。僕は何を知ることになるのだろうか。


最後までお読みいただきありがとうございます。次話は浅田さんの話の内容を描くつもりでいます。あの隕石の正体とは…? 次回も乞うご期待。

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