側妃3
ケルレンは左隣をイェニセイ族後継リューランに、
そして右隣をその父の族長ルゥーヤンにと
挟まれて物凄く居心地が悪い想いをしていた。
(なんか威圧感じるし・・
リューラン様はなんか暗いしとにかく雰囲気悪いし
嫌だな・・・・周りも人のことジロジロ見て
まるで私達は見世物だ)
同じく見られているセレンゲやチョイルンを伺ってみると
後継リューランの左隣のセレンゲは、ハンガイ族後継フールンの許婚なのに
リューランの側妃候補にされて俯いて泣きそうな顔をしている。
族長ルゥーヤンの右隣のチョイルンは、
今までイェニセイ族長ルゥーヤンが隠していた
隠し玉としてオタル族長の正統な血統と
ハンガイ族長の血を持つ者を側妃にしている事を公にしたことで
それこそ嘗め回すように見られて俯きこそしないものの
唇をかみ締めて耐えている様子だった。
(・・・・・オタル族もハンガイ族もバイカル族も
手の内にあると言いたいのか?イェニセイ族長ルゥーヤンは
・・・・・私にもこんな格好をさせて)
ケルレンは鏡で見せられた自分の今させられている格好を
しみじみ思い返してみた。
それこそセレンゲとチョイルンは綺羅綺羅しい姫君の格好をさせられているが
ケルレンの姿は、女性が付けるような
玉簾や大きな耳環や宝石が沢山の首環などはなく
真紅の絹に片側しか翼の無い鳥がサーモンピンクの鮮やかに染められた糸で
刺繍された服装で
小さな石ではあるが耳や腕などにルビーをあしらった金の台の宝飾品
宴用の衣装にはなっているものの裾は短めでどこか機能的で
若葉色の薄絹は肩を覆っているものの動きを阻まない程度に抑えられて
腰に付けられた剣と共に中性的な雰囲気をかもし出していた。
「ハンガイ族後継、フールン様、
同じくハンガイ族長長子チーフォン様、参られました。」
その声に宴に出席していた、各族長達が入り口を注目する。
まだ大人になりきってない子どもと大人の中間の危うさで
何処か中性的な雰囲気を漂わせてフールンが入ってきた。
後ろの毛の途中から付け毛を付けて、長くされた栗色の髪に
焦げ茶の落ち着いた瞳、その整った顔は、オタル族から嫁してきた
母の面影を色濃く宿し性別を何処かあやふやにしていた。
「イェニセイ族長、宴にお招き頂きありがとうございます。」
イェニセイ族長の前で手を胸元に持って言って礼をする。
深紅の絹にの下地に金糸で蔦の文様が描かれた衣に、
裏地にクロテンの毛皮をあしらった身体を覆い尽くすほどの大きな
マントを身に付け、腰には自らの守護剣を帯刀していた。
チーフォンの方はと言うと、男らしい少しハネ気味の茶褐色の長い髪と
弟と同じ、焦げ茶色の瞳を持った他部族にも戦神と囁かれるほどの
戦士らしい長身と引き締まった身体を弟よりは身なりを気にしない
格好ながらも宴に出席する為に新緑の色の絹の下地に、色とりどりの糸で
刺繍された衣に、黒い帯には金の縫い取り、緋色房が付いた短いマントといった、
いつもより格段に良い格好で後継である弟の後ろで礼をした。
族長達は、フールンとチーフォンの姿にざわめいた、
フールンと、ケルレンの姿が顔立ちと良い、
中性的な中に強さが垣間見える雰囲気と良いよく似ていたからだった。
しらず族長達は、フールンとケルレンを見比べてオタル族とハンガイ族との関係と
確執等を思い出す。
「よく参られた、ハンガイ族後継、フールン殿、
そして、族長、長子チーフォン殿、
ここに居る、我が側妃チョイルンと我が後継の側妃候補の
ケルレン姫は、従兄妹であったか?
特に、ケルレン姫は、共に育った兄妹同然の存在であったと聞くが
懐かしかろう・・・・共にゆるりと過ごされよ」
ニィと笑って、イェニセイ族長が言うのに
周りでは、やはり・・・と言う声が零れる。
自分の出自と育ちがイェニセイ族長の策略に使われていると
感じてケルレンは唇を噛み締めた。
「・・・・ありがとうございます」
フールンは頭を下げて下を向いたままそう言った。
チーフォンは、素直にムッとした顔をしたがそれに対しては
何も言わなかった。
フールンの表情が見えなくて、
ケルレンは不安と、申し訳なさでキリキリした。




