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吾輩は猫?である  作者: おかき
バニラの章
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6/7

猫、戦う その2

 

 キィーーーーーン…と



 耳で聞き取れる音よりも遥かに高い音が響いた気がした


 六角形の集合体が、硝子が砕ける様に散りながら消え、太陽の光りを通す


 そして、そこに…



 《ぬぅがぁぁぁぉあぁぁぁ




 なに…?

 子供だったと言うのか?


 だが、子供と言えど天使を滅する力

 侮らん!!


 王の力、受けるが良い!》



 ノンのんのんのん

 ちがうちがう


 僕を睨み付け、恐らく大幅に勘違いしているであろう、パーマヘアーの外人さん


 キラキラの王冠を被り、上半身は胸だけが隠れたヒラヒラの服に肩止めでマントを纏い、様々な装飾が施された腰のベルトからは、太ももを守る様に何本かの皮帯が垂れ、その下には、左足が膝までの長さに対し、右足は足先よりも長いおかしな半短パン姿

 右手にゴツゴツとした棒を持った、腹筋バキバキの初老のおじさんが立っていて…


 まさに今、振り上げた棒から、晴れわたる青空よりも蒼い炎が上がった




『五月蝿い…である』


 って聞こえた時には、蒼い炎ごとおじさんの右手の棒が凍っていた



 《なっ!? キサマッ!!》


 射る様な目で僕を睨む



『その目も、その耳も、節穴であるか?』


 再び引き金が弾かれ、氷が砕けた



 《…なに?

     ね…

        こ…

   だと?》


 僕の足下で銃を構えたバニさんに、おじさんはようやく気がついたみたいだ

 全部僕じゃないですよ

 この猫型生物のせいです



『天の国の炎ニャどは吾輩には無意味である

 話を聞く気はニャいであるか?

 自称、偉大ニャる王よ』


 煙も上がっていない銃口をフッと吹きクールに決めるも、どこか可愛いと思ってしまう



『コタツはこの状況でも結構のんきであるな』


 って言われても…

 そもそもこの状況とやらが理解出来てないし




『一度周りをよく見るである、古き王

 今は、其方の生きた時代ではニャいのであるぞ』


 バニさんが両手を広げた


 …可愛い



 ここは7階建てのビルの屋上だけれども、別に一番高いビルでもない

 両隣の建物の方が高いし、少し遠いけど日本一高いツリーも見える

 僕にとっては当たり前の景色、当然の日本


 だけど



 《こ、これは…》



 キョロキョロと辺りを見回して、驚きを隠せない表情で狼狽えるおじさん


『三千年…

 人類はその叡智を持って発展し、その行動力を使って、世界が丸い、一つの星である事を確信するに至った

 大きニャ亀や、象の背中に世界の全てを乗せていた其方達の時代とは、既に別世界である


 伝わるべき情報は改変され、他の国との交流を拒んできた天の国

 そんニャ魂の檻に長くの間囚われていたのであれば仕方がニャいのかもしれニャいであるが、其方の生きていた時代の国は、既に存在しニャいである



 神についてもそうである

 神を信じている者もいれば、そんニャ物は信じニャい者もいる

 唯一神や創造神、数多に生まれた宗教毎に神がいて、助けを求めたり、否定し合ったり

 そんニャ精神的ニャ所は変わっていニャいであるが、人類はもっと目に見えて分かりやすい象徴を作り出した


【科学】という象徴を


 それが正解であるかどうかの答えは、また数千年の時間をかけねば出せないであろうがニャ



 わかるであるか?ダビデ王

 其方の居ない間に、歴史という名の時間は進んでいるのである』



 目に見える範囲を全て構造物で埋め着くし、限りある資源を消費しながら、陸、海、空を移動し、それでも満たされずに、宇宙、そして遺伝子にまで手を伸ばす人類


 その先に何が待っているのかは、例え神様でも分からない

 まだ中学生であるコタツには、難しい問題であった



 《何を言っている!!》


 当然、日本でやっと弥生時代に入った頃、ヨーロッパでさえはっきりとした文化も始まってもいなかった時代に生きていたのだから、ダビデにはもっと理解できなかった


 《神がいて、信託を受けた王がいる

 王がいて国があり、国があって配下の者や民がいる

 あとは敵か奴隷

 建物がいくら増えようが、人間がいくら増えようが、王が統治する国は変わりはせん!》


『五月蝿いである』


 《___!》



 いつの間にそこにいたのか


 王冠の上に座り、銃口を王様の頭に当てていた



『天使に何を言われたかは知らんであるが、其方は既に過去の人

 今の世に争いを持ち込むことは吾輩が許さんであるよ』


 《キサッ『五月蝿いと言ったである』


 銃という武器は知らないだろうけど、さっきの棒を砕かれたのが突きつけられたその銃であることは理解しているのか、振り上げようとした左手を下げた


 《我は王なるぞ!》


『吾輩は猫である』



 ダビデ…


 ダビデ…


 あっ!

 おちんちん丸出しの像の人!

 美術の教科書で見た!


『まさに裸の王様であるニャ』


 距離が離れているにも関わらず、僕の思考を読んで答えたバニさんと、更に僕を睨む眼力が強くなった王様は、時が止まった様に動かない



『ダビデ王、其方の信ずる神とは誰であるか?』


 《何を…》



『答えるである』


 《我らの主はヤーヴェ

 それ以外にない》



『天使に何を言われたであるか?』


 《… … …》



『答えるである』


 《…主の為に聖地を取り戻せる、とだ》



『何をすれば?』


 《…》



『其方は一度死んだ身

 容赦はしニャいであるぞ』


 《一人の魂と引き換えに、だ》



『やれやれである


 其方の神は、そんニャ事を言うと本気で思っているであるか?』


 《…》


『ヤーヴェが、何の罪のニャい民を殺しても良い、と言うとでも本気で思っているのかと聞いているである』


 《しかし…


 確かに天使が…》



『しかしももやしもニャいである

 ダビデ王よ、其方の息子は生きているうちに矛盾に気づいたであるぞ』


 《?》



『初代イスラエル王サウルには、確かにヤーヴェの加護があったのであろう

 であるが、其方の聞いた預言は、既にヤーヴェのものではニャい

 そもそもヤーヴェは地の国の住人

 其方の聞いた預言は、ヤーヴェを騙る“神”の戯れ言である』


 《なにっ!!》



『世の真実とは、あり得ニャいと思う処においてあるである

 大人しく吾輩の話を聞くであるか?』



 なんだがわからないし、どう考えてもバニさんが銃で脅しながら訊いている様にしか見えない

 けど、ダビデ王にも思うところがあったのか、表情から僕を睨む怒りの火が消えた


 僕じゃないよぉ…

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