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吾輩は猫?である  作者: おかき
バニラの章
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7/7

猫、戦う その3

 


 そこからバニさんが語った話は、顎が外れんじゃないかって程ショッキングな内容だった




 過去の人類の歴史に登場してきた、世界中の名前のある神

 そのほとんどが、地の国からやってきた“悪魔”なんだそうで


 まだ地の国と人の国が精神的に近かった頃、悪魔のことを神と呼んでいたらしい

 その名残からか、現在の宗教観としての神が存在する


 色んな国の、色んな宗教や神話で語られる神

 ほとんどの悪魔は気まぐれなので、たまたま人間にとって有益な事をしたり、たまたま情報をくれたり、たまたま当時の人間にとって有り難い言葉を残したりして、神と呼ばれたり、伝説の生物として崇められたりしていた




 原初の時代、まだ天の国には虚ろな天使達しか居らず、人の国とも地の国とも関係は無かった


 ある時、僕に“小龍”と言う“名前”があるように、天の国に“神”と言う“名前”の存在が偶然現れ


 天使の枠に当てはまらない程の力を有していた“神”は、秩序の生まれて無かった天の国を、一つの国家として纏め


 隣国である人の国をも求めた



 しかし、人間よりは遥かに力を持った天使軍とはいえ誕生したばかりの小国に過ぎず、単体ですら天変地異を起こすだけの実力を持ち、人の国で神と崇められていた悪魔達にとっては、家畜に群がる蝿の如く鬱陶しい存在でしかなく、容易く蹴散らされる



 そこで“神”は、人間の信仰を力に変える秘術を見つけ、気まぐれな悪魔の去った国に同名の神として入り込み、何も知らない人間の信仰を自らの力とした


 少しずつ、少しずつ

 バレない様に、悪魔の怒りを買わない様に天使軍を増強し、やがて人の国にいる神と呼ばれる悪魔とも戦えるほどの力を有した“神”は、宣戦を布告する



 が、“神”には誤算があった



 “神”は、地の国の存在を知らなかった




 人が文字を発明し歴史が刻まれるよりもずっと前、天の国の“神”対、人の国にいる神(悪魔)の戦いがあった


 とある人の国にいた悪魔を、天の国全軍で追い詰めたその戦いは、 たった一人?一匹?一頭?の地の国に住まう悪魔が現れたことにより、天使軍の敗北という形であっさりと終結する


 命からがら天の国に逃げ帰った“神”に待っていたのは、“神”に盲信だったはずの天使軍の中から、堕天する天使が現れるという現実だった




『理解したであるか?

 其方が信仰する現在の“神”とは、神と呼ばれた悪魔の名を語り、嘘に嘘を塗り重ねた“お山の大将”でしかニャいのであるよ』



 《そんな訳が…

 我が主は言われた

 我に国を統治し、人々の繁栄を導けと

 さすれば主の加護は永遠だと》



 王様は、狼狽えた表情で呟く

 あれだけ威厳があった彫りの深い顔が、僕の目には、悲しそうなのっぺらぼうに見えた



『信仰ニャど無くとも、人間は本来強い

 肉体的には脆い生き物ではあるが、精神的には他のどんニャ生物よりも


 それは、天使にも悪魔にも無い、他者痛みを知り、その心を思いやる気持ちがあるからである』



 バニさんの言葉に、僕の何かがチクリと反応する



『人は皆、其方もかつてはそうだった筈である』



 …それは僕に言ってるの?



『優しい、という事は何よりも強い

 難しい事ではニャい

 人が生まれニャがらにして持っている優しさは、神にも悪魔にも負ける物ではニャいであるよ』



 だんだん優しくなっていくバニさんの口調と





 《ちがう ちがう ちがう ちがう ちがう》


 急におかしくなっていく王様の様子




 《チガウ チガウ チガウ チガウ チガウ


 主は言われた


 違う 違う 違う 違う 違う 違う 違う


 選ばれし者と


 ちガう チがう 違ウ ちガう チがう 違ウ 


 我に言われたのだ


 ちがう チガウ 違う ちがう チガウ 違う…



 我だけに!!》





 『…やれやれである』


 そう言いながら、虚ろな目をしてぶつぶつ呟いている王様の頭の上で、どこかに電話をかけている様子のバニさん


 だから、そのスマホ的な何かはどこから出したの?



 『…

 ……

 ………

 い! い! か! ら! すぐに来るである!』



 何を話していたのか、小さな声で聞き取れなかったけど、最後だけ大きな声でなげやりに言いはなって電話を切った


 『むぅ… あやつはどうしてああニャんであるか…』



 ため息をつきながら、バニさんは戻ってきた


 えーっと…

 王様どうしたの?


 『ふむ… 吾輩、争い事は嫌いであるから、少しでも話し合いで解決できれば、と思ったであるが、やはり魂の檻に長く閉じ込められ過ぎると、洗脳は解けづらいであるニャ』


 問答無用どころか、天使が登場した瞬間にパンチを喰らわし、相手の脳天に銃を突きつけていた猫の、いったいどの口が争い事は嫌いだとか言うのだろう


 『この口である』


 爪を一本出し、薄い唇にあてニヤリと笑う

 …やだ、憎く可愛い


 『初めて聞く感情であるニャ

 ともかく、話して分からニャいのであれば、拳骨で教えてやるであるよ』


 真っ白な毛糸の手袋をしているみたいな小さな手に、ハァーと息を吹きかけている

 昔おじいちゃんに怒られた時も、こうやって“拳骨だ!”って言ってたな


 『思い出であるか?』


 いや、まだまだ元気


 『それは息災である』



 誰か呼んだの?


 『保護者…であるかニャ

 面倒な奴ではあるが


 さて…あやつが来るまで、大人しくしていてほしいであるが…

 無理そうであるニャ


 コタツ、少し下がっているである』



 ぷるぷる震えていた王様の手足が、だんだんと痙攣を起こし始める

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