猫、戦う その1
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七階建ての出版社ビルの屋上
梅雨時期としては珍しく雲のない日
抜ける様なブルースカイ
太陽の中心部が確かに揺れた
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手摺の上に2本足で立ったバニさんは、タバコを投げ捨て
『コタツ、日常へ戻りたいのニャらば、願うだけでいい
現在の君の状態では少し影響があるかもしれんからニャ』
えっ? なに?
何か来るの?
あれ… なに?
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10メートル程離れた空間に突如として現れた黒い点は、一辺が5センチ程の正六角形に広がる
太陽光を遮り地上に黒い影を落とすが、正六角形自体は銀色の液体の様なものが渦を巻いて光っている
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『ニャに、吾輩は問題ニャいである
座標転移にこれだけの時間をかけるニャど、頭の悪い天使のやること
せいぜい役職ニャしの大天使であろう』
いや、バニさんの問題聞いてない
僕に影響あるとか、その部分は…
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同じ大きさの六角形が、時計回りにパタパタと広がっていき、面積を拡大していく
やがて、蜂の巣の様な六角形の集合体になったそれは、逆スポットライトの様に太陽光を完全に遮り、銀色の渦が脈打ち始める
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『あくびが出るである』
右手を引き、重心を下げ、鍵尻尾が揺れる
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渦の中から何者かが現れた
その者は、2枚の真白な翼を持ち、白い絹で織られた薄い衣を纏っていた
金色の髪は風に靡く程長く、双眸は青く、石膏で作られた彫刻の様に表情はなかった
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『ニャん』
一瞬で空中に浮かぶ天使に近づき…
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次の瞬間
恐らく、仏教徒であろうと、ヒンズー教徒であろうと、例え悪魔信仰の者であろうとも、その姿を見れば“天使”と呼んでしまうであろう存在が欠き消えた
一発の猫パンチで
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えっ?
天使倒したの?
一発で?
何で?
敵なの?
?、?、?…
『混乱するでニャい
影響ニャいであるニャ? コタツ
天使共が人間界に現れる時、天使本来の星幽体から、今のコタツの様ニャ霊体に変位しニャければ人間界では行動出来ニャい様にニャっていてニャ
天使の神霊力に引き込まれて同化してしまう可能性もあるのである
であるが、わざわざ吾輩の目の前に現れた馬鹿がのんびり変位するのを待ってやる程、暇ではニャいである
向こうがこちらに先制の権利をくれたのである
最大の一撃で終わらすであるよ』
もう、何がなんだか
『自分達の国でしか、本来の力を使えニャい下位天使ニャど、者の数ではニャい
であるが、ここからが本番
大天使ニャど、ただの案内人でしかニャい
今回は何者を連れてきたであるか…』
《下_の者とはい_、大_使を倒すとは…
_様、何者だ?》
電波の悪い携帯の様で良く聞き取れないけど、重低音な男の人の声が響いた
『父や子の位を持つ実行部隊の天使ニャらば、人の世に災厄をもたらす程の神霊力を持つであるが、兵長以下の天使ニャらば、聖人や英雄と呼ばれた魂よりも、位は高いであるが、弱いである』
《貴_は、何者だ_》
『人の身でありニャがら、奇蹟や伝説を残した者
天使よりも現世で力を発揮できる御霊の兵の方が厄介である』
《貴様は、_者だと聞い_いる!》
何か怒ってるよ?
トコトコと空中を歩いて戻りながら僕に説明してくるバニさん
はっきりいって意味不明なんだけど、太陽を隠した空間から聞こえてくる声を無視している様に思える
『自ら名乗りもせず、そちらの世界で震えている臆病者ニャらば用はニャい
天使の縛は解けたのであるから、アメンボであろうが、赤トンボであろうが、好きに生まれ変わるがいいである』
虫限定?
《_の僕た_我に、天使の縛な_必要ない
我は偉_なる王なるぞ
臆_者呼ばわりし_報いは、その身_思い知るが_い》
聞きづらいし、声デカイ!
『どうやら、相手は“王”らしい
誰かわかるであるか?コタツ』
王さん?
監督の?
あっ、違うのか…
王って王様?
王様って言ったって、知らないよぉ
…裸の王様くらいしか思い浮かばない
『ハッハッハッ
馬鹿の王様であるか』
《_こを動くな!!》
ちょっと、バニさん
凄い怒ってるよ…
『コタツのせいである
それに…
来たくても、此方に来れニャいんであるよ
違うであるか? 王とやら』
《ぐぬ_ぬ…》
バニさんが天使を倒したせいなのか、何か他の制約があるのか、 声の主は悔しそうな声をあげた
『人として死んだのであれば、汚れニャき魂として、大人しく生まれ変わるがいいである
天使共に利用されたのは、力ある魂であった為
であるが、今生に戻ることは、何者であれ許されニャいのであるよ』
《我は王な_
再び聖地_と戻る_に三千年待_たのだ
ここを_け!》
『聖地… 三千年前の王…』
《ここを開けぇ____!!》
『神の戯れ言に従いニャがらも、理想の国を作り、魔人を生んだ王であるか…
罪を犯したとて、民衆に好かれた王
その武勇も無双ニャがら、良き政治も行った
天寿を全うしたであろう
安らかに魂の根城へ帰るであるよ…』
《ぬ_ぅぅぅぅ》
声の主は、拒絶の雄叫びをあげる
バニさんは静かに猫の手サイズの銃を構えた
…え?
…銃?
どっから出した?
『大方、先ほどの天使に唆されたのであろう
人の御霊は、自力では此方へは来れぬ
例えそれが、其方の系譜である神の子であろうともニャ
その門は、此方から名を呼ばねば開かぬのである』
引き金に爪がかかる
『生まれ変わりを望まぬのであれば、吾輩が自由を与えてやるである
まずは話を聞くであるよ』
太陽へ向け引き金を弾いた
『エッサイの子にして、預言者に名を列ねる者
イスラエルの王
ダビデ!』




