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まいごは今、異世界  作者: heina
ほぼ家出中に家出編
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思いやり洗濯

 僕が急に立ち上がるから熊と女の子をおどろかせてしまい、もちろんいつも背中にくっついている白薔薇もびっくりさせてしまいました。


「いきなり立つと、ヒュッってなるの。だから、嫌なの……」


 驚くと、白薔薇は言葉が追いつかなくなります。

 僕と同じに頭が口を置いてきぼりにするのです。


「はぅ、はふ〜……。 ん、それで一体何がコレなの?」


 一息吐いて落ち着けた白薔薇が、無駄に僕の髪をくしゃくしゃにしながら僕の案を尋ねます。

 蹴ったら上手くいくと思う、と答えたらなぜか不許可だと鼻を摘(つま)まれました。


「ダメダメ。よく考えて? ご飯食べてたら蹴られるんだよ。 笑う?」

「でもあの時のおじさんは笑ってたけど」

「いい? あれはおじさんじゃないよ。 そして状況も違うし、そのおじさんも本当に笑ってたの? かみ……えっと、不便なの」


 熊を指差し僕を説く白薔薇は、僕を呼ぼうとしたようだけど、詰まってしまいました。

 僕にもお姉ちゃん達がつけた「神ちゃん」という、ああ違うや「神」というあだ名を貰ったのですが、気に入らないのか白薔薇は、まだ一回もそう呼ぶことはありません。

 おそらく自分が神様呼ばわりされているのが影響して、呼ばれた時の気持ちを考えて、僕を気にかけてくれているのです。


「ん、わたしも名前つける!」


 僕の考えを裏付けるように白薔薇は話の途中で、目の前の熊と女の子を考慮せずにそう言いました。

 熊は視線を送られていなければただ黙って緑のベロベロにむしゃぶりついているので問題はありません。

 でも女の子の方は緑色がべっしょりと服を汚しているのにも関わらずそれを気にしない不安定な精神状態です。

 こりゃあもう履いてるズボンどころかパンツまで緑色のはずなのです。


「しろ、あのね」


 自分の想いは口にして言葉にして行動で現さないと伝わらないことを知っています。だから僕はきっちりと伝えるのです。


「名前をくれるのなら、カッコイイのがいいな」


 ちゃんと希望を伝えるのです。

 師匠には名前はあげられないと言われているけど、僕にはあだ名が意外にたくさんあります。

 簡単に付けてもらえる名前はなぜか全てあだ名であって名前ではないそうです。

 昔、師匠に「ごめんなさい、名前もらったの」と言って謝った時に「それは違うから平気」だと教えてもらったことがあるので間違いなく。


 それからもしばらく意識をこねていると、白薔薇がいい返事で「うん!」と言ったのが聞こえました。その声に頭の中を戻して、真剣な白薔薇の顔を確認したら、笑顔で次は女の子についてです。


「お尻とか手とか緑色になってるけど、平気?」


 とにかく声をかけてみたけど、女の子はホケっとしてて返事なし。僕のことはちゃんと見つつ、熊をチラチラと窺っています。

 その目はどちらも程度の差はあるけど信頼のない光を湛えているようです。


 でもそんな些事は気にしません。

 とにかく行動をするのです。

 水色ちゃんに洗濯を習った僕には、今できることが増えているので、心が軽い。できることがなくてブラブラしなくてもいいから。


「綺麗にするからね」


 僕は女の子の髪をサラサラと撫でて、瞳の色を変えることに成功すると次の行動に移ります。女の子が少しピクッとしたけど気にしない。

 地面の緑色に手のひらをパチンと付けて、匂いを嗅いでみる。

 サラサラしてて粘り気の少ないこの緑はとても濃くて、絵の具みたい。

 匂いは青臭い? すごく苦くてエグくて不味そうな葉っぱ感。

 血の匂いはしないけど、もしかしてこれ汁?

 熊の持ってるベロベロは葉っぱ的なものかも。こんなにべちょべちょになるほどに水気たっぷりの葉っぱって、風船みたいな感じのやつだったのかな、あのベロベロ。

 すぐに周りを見回してみたけれど、近くにそんな草は生えて無さそうでガッカリ。凄そうだから見てみたかったのに。

 少し気落ちしながら、手についた緑色を指で擦り合わせて確かめる。この汁は乾いてもポロポロに固まらないやつだ。

 洗濯の時に水色ちゃんのやってたことを思い出します。

 水色ちゃんは僕に「ヌルヌルとサラサラは洗い方が違うほうが綺麗になりやすいよ」とか「泥は乾かしてからちゃんと払って、なるべく土を落としてから洗うのよ」など、いろいろ教えてくれたことを頭の片隅に置きながら、まずは水の球を体全体で頑張って作ります。

 僕には水色ちゃんのように何もないところから水をたくさん出すことはまだとても難しいので、湿った空気から水を分けてもらい作るのです。広く薄く、根っこを張るように空気から分けて貰わないとダメだって水色ちゃんは言ってたけれど、いまいちピンとこないので今度誰もいないところでこっそりやってみる予定なのです。

 そして空気から貰って、大きくなったその水の球を、女の子を取り込むために女の子へと押し出します。

 ゆっくりと宙を進む水の球は、アワアワやっている女の子をそのままに包み込んで行きました。

 顔が出るように位置を下げて、アワアワな女の子を本当の泡あわにして一気に洗い上げます。

 洗濯機の洗濯物と同じにくるくる回っていく女の子。

 気持ち悪くなっちゃう前に洗濯を終わらせるべくがんばるのです。

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