家のこと
大きなお友達はそのまま地面に帰ってしまいました。
寝たままだんだんと地面に沈んでいき、最後は少しの小山を残して地面になったのです。
何かをするわけでもなくどこかへ行ってしまったので、少しつまりません。
家に帰ったのかな、どこかに出かけたのかな。もしかしたら用事でもあったのかな。でもなんの用事があったのかな。
遊びに来たのなら一緒に遊べばよかったのに。
家の扇風機を消し忘れてたとかかな。
それならちょっと待ってたら帰ってくるかも。
「いつ帰ってくるかな」
「ん? 誰が帰ってくるの?」
月白ちゃんは不思議そうに聞き返します。
残念ながらその日に帰って来ることはありませんでした。
次の日の朝。
「真紅ちゃん早く外いこー!」
玄関扉を開けて、そのままの勢いで駆け出すと、敷居に蹴つまずいてヘッドスライディングしちゃった。
「あああ、何してるの。大丈夫? 神ちゃん」
「大丈夫! ほら、飛んでる。僕飛んでるよ!!」
地面に激突することなく僕は地面の上をゆるりとすべっていきます。
もちろん白薔薇が頑張っているからですけど、ああー墜落したぁ。
土煙をあげながらソフトランディング。
家の外に出ていた漆黒ちゃんが、先程の心配の声を出した後から追いかけてくれていて、パタパタという足音がようやく追いつくと、僕を抱き上げて起こしてくれました。
「だめだよー。気をつけないと危ないでしょ」
漆黒ちゃんがシャツとスカートについた土をはたき落としてくれます。
けれど紅いシャツはまだしも、白いスカートは少し汚れが目立ちます。
「気を付けても転ぶ時は来るから、大丈夫ー」
「何が大丈夫だってー? 洋服汚して大丈夫じゃないでしょう?」」」
はっ! 真紅ちゃんが手を全部わきわきさせています。
ちょっと怒ってる……かも。
真紅ちゃんの感情が高まりを見せると爛々と光る、虹彩にも紅い零細な筋が弧を描く放射線状に幾本も入る事でより濃く紅く見えるようになった三対の瞳が躙り迫ってきます。
そのまま僕は真紅ちゃんにとっ捕まって身体中を隈なく確認されました。
「どこか怪我してないでしょうねぇ〜?」」」
六臂に弄られ、嬲られた結果、真紅ちゃんお手製のスカートのプリーツが解れていた様で家に連れ込まれました。
一枚二枚と服を脱がされていくと靴下まで脱がされて結局すっぽんぽんにされてしまいました。
「よし、怪我ないね。ちょっと着替え持ってくるから待ってて」」」
真紅ちゃんはそう言うと家の外へと出て行きました。
家の中を見回すと誰もいません。
「あれ? 水色ちゃんもいないや」
ついさっき、僕が玄関を出た時はまだ寝てたはずなのに。
日の昇りきらない朝の肌寒さに下着だけは着替えた僕は、僕の両肩に手をついて上に伸びをする白薔薇を振り仰ぎ、見つめました。
「ありがとね。怪我しなくてすんだよ」
白薔薇は僕の言葉を聞くと可愛らしく微笑み、僕の頭を抱え込んで旋毛の辺りに熱い息を吹き込んできます。最近の白薔薇のお気に入りの構い方なのです。
「へしっ、へんぷしっ!」
そして、銀色でも真っ白でもない僕の細い髪の毛が偶に白薔薇の鼻を擽ってくしゃみをさせます。
それが何となく楽しくて、さっきまで水色ちゃんが寝てた為に片付けていなかったまだ柔らかい寝床へと白薔薇を巻き込んでごろごろしてみます。
存分に白薔薇を抱きしめて転がったあと、仰向けに両手足を広げて寝転がると白薔薇は僕のお腹に跨り、体を預け頰もくっつけると少し眠そうに目を細めています。
寝床で暴れたせいで少し熱いかなと思っていると、窓も戸も開いていないのに涼しい風が吹いてきました。
「ありがと」
僕がお礼を言うと窓だらけの天井がキンと鳴りました。
この家は面白い家なのです。
今寝転がっている寝床、これは布団ではありません。いつもはただの絨毯で、寝るときに摩りながら「ねむい」とか言えばモコモコと盛り上がって素敵な寝床が出来上がるのです。
他にもこの家は寝転がっているとよく見える、今も鳴いた沢山の窓が面白いのです。
この窓は昨日と今日とで数と形と何かがたぶん変わっています。
昨日起きた時と今日起きた時とで何か違うのですが、この窓はウネウネとは動かないし、じっと見つめていても変わりません。
たぶん夜寝ないでじっと見てても変わらない気がします。夜寝ないで見続けるのは気づくと寝てしまうのでやったことはないからたぶんですけど。
でも寝てから起きるまでの夜の間にはなにかがちょっと変わっている様には感じます。けど、それとは比べようもないくらい朝から次の朝までがすごく変わっている気がして毎日不思議なのです。
そういえば外から見るとちゃんと屋根があるのになんで今は天井まで窓なのかな。それも不思議。
あ、あとこの家歩くよね。




