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まいごは今、異世界  作者: heina
ほぼ家出編
34/120

ピカピカのたま

 夜の帳が降りきって、月が頭上にやってきた頃。

 森の奥に建つ壁にたくさんの窓が嵌っている家の大きなリビングからは、小さい三人の寝息と若い女性十人の話し声が聞こえてきます。

「神ちゃんは危なっかしいと思うの」

 はじめに聞こえてきたのは月明かりに額の角を煌めかせる白群の声。

「怪我するどころか死にかけてるからね」

 それに応えるのはオレンジの声です。

「そういえばこの前も食べちゃダメなキノコ食べようとしてたよ。見てて良かった〜」

 ふ〜っと安堵の息を吐くのは漆黒。

「神ちゃんは自分の事をしっかりしてると思ってる節があるんだけどそこが問題」

「自分が見えてないのよね」」」

 紺碧の声に真紅が頷きます。

「私たちがなんとかしないと。だってお姉ちゃんだもんね」

 月白がみんなを見回して決意を固めました。

「うん」」」」」」」」」」

 そこで宵闇の背後に寝転がる小さい三人のところから、顔を擦るサラサラとした音が十人の耳に入ります。

「…なんの話〜」

 目を擦って起きてきたのは神様と呼ばれる半透明の少女でした。

 現在では知らないたくさんの人からも神様と呼ばれていますが彼女には自覚は無く、そして彼女を神と呼ぶ大勢の彼らも彼女を神様だと他覚してはいません。

「あ、お姉ちゃん起きたの?あのね



 爽やかな朝の光と小鳥のさえずりで僕はぱちっと目を覚まします。たとえ、どんよりどよどよな曇りな朝でもです。

 師匠にも「おまえは寝起きいいな」と言われてました。でも師匠の場合、自分が寝起き良くないからそう思うだけかもしれません。

 包まる上掛け布団を跳ね除け、上半身を起こすと今日も傍には本が落ちています。

 当然です。この本は昨日の晩の寝る前に僕が読んでいた本なのですから。

 寝ている間に本に乗っかっちゃうとページが折れちゃうから、いつも寝る前に片付けてから寝ようと思っているのだけど、いつもいつの間にか寝ているので片付けが出来たことは未だありません。

「おはーよぅ……」

 僕が起きた時に起こしちゃったのでしょう、白薔薇が片目を擦ってあいさつをしてくれました。寝間着から片方の肩もおはようしています。

「おはよ」

 白薔薇は相変わらず半透明だけど、最近少しずつ色が濃くなってきたような気がします。まして、僕の気のせいかもしれないけれどうっすら暖かく光っているような気すらします。

 光ってるには元から光っていたんですけど、なんだか光が前よりもあったかいのです。

 薄掛け布団とズボンを蹴っ飛ばしてパンツ姿で寝ているオレンジちゃんを避けて、潤いを求めて水を貰おうと流しに行こうと歩きだしたら、足を引っ掛けられてコロリンとオレンジちゃんの右脚の上に転げてしまいました。

「うわ〜、何するのだオレンジちゃん。寝たふりはやめろ〜」

 薄目を開けたオレンジちゃんはバレバレの寝たふりをやめないまま僕のお腹を脚で挟んできます。

 そのまま脚で連れ去られ、ぎゅーっと抱きしめられてしまいました。脱出しようともがいていると、そのうるささでみんなが起き出してきました。それからはわやくちゃです。

 それはおひさまが元気になるまで続きました。

 はーっ、喉乾いた。


 そうそう、まだら模様のひよこはそのまま流れでビバークと言う名前になりました。

 ビバークはそのままかっこいい鶏になるのかと思いきや、まさかのそのままの可愛さで大きくなるという成長を遂げそうです。

 なぜなら、それを肯定するようにビバークは初めて会った頃の十センチほどから成長し、三十センチほどの大きなひよこになったからなのです。

「うちでまともに名前があるのビバちゃんだけね」

 朝ご飯のテーブルに着いて、みんなでご飯を食べている時に王様の横で一緒にご飯を食べているビバークを見て宵闇ちゃんが口に出しました。

「名前があると、育つのが早いのかな?」

 宵闇ちゃんがそんな疑問を持つのも仕方ないのかも知れません。

 ビバークの成長はびっくりするほど早くて三倍の大きさになるまでに一週間しか掛かっていないのです。

 ひよこってこんなものなのですかね? 家のみんなは誰も知らないのでさっぱりわかりません。


 朝ご飯を食べ終わると、今日はみんなで外に集まります。

「神ちゃん見ててね」

 みんなの集まる中心でオレンジちゃんが僕の目の前で中くらいのボールを持つように手を合わせています。

 白薔薇はいつも通りに負ぶさって、王様は僕の横です。

 みんなで外に集まっているのは、お姉ちゃんたちみんなに「いいからいいから」と連れて来られただけなので何のためかはまだ知りません。

 何もない手の間をじっと見つめていると不意にオレンジちゃんの左手人差し指の先、中指側の側面がざわっとしたような感じがしました。見えた訳でも自分の指でもないけどそんな感じを受けたのです。

 それがきっかけだったのか、見つめる手の間にはパシッという音とともに紫の電気が弾けました。

「なにこれ! 面白い!」

「まだだよ、見ててごらん」

 オレンジちゃんの顔を見上げると見ているように促されて、手の間をじっと見つめます。

 すると、またパシッと紫電が瞬きます。

 今度は音と光が連続して続き、だんだんと間隔を狭めていくと音もパシッからパパパッを経てヒュルルルーと変化していきます。

 光も細く鋭い光だったのが少しウニみたいになったかと思うとくるくると丸まり、毛糸玉みたいな見た目になった後、ゆっくりと手の中を回っています。

 くるくると回るなかで紫電と紫電の隙間が埋まり、所々の隙間は反対に広がっていくと最終的に円錐の穴が多く空いた滑らかな光る球になっていました。

「出来たよ!」

 オレンジちゃんが合わせていた手を離し、片手の上にヒュルルと鳴る球を浮かべて近くで見せてくれます。

「出来たの?」

 出来上がったけれど、これが何なのかわからない僕は不思議に思って少し首を傾げていました。

「そう、完成。これはね。こうすると、ほらっ」

 オレンジちゃんが球を空に向かってふわっと押し上げると、球は押し上げた時のゆっくりなスピードそのままに空へと登っていきます。

「ふわふわでピカピカしてるねおやつみたい!」

「神様、あれおやつっぽい?私は神様みたいだなって思ったけど」

 白薔薇と王様が二人で変な話をしています。おやつっぽくも白薔薇っぽくもないと思うけどなぁ。……扇風機っぽい?

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