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まいごは今、異世界  作者: heina
ほぼ家出編
20/120

神ちゃんの初お手伝い[オレンジお姉さんの感想]

あのくそふざけた思想の木っ端を燃え散らかしてから、何の報酬も得られずに帰ることになった。

一応神ちゃんが何故か気に入った花を株ごといくつか持ち帰ったがそれだけだ。とても報酬とは言えない。

それも依頼主を灰燼に帰したのだから仕様のないことで、よくあることでもある。手遊びみたいなものなのでそこは気にしていないのでまあ良い。


家に戻ると流石にもう王様以外は起きていて、何をするでもなくただダラダラしていた。

唯一寝ている王様はソファに横になり毛布を掛けられ、髪の毛には撫でくりまわされた跡があるのでまたみんながちょっかいを出したのだろう。

いくら王様が可愛いからと言ってみんな甘やかしすぎだと思う。私もいえた義理ではないが。

けれども最近は神様と神ちゃんがやってきて、王様の構い倒しも柔らかくなってきた。

神様は私らがここに居を構える前からここの地にいて、見た目は王様と大差ないくらいの幼さがあるが近所の優しい美人のお姉さん。私達が疲れてしまっていた時に素敵なアドバイスをくれたりもしてくれた。

王様のとこの子達はみんな神様と呼ぶので、私達もいつの間にかそう呼ぶようになっていたが、なにがどうして神様かは知らない。

そして神ちゃん。

初めて神様が自分家(ち)から出てきたのを見た時に一緒にいた子で、色素の薄い見た目の可愛い子。王様よりは大きいけど私の胸のあたりまでしか背がない。

そんな雪割草の花みたいな神ちゃんは内面がとても大らか。明け透けに言えば雑と言ってもいい。

お風呂の時に服は脱ぎ散らかし、出会った時には靴も履いておらず、それを気にもしていなかった。けれども身だしなみはきっちりとしていて屋敷から抜け出してきた箱入りの令嬢の様で、手の皮は柔らかくて筋肉も目立たない。それが地中から神様と一緒に出てきたので違和感はあるのに、どこか悪感情は持てなかった。理性を緩めて直感で生きるようにしてきた他のみんなも同じ様子なので問題はないのだろう。

もしも問題があったらそれはそれで楽しそうだから歓迎するだろう。私も、皆も。


その件の神ちゃんに対して、今日は思うところがあった。

異質と言っていいような事だ。朝起きてからの事を順にちょっと思い出してみる。


朝。空が明るくなると窓の多いこの家は光で満たすことで起床を促してくる。

「...おはよぅ」

むくりと起き上がると焦点を定めないままとりあえずの言葉を吐く。

今日は返事がなかったけれど、だいたいこんな感じだ。起きるかどうかもそうだが朝のご飯も食べたり食べなかったりと皆てんでちぐはぐで、主に寝っ転がって過ごす。顔を洗って歯を磨いて、まただいたい二度寝する。神様も神ちゃんも、そんなことにはもう慣れて幸せそうな顔で今日もまたひとかたまりになって寝息を立てている。

いつも通りの朝を過ぎ、昼にさしかかろうといった頃、いけ好かない奴らが現れた。

どこがいけ好かないかは細かくて口にするのが面倒だし正当に欠けるけど、それこそ直感で感じた悪感情というものだから、そここそが問題というところだ。別に顔面に葉っぱが当たったからじゃない。

大きいだけの木が自らは特別だとばかりに飾り立て、それに付き従う個々の違いなど感じられない木々。

小物臭がプンプンだ。勝手な理由だけど今は一番そこがすごく気に入らない。

追い返したくなっているとそこへ、偶にやって来る郵便の使いのでっかい鳥が舞い降りてきて目の前の苛つく木の枝の上の方に留まった。

都合も丁度も良く、神ちゃんがお師匠さん宛に書き上げた手紙があるので神ちゃんを呼び、鳥に降りてくるようにと両の手を使いジェスチャーで「私の目の前に降りて来い」と表現する。やって来た隣の神ちゃんが不思議そうな顔をしているけれどどうしたんだろう。少し大きめだけど別に珍しいほどの鳥でもないのに。

無事に手紙を出した後にはちょっと鬱な手合いがまだ残っている。面倒くさい。

私は断る気満々だったのだが、神ちゃんと水色がお願い事を読み解き、問題の現地までついて行く気になってしまった様子。特に神ちゃんが「初めてのお仕事だ」とやる気を出してしまっている。心配なので一緒に行くことにする。


道中は暇なので食べ物の話をした。

ストレインゲルルが好きだと話すと神ちゃんは首を傾げていた。知らないのかなと思ったが、よくよく思い出せばストレインゲルルは宵闇が名付けたので知らないのも無理はない。他の地域の人たちは違う名前で呼んでいるんだろう。

「黄色い玉の中から見てるカチカチって鳴るのを美味しいやつで煮込んだやつなんだけど」

「ん、よくわかんないけどまだ食べたことないやつだと思う」

紺碧みたいにうまくご飯が作れないから説明もうまくないのかあまり伝わらなかったようだけど、美味しいから今度頼んで作ってもらおう。神ちゃんも美味しいといいな。

その時ちょうど歩いている土地がしっちゃかめっちゃかになっていたけど無視した。


随分と歩いたなと眼前の花の群生地を見つつ思う。

可愛らしげな小さな背の低い花だが、これだけ群がられると綺麗というよりは気持ち悪いというふうに感じてしまった。

先導して案内する木は花を踏み荒らして中ほどまで移動するとようやく歩みを止めた。

正直なところ水色は玄関前で木のジェスチャーを理解するのに途中で飽きてしまい「行けばわかるんじゃない?」ととりあえず動くことにしたのだ。

「現地に行けばヒントもあるよ。わかるんじゃない、てかめんどくてもう無理」だそうだ。よくわかる。

なので到頭(とうとう)やってきてしまった面倒な時間に、素直に「めんどくさ」と文字でも出ているかの如く水色が顔に出している。

やる気ない顔で水色が手で求めることを話すようにと促す。

また木がわさわさと何かを伝え始める。二人で相手をしている間、神ちゃんと神様の二人は完全に木に興味を失い、沢山生えている花の一つを弄りはじめている。

「はぁ?」

「うん?どしたの」

注意を逸らして、よそ見をした時に水色から義憤を纏わせた声が聞こえた。

訊けばこの木っ端共はこの場に生えるこの花が根強く、全然無くならないので私らに全部掘り返して根絶やしにとかなんとか。

...ああ、駄目だ。もうイライラする。クソほど勝手なことほざきよる。


そこへ枝葉で早くしろとばかりに私のお尻を叩(はた)いた。


我ながら短気なことだとは思うがこの時は随分と我慢したような気だったのだ。

そこで私はプツンとした。


「滅っべ、ぼけが〜っ!!」

強く踏み込むことなく斜に構えて鋭く鋭く蹴りを放つ。鋭く蹴ることによりスカートが捲れ上がるのを防止するのだ。

そして私の狙った方向は酸素を食い散らかし炭素を纏う塊を量産した。


豪炎轟く咆哮は、程なく周囲の森から注がれる視線に怖気を齎した。

ただ、神様は兎も角として神ちゃんがいるのにこれは駄目だったかと脳裏を過る。怖がられるのは趣味じゃない。神ちゃんはか弱いのだ、自分の手に負えないものに恐れない道理もない。

しかし、不思議なことに神ちゃんは平然として花から興味を逸らさなかった。

そこまでは私を信頼しているからこそ安寧を信じてくれているのだと思った。

それも間違いではないだろう。だがその後に神ちゃんが辺りを歩き回り、一所(ひとところ)にしゃがみ込んで土を掘り返していったところで一つの不可解が始まる。

私の片付けた木の仲間と思しき個体が一体、森から這い出し直ぐ様に根による一刀を振るった。

辛うじて誰にも当たることなく過ぎ去ったその一撃を神ちゃんは歯牙にも掛けず、よりにもよって重たい石を抱えてヨタヨタと近づいてゆくと、臨戦態勢の木のそばで降ろし、その後逃げるそぶりを見せない。

私は牽制と自身の鼓舞の為に声を張り上げて駆け出した。

私は爆発を起こせるわけでも、ものを燃やせるわけでもないので、足の力で加速するしかなく少し焦った。対象物が燃えるのは燃やしているからではなく相手が燃えだしているだけに過ぎないのだ。


か弱い神ちゃんでは殲滅手段はおろか防御策もない。

せめて、と思考が働くが違和感があった。

神ちゃんがチラリと真横に視線を這わせ、すぐに木の方を向く。そして視線を逸らさず見つめ、全身の力が少し抜いたように感じた。

ああ、これは惹きつけて避ける者の流れだと思った。ただ、あれでは敵を倒すことは出来ないし、次の攻撃に対処することも難しくなる。何がしたいのかよくわからない。

とうとう振り下ろされた一撃から本当のギリギリで避けた事を確認すると同時に中ほどから弾け飛ぶ根。

「なるへそ」

よし、そのまま消し飛ばそう。

吹き飛べとばかりに飛び蹴りを繰り出し、蹴り足に鋭さを加える。蹴りの残滓が辺りの空気を捕らえて炎が吹き荒れ、景色を燃やして森を火事の危険へと誘う。既に対象は芯まで炭化しているが残り火が空を舞ってゆく。


密度の高い雨が酸素を補給するように降ってきた。水色が気を利かせたのか降らせてくれたようで本人は神ちゃんのもとへと駆け寄っている。神様は宙を飛び出し、言葉通りに飛びついていった。


神ちゃんは雑な思考回路なのは間違っていないが、なにか抜けているような異質さを感じる。

それはなんでこんな事をしたのかと問いただした時に笑って「これと同じ目に合わせた」と喋った時に確信に変わった。

途中で切るのが難しくて、ずっと書いてたら訳わかんなくなってきました。

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