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まいごは今、異世界  作者: heina
ほぼ家出編
19/120

芋の仇

もうもうと舞う土煙の隙間に見える我が芋の仇を睥睨(へいげい)する。

仇は炭の塔の仲間のようだが、こいつからはちゃんと怒気が感じられるので彼奴らよりは感情豊かと言ってもいいだろう。若しくは溢れんばかりの、というのかもしれない。

だがそんな些事よりも心を占める事柄がある。

こいつらは芋の仇。

犠牲になったあやつらはただの芋ではなく僕の労力も上乗せされているのでもうただ芋じゃ無いのだ。

もう、えっと、エネルギーが違う。


高エネルギー芋の仇(かたき)を討つべく大事な情報である件(くだん)の仇さんをよく観察する。

じっと見つめること三秒、理解した。仇さんはそこに突っ立っている炭より幹が細身の代わりに根が発達していて平均百メートル程、長いもので百二十メートルはある。あの炭の中で一番図体が大きかったクリスマスツリーが十五メートル程だったので六点六倍の長さのそれが一番の武器という理由で芋の敵のウイークポイントだと判断した。

大きな、上にトンガリが目立つ岩をえっちらおっちら持ち上げる。やば目の二十キロほどの岩で、足の裏を意識して足の力でなんとか持ち上げたが土のついた裏側はサラサラと滑るし、足はがに股のままで腕も少しも曲げられずに足首辺りで指を頑張るのが精一杯。三分すら、とても耐えられそうに無い。

「よいしょ、よいしょと!」

間の抜けた吶喊(とっかん)に合いの手は無い。

がに股で、重い漬物石を運ぶおばあちゃんの姿が幻視で重なりを起こすに至る。

そのあまりにも不安な姿で木に突進してゆくが、いかんせん速度が遅い。

近づいてゆく荷運びに当然の事のように打ち倒さんと根が唸りを上げた。

「おまえが仲間を打ち倒されたと復讐の念で攻撃するなら納得もしようが、手も出してない神ちゃんに何ぞしようもんなら覚悟を問うぞ!」

いつもの間延びした言葉とは打って変わり、語調も言葉選びもきびきびとオレンジ姉さんが声を上げ、同時に第一歩を踏み出した。

だが木は止まらない。喋らないことからもわかるように、ものを聞くこともしないからだ。

根の鞭の有効な打点を使うべく木が鞭をしならせたまま、にゅるりと近づいてくるとあっという間に有効打点効果範囲。

「よいしょ〜」

頭上から振り下ろされんとする根の下で岩を地面に置いてぺしぺしと叩く。

唸る風鳴りを耳にしながらすっくと立ち上がると、途端に右の真横に転がり飛ぶ。寸暇を絶たず岩の弾ける音と欠片、飛び散る樹液に木っ端が辺りを汚した。

そして視界を取り替えるような豪炎が舞い、真っ白な水蒸気がうねった。

僕がちゃんと避けることを見て感じたオレンジ姉さんが安心して近寄り、根っこが地面で弾けたところで木を睨みつけて飛び蹴りをし、飛んで避けたところに駆け寄りつつ水の針を降らせた水色姉さんとで人災を起こし、白薔薇が空気を歪めて飛んできたことで起こった景色だ。目紛(めまぐる)しい。


まぁ怒られた怒られた。

オレンジ姉さんは口から炎を吐くんじゃ無いかと言うほどに、水色姉さんからは懇々と噛み砕いたお説教を優しく。白薔薇からは泣かれてしまった。

「でもほら、そのまんま返しだよ。見て見て」

焼きすぎたタコみたいな炭が少しの間に様変わりした森を開けた花畑の中で濡れそぼち、長かった根の途中で断たれたところを指差し、近くに転がる芋を見て誇る。

「芋の仇取れたん!」


もう一回怒られた。

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