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お弁当つけて、どこ行くの?  作者: kyon²


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8/15

一篇の詩

I never saw a wild thing sorry for itself

A small bird will drop frozen dead from a bough

without ever having felt sorry for itself

誇り高い小鳥は、木枯らし吹く中、空高く飛び

地に落ちて、凍え死ぬ瞬間でも、けして自分を哀れまない

                        (意訳)ユミ

  ユミの部屋の壁に、A4用紙に書いて、貼ってある。

 英国の詩人、D.H.ローレンスの、世界中で愛唱されている有名な作品である。

 ユミが好きな映画だという、「G.I.ジェーン」の中で出てくる。

「私の好きな詩なの。デミ・ムーアを鍛える彼女の指導教官が、デミ達、訓練生にその詩を教えるの」

 かつて、ユミが語っていた。


「ユミちゃん。怒らないで聞いてくれる」。壁に貼ってあるユミが好きだという詩を見ながら、タカマサが言う。

「ん?」

「もしね、今回の俺達の企画が、頓挫したとしても」

「キッ」。もう怒っている。瞬間湯沸し器だ。

「失敗した時の予防線をはってるんじゃないから、一通り、俺の話を聞いてくれる」

「う、うん。……」。まだ、疑っている。

「ユミちゃんは、今、映画制作者になる為の、いい勉強をしてると思うんだ」

「そう?」

「うん。実写の映像にこだわらなければ」

「……」

「VRの映画なら、ユミちゃんのイメージしている映画作りは、けして不可能じゃないことが、ハッキリしたでしょ?」

「確かに。……」

「俺もね」

「うん」

「今回、すごい経験になってる」

「そうなの?」

「うん。俺、漫画家志望だったでしょ?」

「うん」

「でもね、漫画家って言いたいだけなら、大抵だれでも言える時代に、なってしまってるんだなぁって。……」

「……。かもね」

「でしょ?」

「それで飯を食っていける人だけを、漫画家って言うなら、俺は確かにまだまだだけど」

「……」

「それと、面白いマンガを描く人ってのは、これからの時代、イコールとも言えなくなるかもなぁって。……」

「ふ~ん。……」

「今、どんなジャンルのものでも、人の興味の向くものって様々じゃん?」

「そうね。……」

「作品を発表するのも、大手のメディアだけじゃなくて、その気になれば、誰でもできる時代だよね。……」

「だね」

「要は、内容が面白いかどうかだよね。……」

「……」

「『面白い』っていう基準も、人それぞれだし」

「うん」

「俺は門外漢だから、映画作りのこと、よくは知らないけど」

「ん?」

「作り方も、これからどんどん変わっていくんじゃないかな?」

「うん」

「俺、思うんだけど」

「ん?」

「まず、大事なのは、シナリオじゃないかな」

「……」。がっかりしてるユミ。当然のことだと言わんばかりだ。

「次に、そのシナリオから、映画完成までの、しっかりした綿密な作業行程」

「まぁね。……」

「どんな演者を揃えるのか。予算を抑える為に、エキストラで作れる場面は、とか」

「うん」

「裏方で動くスタッフには、どんな人が必要で、機材や撮影場所にかかる費用、それには幾らかかるのか、とか」

「……」

「エキストラばかり抱えているプロダクションとかあるだろうから、そういう業者と契約するのもアリか無しか」

「ふぅ~ん。……」

「裏方のスタッフだってそうだよね」

「……」

「予算、日時の都合に合わせて、プロフェッショナルな技術水準の

スタッフを、要望に合わせて派遣しますよっていう、……」

「なるほどね」

「誰がやったって、個人のおカネだけで、可能な話じゃないと思うんだ」

「うん。……」

「要は、しっかりした綿密な企画書。シナリオ、人材の見当けんとう、お金の見積り、スケジューリング」

「……」

「『このお話を、制作日数〇日で、予算いくら幾らで』っていう企画書があれば、ユミちゃん、明日からでも、映画作り、始められるんじゃない?」

「いくら何でも、『明日』って。……」

「言葉のアヤだから」

「ふっ」と、笑うユミ。

「VRなら、も少し簡単にできるんじゃ、……」と、タカマサ。

「簡単に?」

「言葉に語弊があるなら、何と言うか、……」

「いい。だいたい分かる。言いたいことは」。手で制する。

「前にも言ったけど、仕上がりの水準を求めるなら、VRでも50万、いや50から100万かな」

「うん」

「でも、ユミちゃんのイメージを、一応の画像にまとめて、全体のあらましを伝えるだけなら、今の俺らの設備だけでも、何とかいけるんじゃないかなぁ。……」

「照明とか、VR用カメラとか、もう少し欲しい物、あるよね」

「そうか。……。俺、マンガのことにしか、頭、回らないからなぁ。……」

「そんなことないよ。タカマサ君の話、私に、とっても響く」

「そう?」

「うん!」

「だから、ユミちゃんは」

「ん?」

「ディレクターと言わずに、プロデューサーでも、何かのアシスタントでも、ユミちゃんが言うように、雑用係全般をこなすのは、絶対にいい勉強になってると思う」

「おぉ~」

「俺、偉そう?」

「うん、偉そう」。ユミが、クスッと笑った。

「俺達ね、いつかは、それぞれの道を歩き始めると、思うんだ」

「当然ね」

「でも、何かあった時、手伝ったり、相談したりできる仲間だと思うんだ」

「うん!」

「そういう仲でいる為にも、」

「ん?」

「ユミちゃんがこの前、言った、……」

「ん?」

「ユニット内、恋愛禁止って」

「あぁ~」

「いいと思うんだ」

「ふ~ん。……。あれは主に、こーちゃんに向けて言ったんだけどね」。首をすくめるようにして、笑った。

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