表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お弁当つけて、どこ行くの?  作者: kyon²


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/15

交錯

 康祐が、ユミ家の洗い物を手伝っている。

「僕ひとりで、大丈夫ですよ。おばさん」

「ちょっと、カラ拭きしてるだけだから」と、隣に立つユミの母。

「康祐君のお祖父じいさん、最近見ないわね」

「部屋で、寝たり起きたりしてます」

「あら。そうなの?」。心配げな表情で、訊ねる。

「病気って訳じゃ、ありませんから」

「うん」

「この前、九州一周してきて」

「そうだってね」

「はい。『今後は、こういうことも必要なくなる時代に、なるだろうが、最後の挨拶のつもりで』って言って」

「……」

「仕入れでお世話になってる窯元さんや、陶器屋さんを、回ってきたみたいです」

「そうなのね。……」

「今、その旅の疲れを、いやしているんだと思います」

「……」。うんうん、というように、頷く。

「今、ウチがこういう商売のやり方をできてるのも、『洗い物は、後でまとめてやればいいように』って、康祐君が十分過ぎるほどの食器を揃えてくれたお陰だものね」

「いえ、そんな。……」

「おまけに、洗い物までやってもらっちゃってる」

「……」。いえいえ、と言うように、首を振る康祐。

「ユミの担当なのに。……」

「ユミちゃんには、本当に何度も、色々助けてもらってますから」

 康祐の言うことを聞いていないように、ユミの母は続ける。

「ユミが粗相して、割ったり落としたりしてる食器の補充、康祐君、そぉ~っとやってくれてるでしょ?」

「……」

「ホント、有難うね」。しみじみとした声音こわねだった。

「ウチは、おじさんやおばさんのお陰で、いつも美味しいご飯を頂けてます」

「粗末なまかないよ」

「そんなこと、ないです」

「そんなことあるわよ。それに、最近はあまり、ウチの賄い、必要としてないみたいだし」

「いつまでも甘えてる訳には、いきません」

「なに、ナマ言ってるの!」

 ペコッという仕草で、康祐が頭を下げた。

「それに、いつも宅配便を受け取ってもらって、とても助かってます」

「なんてこと、ないわよ」

「お祖父ちゃん。昼寝しちゃうと、目が覚めてもしばらくは、動けないみたいで、……」

「そうよねぇ。分かるわ。……」

「『ご用の方は、チャイムを押してください』っていう看板、ドアに掛けっぱなしで」

「うん」

「最近は、開店休業中の店みたいになっちゃってます」

「……」。うんうんと言うように、している。

「お祖父ちゃんが築き上げた店、閉店させてしまうのは惜しいから。……」

「……」

「お得意様も、たくさんあるし、……」

「……」

「ご迷惑も掛けられないし、……」

「困ったことがあったら、何でも言いなさいね。康祐君」

「はい、ありがとうございます」。洗い物の手を止めて、深くお辞儀をする。

「店は、ショーウインドー代わりとして、営業はホームページでって、考えてます」

「ふぅ~ん」

「お祖父ちゃんに、静養の必要ができたら、……」

「偉いねぇ、康祐君は。……」。それに引き換え、我が娘は、という言葉を飲み込むユミの母だった。

「終わったら、お茶でも飲んで行きなさいね」

「はい。でも、今日は、帰ってまず、お祖父ちゃんの様子を見て、……」

 たどたどしく言う康祐に、

「困った時は遠慮してないで、本当に何でも言うのよ」。言い聞かせるように、優しく言うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ