康祐の失恋
薫子さんからの返信が来た。
お正月、氷川様の参道を
歩いていましたね
こんにちわ、ユミさん
久しぶりね
一緒に歩いていた人
誰ですか?
ふふふふふ
彼氏?
うん
まぁ
へぇ~
恰好いい素敵な人ですね
ありがとう
今度、紹介してください
うん
今度ね
ではでは
では
しばらくして、氷川神社の参道をブラブラしていたユミは、薫子にバッタリ会った。
洒落た一軒のカフェに入って、
「この参道を、二人で歩いていましたね」
「見られてたのね」
「うふふ」
「お正月にね」
「……」。ユミは頷いて、彼女の話を聞く。
「両親に、紹介したの」
「へぇ~」。――こりゃ、ダメだ。とても康祐の出番じゃないや。
「大学の先輩なの」
「……」
「大学院に進むって言ってたんだけど」
「うん」
「急に、『留学して、できたら向こうで研究者になりたい』って。……」
「向こうって?」
「アメリカ。……」
「へぇ~」
「薫子さんも、アメリカ行っちゃうんですか?」
「まだ、分からないわ」
「ふ~ん。……」
「彼、もう行っちゃったの」
「そ、そうなんですか?」
「うん。で、私」
「うんうん」
「今、彼の住んでたマンションにいるの」
「えっ」
「『もしかしたら、すぐに帰ってくることになっちゃうかもしれないから、それまで、この部屋、預けておくよ』って、彼」
「へぇ~。どこなんですか?」
「マンション?」
「ええ」
「流山あたり」
「ふ~ん。……」。――この頃、人気急上昇のエリアだ。
「彼の両親が、『住まなくなったら、賃貸に出せばいい』って、彼の大学入学祝い代わりに、ワンルームを買ってくれたんだって」
「……」。――康祐の失恋は、決定的だな。
「私、前から一人暮らししてみたかったから。……」
「ですよねぇ。私も」と、ユミ。
「今日は、実家に置いたままの、身の回りのもの、少し取りに来たの」
「そうなんですね」
「よかったら、今度、遊びに来て」
「流山にですか?」
「うん。そう」
「行きます、行きます」
「流山に用事なんて、ないでしょうけど」
「いえいえ。一度見てみたい町でした」
「……」。薫子は、微笑んで、黙って頷くようにした。




