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お弁当つけて、どこ行くの?  作者: kyon²


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第1話 SPACE連合、警告を発する

「場所は、宇宙ステーションの中。メインキャスト3人の会話からスタートします。用意して」

 ”場面1 シーン01”という小さな看板を掲げて、「スタート」という短く鋭い声を、ユミが発する。


「一般市民への攻撃が、悲惨な結果を引き起こしている」(SPACE連合評議員、MJ12=ユミ)

「こういう状況になる前に、処置すべきでした」(同評議員、シグマ40=タカマサ)

「至急、SPACE評議委員会の招集および、攻撃を行っているQ国への警告発出を、決議してもらおう」(同、αロメオ)

 3人が見つめる先には、壁にモニターが何台も並び、人々がイナゴの大群に襲われ、次々とたおれていく様子が映し出されている。拡大された映像を見ると、それはイナゴではなく、カラスよりやや大き目のドローンだった。そのドローンが、逃げ惑う人々に向けて、赤いビームを短く、連続して、発射している。そして、たちまち、多くの死体の山を築いていく。

 部屋には窓もあり、そこからは見下ろす先に、宇宙空間に浮かぶ地球が見える。そう、ここは、宇宙ステーションの中なのだ。


「カット」。ユミが、撮影停止のボタンを押した。

「セリフは、今のそのままで、カッコ内の説明と、ト書きの文章を、ナレーションで入れると、こういう風になるんだけど、どう?」

「いいんじゃない」と、康祐。

「うん、いいと思う」とタカマサ。「でもね」と続ける。

「『次は、シナリオのここの部分ね』っていうくらいで始めて、撮り終えたら、『はい』って手で制するぐらいで、十分だと思うよ。後で、タイムライン見て、必要な部分だけを切り取って、010-01みたいなタイトルつけて保存しておけばいいんだから」

「分かってるもん。……」

「だよね。ゴメン」

「一度やってみたかっただけだもん。……」

「うん。ゴメンゴメン、もう言わない」

「もうやらない」

「ん?」

「えっ。辞めないよ、ぜんぜん。『はい、スタート』みたいのは、もうやらないって言っただけ」

「はははは。ちょっとドキっとしちゃった」

「バカにするなよ、タカマサ。ユミは、そんなにヤワじゃないぞ」

「うん。知ってる知ってる」

「たくっ。もう。……」

 三人の談笑が済んだところで、改まってユミが訊ねた。

「私の役は、トラ(エキストラ)さんに代わってもらって、私はディレクターをやりたいな」

「ユミが、そういう人を連れて来れるかどうかだよ」と、康祐。

「うん。それとね」

「……」

「かなたに、宇宙空間を思わせるような、様々な星を散りばめて、その中に地球が浮かんでいる背景を背にして」

「……」

「二人の宇宙服を着たトラさんが、Q&Aで、この物語を視聴してる上で、疑問に思うような所とか、その他、必要になりそうな事を」

「……」

「静止画に、フキダシでセリフを書いていくの」

「うん」

「これも圧縮映像にして、見たい人だけが、スロー再生して、コマ送りみたいなマンガの1カット1カットを見れればいいと思うんだけど。……」

「その案に、一票」とタカマサ。

「俺も」

「うん。じゃあ、決まりね」

「……」。二人が頷く。


 三人組ユニットによる、ドキュメンタリー調短編映画の、制作を決めた日から3週間が経っていた。今日が、初めてのVR内撮影である。

 タカマサは、康祐の部屋にセットした自分のPCの前。康祐のPCも、同じ長机の端にあって、その近くにはユミと康祐が立っている。

「今日はセリフだけだから、この部屋でも大丈夫だったけど」と、ユミ。

「うん」

「いずれ、動きが出てくると、ここで三人は、ちょっと危ないかな?」

「撮影の日は、この辺のものを、壁際に置けば」と、康祐は小さなソファや、テーブル、床に置いた雑誌のラックなどを、目で示した。

「いちいちそんなことをさせるのも悪いから」と、タカマサ。

「そろそろ俺は、自分のうちに戻るよ」

「本庄へか?」

「いや。もと住んでいたマンション」

「ふ~ん」

「本庄に住んでいる間、賃貸に出していたんだけど」

「うん」

「弟が高校卒業したら、本庄に住んでいる必要、なくなるし」

「だね」

「オヤジも、勤めは都内だからさぁ」

「うん」

「元の家に戻った方が、通勤も楽になるっていうこと」

「ふ~ん」

「そしたら、この部屋、もう少し広く使えるんじゃない?」

「気、使わなくていいんだぞ」

「いや。ホント、そんなんじゃないから」

「そうか?」

「うん」

 二人の話が終わったところで、ユミが、

「この宇宙ステーション」と、机のPC画面を見る。

「ん?」

「民間人のちからだけで作ったって、説得力ある?」

「20(にせん)*(ウンじゅう)*(ウンねん)っていう設定だから」という康祐。

「その時代では、民間人だけでできる?」

「できると思うけど、他にも妥当なストーリーは考えてあるよ」

「例えば?」

「この話の、きもの一つでもあるんだけど」

「……」

「世界中の、普通の人々の、『戦争のない地域で暮らしたい』とか」

「……」

「『人権を蹂躙じゅうりんする、独裁者の治める国じゃない国にしたい』とか」

「……」

「『政府や、国のトップを批判したら、逮捕されてしまうような国には、住みたくない』とか」

「……」

「そういう、『当たり前だけど、当たり前のことが言えない』人々の声を、糾合するSNSを、世界中に浸透させる人が現れるの」

「ふ~ん」

「その人が、特殊なブロックチェーン技術を使って」

「……」

「世界中の人々に、その人の生活している地域の一食分のランチ代で、買い求められるIDと投票権を配布するの」

「ふ~ん」

「仮に、そのIDと投票権を、えふ∞(インフィニティ)と名付けるとすれば」

「……」

「国の政治をつかさどる政治家を選ぶ選挙では、f∞での投票で、予め立候補の可否の判断を仰ぐことになるんだ」

「ふ~ん」

「つまり、人民の支持を得ない者は、政治家になれない仕組みを、その国の憲法の第一条に、制定することにするんだ」

「そんなことが、できる?」

「今、世の中は、AIによって、恐ろしい速さで進化している」

「……」

「10年後には、『死ぬ人はいなくなる』なんて言う人もいる」

「ホントに、そうなるの?」と、ユミ。

「それは、俺には分からない」と言い、タカマサを見る。

 彼も、無言で首を振る。

「量子コンピュータの実用化は、見え始めているかもしれないけど」

「……」

「フュージョンエネルギーの実用化は、」

「フュージョンエネルギーって?」とユミ。

「核融合エネルギー」と、タカマサが応える。

「その実用化は、2050年代、いや、そもそもそれが可能かどうか」

「……」

「iPS細胞の実用化が始まったんだから、医療の進歩は、確かに速いかもしれない」

「ふ~ん」

「量子コンピュータの実用化が始まれば、AIは驚異的な進化を遂げると思う」

「……」

「その時、一人か二人の天才が、為政者が強権を振るうあちら側ではなく、たくさんの声を聞くこちら側の為に働いてくれたら」

「可能?」

「もしかしたら。……」

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