完成間近なのに
動画生成AIがあれば、「作られた映画を視聴しなくてもいいんじゃない?」、と思い始める三人。あるいは、既存の映画を自分好みにカスタマイズできる可能性を見出す。
原作があれば、その原作をAIに読み込ませ、「アクションシーンを多めに」とか、「残酷なシーンは要らない。ヒューマンドラマ風に」とか、視聴する人の好みを設定してやれば、十人十色、自分好みの映画をAIが作って、見せてくれる、という時代になっていることに気付く。
「SNSで少々叩かれたくらいで、凹んでいるくらいなら、さっさとカップを叩き潰して、やめちまえ」
「……」。ハッとしたように息を飲み、タカマサが康祐を見た。
「凹んでなんか、いないもん。……」
「だったら、そんな顔してないで、堂々と、大宮公園でも、ひと周りしてこい!」。いつになく激しい口調の、康祐だった。
プイッと横を向くようにして、ユミが部屋を出ていった。
「キビシイね、康祐」
「うむ。……。気合を入れてやった積り、だったんだけど。……」
「ユミちゃん、かなり参ってるんじゃないか?」
「うむ。……。だからこそ、……」
康祐なりの、ユミに対する思いやりなのだろうと、タカマサは理解した。
「あいつ、そろそろ友達ごっこから、卒業する時期だと、前々から感じていたんだ」
「ふ~ん。……」
「要らない情報ばかり、要らない時に限って、入れてくる人間なんて、友達といえるか?」
「……」
「あいつは、それが分かってない。友達ヅラしておくだけで、いいんだよ。所詮、そんな奴らは、……」
「うむ。……」
「腹の中を見せて、お互いを確かめ合った人間だけで、いいじゃないか、友達なんて。……」
「だな」
「うん。……」
「だから、そんな奴らに、何を言われたところで、普段通りにしてればいいんだ」
「……。でも、女同士は、難しいんじゃないの?」
「そうか?」
「分かんないけど。……」
「そういう軋轢を抱えながらも、表向き、波風立てずに交際っていくのが、流儀なんじゃないの?」
「そういうものか?」
「分かんないけど。……」
「お前、大人だな。……」
「……」
「あいつも、ここらで、少し大人になんなきゃな。……」
ユミは、見事に回復した。
「バカにするなよ。ユミは、そんなにヤワじゃないぞ」
表面上、気丈に振る舞っていたが、影響が店の営業や両親、康祐に及んでいることを知り、迷いがユミの精神を参らせていた。
「あの、意気地なしの康祐が、……」と、思う。
中学生になってもまだ、口数すくなく、同級生の後ろをいつも歩いていて、彼らが康祐を揶揄い気味に扱っている時、お転婆なユミが、そういう悪童たちを蹴散らしていたのが、ついこの間のように感じられた。
あの康祐が、「これを世に出すことができたら、俺は悔いの残らない人生を生きたと言いきれる」と言った。私の夢は、また再挑戦が効く。だが、あの康祐に、それができるか。できるかもしれない。でも、折角の機会だ。ここまで来たのだ。あと一歩なのだ。一度、康祐の思いを遂げさせておいてやりたい。
あいつはいつも、目立たないけど、いつも私を支えていてくれた。あいつの恩に報いたい。ユミは、そう思った。
次の日、康祐が大学へ行っている間、康祐の部屋に行き、プラスティックのバットで、ブロンズ色のカップを叩き潰し、壁の紙を剥がしてビリビリと、細かく引き裂いた。
PCを立ち上げ、ゴーグルを装着し、録画ボタンを押した後、作戦会議室に入り、同様のことをした。
ユミは、薫子さんの部屋の、居候になった。店に、ユミがいないと知れれば、騒動はそのうち鎮まるだろうと思った。




