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暗算で異世界を救う : ~戦わずして魔王討伐、自由奔放チート冒険譚~  作者: マサキ


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第27話:指示なき戦場 — 防げたはずの損耗

第27話:指示なき戦場 — 防げたはずの損耗


北部境界。

小競り合いのはずだった。

敵勢、約百。

規模だけ見れば脅威ではない。

だが——

地形は狭い湿地帯。

補給は中央集約のまま。

退路は一本。

俺なら選ばない布陣。

城で報告を待つしかない俺の元へ、伝令が駆け込んできた。

「報告! 北部戦、勝利!」

一瞬の安堵。

「しかし……損耗三十七」

空気が止まる。

三十七。

百規模相手の小競り合いで出す数字ではない。

重傷多数。馬匹も失った。

「原因は」

「敵の伏兵です。湿地側から奇襲を受け……」

予測できた。

湿地は足を取られる。

中央集約補給は遅延を生む。

伏兵は最も取りやすい選択肢。

軍議室。

帰還した将軍たちが重い顔で座っている。

赤外套の貴族もいる。

「被害は想定外だった」

「参謀殿がいれば違ったかもしれぬ」

誰かが呟く。

その言葉に、空気が揺れる。

リディアは無言だ。

鎧は泥と血で汚れている。

赤外套がゆっくり口を開いた。

「皮肉なものですな」

視線が俺に向く。

「資源管理の混乱がなければ、補給再配置はもっと適切だったかもしれません」

論理のすり替え。

俺は今回、何も指示していない。

だが、直前の補給体制を整えていたのは俺だ。

「補給の遅れは、前体制の名残とも言える」

ざわめき。

つまり。

俺の責任だ、と。

「待て」

リディアが立ち上がる。

「今回の布陣は我々が決めた。参謀は関与していない」

赤外套は微笑む。

「ええ、直接は」

“直接は”。

含みを持たせる。

監査官が書類を広げた。

「加えて、北部倉庫でも不足が発覚しました」

室内が凍る。

「何だと」

「包帯と矢束。記録上は移動済み。承認は参謀殿」

まただ。

タイミングが良すぎる。

戦闘直後。

被害が出た直後。

そこに“証拠”が追加される。

誰かが言った。

「……補給が万全なら、損耗は減ったのでは」

視線が、俺に集中する。

俺は立ち上がる。

「今回の戦闘配置は中央集約が原因だ」

静かに言う。

「分散させるべきだった」

「だがその補給体制を構築したのは参謀殿では?」

監査官が淡々と返す。

完璧な誘導。

過去の成功が、今は足枷。

リディアがこちらを見る。

その目は強い。

だが迷いも混じる。

「……なぜだ」

小さく、俺だけに聞こえる声。

「なぜこんなことになる」

俺は答えない。

感情ではなく、構図を見る。

戦の損耗。

資源不足。

承認印。

点が、線になるよう仕組まれている。

軍議は重苦しいまま終わった。

結論は出ない。

だが空気は変わった。

廊下を歩くと、兵士たちの声が聞こえる。

「参謀がいれば……」

「でも不正が本当なら……」

「どっちなんだ」

支持は割れ始めた。

夜。

リディアが訪れる。

鎧を脱ぎ、疲れた顔。

「今日の損耗は、防げたか」

「高確率で」

「……そうか」

沈黙。

「私はお前を信じている」

強い声。

だが次の言葉が続かない。

信じている。

しかし状況は悪化している。

それが全てだ。

「監査は加速する」

俺が言う。

「次は決定的証拠を出してくる」

「あるのか、そんなもの」

「作れる」

リディアは拳を握る。

「止められないのか」

「今は無理だ」

権限はない。

発言力も削られた。

敵は盤面を握っている。

窓の外、城下の灯りが揺れる。

この国を守るために、俺は最適解を出してきた。

だが今。

その国に、切り捨てられようとしている。

孤立は、ほぼ完成した。

次は——

公開の場。


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