第24話:城内資源配分3 — 完璧な最適化、消える物資
第24話:城内資源配分3 — 完璧な最適化、消える物資
戦後五日。
戦勝の余韻が残る中、城内は次の課題に移っていた。
補給再編。
俺の前に積まれたのは、兵糧・武具・馬匹・医療品の在庫表。
数字を追う。
前回戦闘損耗。
補充率。
交易回復値。
輸送時間。
暗算で整列させる。
「第三倉庫の乾燥肉、北部防衛線へ三割移動。代替は塩漬け魚で可」
「弓矢は中央集約せず分散。湿度変動を避ける」
「馬用飼料、二週間後不足。今のうちに前倒し調達」
補給官が唸る。
「……無駄が一切ない」
「余剰は腐敗を生む」
将軍も腕を組んだまま頷く。
「さすがだな」
今回も完璧。
損失ゼロ。
理論上、最適。
会議は滞りなく終わった。
だが——
夕刻。
倉庫管理官が青い顔で駆け込んできた。
「参謀殿!」
「何だ」
「第三倉庫の乾燥肉が……予定より二割少ない」
「誤差か」
「いえ、帳簿上は存在しています」
俺は即座に数字を思い出す。
搬入日。数量。封印印。
矛盾はないはずだ。
「現物確認は?」
「……ありません」
俺は倉庫へ向かった。
封印は破られていない。
帳簿の署名も正常。
だが、確かに量が少ない。
二割。
小さいが、無視できない。
「搬出記録を出せ」
紙束が並ぶ。
目を走らせる。
その中に、一枚。
俺の承認印が押された移動申請書。
見覚えがない。
「これは?」
補給官が震える。
「参謀殿の許可で、別経路に一部転送されたと……」
印章は本物に見える。
筆跡も酷似。
だが。
俺はそんな承認をしていない。
「いつだ」
「昨日の夕刻です」
昨日。
俺は将軍と戦果報告の修正をしていた時間だ。
物理的に無理。
俺は紙をじっと見る。
紙質。
インク濃度。
乾燥具合。
完璧に偽装されている。
誰かが、計画的にやっている。
だが今は。
「記録通りなら手続きは正当だ」
冷静に言う。
補給官が不安そうに見る。
「……参謀殿?」
「不足分は他倉庫から補填。表面上の欠損は出さない」
「は、はい」
騒ぎにするのは早い。
まだ確証がない。
夜。
自室で帳簿を広げる。
今回消えたのは二割。
だが全体備蓄から見れば致命的ではない。
テストか。
それとも資金源か。
窓の外で、赤外套が誰かと話しているのが見えた。
声は聞こえない。
だが、笑っている。
俺は書類を閉じる。
「……なるほど」
数字は嘘をつかない。
だが、人間は嘘をつく。
そして今——
誰かが“俺の数字”を利用している。
違和感は、まだ小さい。
だが確実に、侵食が始まっている。




