第16話:城内資源調整 — 暗算で兵站や資源を最適化
第16話:城内資源調整 — 暗算で兵站や資源を最適化
王都・城内の兵站司令部。
広い倉庫と帳簿の山が、今日も主人公を迎える。
この城内の資源――武器、食料、鎧、薬草、燃料、交易品――すべてを効率的に回すのが任務だ。
「参謀、これほどの数をどう管理するつもりだ」
若い兵士が不安げに声を上げる。
背後にはリディアが立っていた。戦場で見せる鋭さはないが、目は冷静に彼の動きを追う。
「数字を見れば分かる」
主人公は帳簿を開き、数字を追う。
「騎士団は現在、槍二百四十本、盾百二十、軽鎧三十六。予備武器は五十%過剰。食料は一週間分しか余裕なし。薬草は不足気味。燃料も同じく不足」
リディアが眉をひそめる。
「一週間で?」
「消耗率と季節変動を計算すれば、三日後には足りなくなる。そこで補充ルートと再分配を調整する」
主人公は指で倉庫の棚をなぞり、立体的な数字の流れを視覚化する。
資源は川のように流れ、過剰部分は赤く光り、不足部分は青く濁る。
「まず、鎧と盾を中央隊と東翼に再分配。槍は各隊に均等に。余剰は城門守備隊へ移動」
リディアは小さく頷く。
「食料は?」
「城外兵士を優先しつつ、中央城内分を三割削減し、内陸倉庫から補充。薬草も同様」
「なるほど……」
城内の兵士たちはざわざわと動き始める。
主人公の指示は複雑だが、数字通りに動けばミスは起きない。
「燃料は?」
「城内消費優先。余剰は交易港へ送る。港の市場安定にも寄与する」
作業中、突然リディアが声をあげた。
「待て! その樽は——」
「予測済み。次の工程で処理する」
しかし勢いあまって、樽が一つ倒れ、石畳にごろりと転がる。
兵士たちが慌てて駆け寄る。主人公は軽く指を動かし、倒れた樽を計算通りの位置に戻す。
「……参謀、手際が良すぎる」
「数字は裏切らない」
リディアは小さく息を吐き、目を細める。
その横顔に、昨日の誤解の余韻がちらりと残る。
「……こうして効率化すれば、兵站損耗率は十五%削減可能。消耗品不足リスクは三割低減」
「素晴らしい……だが、数字だけでは現場は動かないぞ」
「現場は補助変数。私は最適解を示すだけ」
兵士たちは数字に従い、混乱なく物資を運び始める。
城内の秩序が、静かに回復していく。
だが、主人公の頭の中では別の数字が踊っていた。
“貴族の不満指数上昇率十二%”
“兵士の好奇心指数二十%”
“リディアの信用度安定率九十五%”
「……感情の数値は、まだ完全には解析できない」
リディアが隣で、ぽつりと呟く。
「あなた、本当に数字だけで世界を動かせるのね」
「はい。ただ、感情変数は不確定」
風が吹き、帳簿のページがはためく。
城内の兵站も、主人公の暗算も、すべては最適化される。
ただ、城内のざわめきは、完全には消えない。
数字だけでは読み切れない現実が、今日も彼の周囲に残っていた。




