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暗算で異世界を救う : ~戦わずして魔王討伐、自由奔放チート冒険譚~  作者: マサキ


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第15話:ラッキースケベ軽め — 女騎士との誤解回

第15話:ラッキースケベ軽め — 女騎士との誤解回

王都・訓練棟裏の中庭。

中ボス戦の後処理と港町の交易整理が終わり、束の間の静けさが戻っていた。

俺は資材置き場の前で、木箱の数を確認していた。

「槍二百四十本、盾百二十、予備鎧三十六……」

城内資源の偏りが気になり、自然と暗算が始まる。

「……鎧は第三隊に二割過剰配分」

独り言のように呟いた、その時。

「何をしている」

背後から声。

振り向くと、訓練用の軽装に着替えたリディアが立っていた。鎧ではなく、動きやすい革鎧姿だ。

「資源確認だ。鎧の余剰が——」

言い終わる前に、突風。

干してあった訓練用の布が一斉に舞い上がる。

同時に、俺の足元にあった木箱が傾いた。

「危ない」

反射的に手を伸ばす。

だが掴んだのは木箱ではなく——

柔らかい感触。

一瞬、時間が止まった。

視線を落とす。

俺の手は、バランスを崩したリディアの胸元の革装具を掴んでいた。

「……」

「……」

風が止む。

布がひらりと落ちる。

周囲の訓練兵たちが凍りつく。

「——離せ」

低い声。

俺は即座に手を離した。

「不可抗力だ」

「ほう」

リディアの目が細くなる。

「偶然にしては、随分と的確な位置だったな」

「落下予測角度と重心移動を計算した結果だ」

「黙れ」

周囲の兵士たちがひそひそと囁く。

「参謀、やったな……」 「命知らずだ……」

俺は冷静に分析する。

「誤解発生率、現在七十三%」

「何をぶつぶつ言っている」

リディアが一歩近づく。

威圧感。

だが頬はわずかに赤い。

「弁明する。木箱の落下速度は秒速二・三。あなたの転倒予測は〇・八秒後。最も近い支持点が——」

「だから黙れ!」

剣の柄で軽く額を叩かれた。

「助けようとしたのは分かる」

「事実だ」

「だが、やり方を考えろ」

「次回は肩を掴む」

「次回を想定するな!」

周囲の兵士たちが笑いを堪えきれず吹き出す。

リディアは咳払いを一つ。

「……とにかくだ。城内で妙な噂が立つと面倒だ」

「既に発生している」

「何?」

「今この瞬間で拡散率三十二%」

「止めろ!」

彼女は俺の腕を掴み、建物の影へ引っ張る。

距離が近い。

さっきよりも。

「いいか、私は騎士団副団長だ。軽率な噂は困る」

「合理的だ」

「お前も王宮で敵を増やしている。これ以上、弱みを作るな」

弱み。

その単語に一瞬だけ思考が止まる。

「……あなたは弱みではない」

「何?」

「戦力評価、最上位。信頼度も高い」

リディアが言葉に詰まる。

「そういう意味ではない」

「では?」

「……もういい」

彼女は顔を逸らし、深く息を吐く。

その時。

建物の陰から若い兵士が顔を出す。

「あ、あの……副団長? 参謀殿?」

「何だ」

「その……お二人、近いです」

沈黙。

俺とリディアの距離は、ほとんど呼吸が触れ合うほどだった。

即座に一歩下がる。

「誤解だ」

「誤解だ!」

声が重なる。

兵士はにやりと笑い、逃げるように去っていった。

「……拡散率」

「言うな」

「五十八%に上昇」

「やめろと言っている!」

彼女は額を押さえる。

だが、その口元はどこか楽しげだった。

「次からは、風の強い日は近づくな」

「了解」

「あと、胸元もな」

「了解」

再び軽く額を小突かれる。

「まったく……数字しか見えないくせに、こういう時だけ妙に間が悪い」

「統計的に不運」

「それを世間では“ラッキー”とも言う」

「?」

彼女はそれ以上説明せず、訓練場へ戻っていった。

残された俺は空を見上げる。

風速、体勢、誤解率。

計算はできる。

だが——

「感情変数、依然として解析困難」

遠くで、リディアが振り返る。

目が合う。

ほんの一瞬だけ、微笑んだように見えた。

誤解率。

——少し、下がった気がした。


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