第17話 エピローグ:四衣凪瑛瑠
「嘘――。本当においてっちゃった」
呆然とする私。
「何なのあいつ。こんな人気のないところに置いてきぼりって、私に惚れているんじゃないの!? ねえ、オムニさん!」
振り返ると、少し離れたところで、柊くんの僕? のオムニレクスさんがついてきていた。
「許しがたいことだ。この俺を自転車墜落予防装置にしたり、夜道のガードマンにしたり。あの阿呆は、今一度こらしめてやったほうが良いのかもしれない」
「でしょう! 本当、痛い目にあったらいいのよ、あんな奴」
と、口にしたところで、先ほどのモールでの柊くんを思い出す。
頼りないだけの陰キャ。ただの殴られ役ぐらいになればいいな、と思っていただけなのに。
近くで見ると、思っていたよりも大きな背中で、何も考えていないだけと思っていたのに、堂々とした立ち振る舞いで、大人の余裕みたいなのが見え隠れして。
「愛してるに決まってるだろ。今も昔も、これからもずっと――」
自転車での彼の台詞が、ふいに脳裏をよぎった。
体が熱いし、胸が早鐘のように鳴る。
と、同時に不安にも襲われる。
電話の内容的に、副委員長と会話しているみたいだった。
「私とのご飯よりも、副委員長を優先したってこと? そうなのオムニさん!?」
「小娘、さっきからオムニさんと言うが、まさかこの俺オムニレクスの略称とか言うまいな」
「だって、長いから……」
「く……」
何故か震えだすオムニさん。外国の人でも名前略すぐらい普通なはずなのに。
「それよりも、もしかして柊くんと副委員長の関係知っている?」
「……そ、そんなくだらないことを、この俺に問うのか、貴様」
「全然くだらなくない! この私が手料理披露しようってのに、副委員長の方に行ったのよ! 付き合ってでもいなきゃ納得できないじゃない!」
オムニさんが目を閉じる。外界から全てを遮断するかのように。
けれど、何かを閃いたのか、すぐにかっと目を開いた。
「……いや、付き合ってはいないな。単純にあいつは副委員長とやらに握られているのだ」
「に、にぎ……何よ、それ」
「フフフ……弱みだよ」
脳天を雷で打ち抜かれた感覚。と同時に、不安が一気に散去った。
「そ、そうなんだ。じゃあ、柊くんは副委員長に惚れている、とかでもないのね」
「その通りだ小娘。むしろ、今、この時は好機なのかもしれん」
「ちゃ、ちゃんす……何の?」
「副委員長から主を引きはがす好機だ。よくよく考えてみろ、嫌な女に振り回され、フラフラと家に帰る。そこで、お前が料理を準備して待っている。どうだ? この状況。好機以外に何と表現する?」
またしても雷に打たれた感覚。この外国人。見た目に反して、恋愛のいろはを熟知している!
「そ、そうね。そうとわかったら今すぐ買い出しに行かないとね。いつ帰ってくるかわからないから」
私は足早に歩きだす。
と、途中で振り返る。オムニさんが一定の距離を保ちながらついてきている。
「あ、あのさ」
「どうした小娘?」
意を決してオムニさんに本音を伝える。
「オムニさんは私の味方――ってことでいいのよね」
きょとんとするオムニさん。すると、堰をきったかのように笑い出した。
「フハハハハハ――! もちろんだとも小娘。主を心底困らせることができるなら、俺はどんな手伝いでもしてやろうぞ」
「そっか、よかった。テンションおかしいし、すこしだけ不安な単語まじっていた気がするけど、私の味方してくれるのね!」
オムニさんがいつの間にか手にしていたスマホの画面を、差し出してきた。
画面にはQRコードが表示されている。
「何かあればこのアカウントに連絡すると良い。主が許可を出さなければ外には出られないが、影の中でも電波ぐらいなら通じよう。何せ異界の王オムニレクスだからな。これぐらいの事、造作もないわ! フハハハハハ――!」
「スマホ、もってるんだ……」
「つまらない戯れに辟易していたが、どうやら楽しませてくれそうじゃないか」
静かな夜に、オムニさんの笑い声がこだまする。
柊くんと同じで、変わった人だけど、心強い味方が出来た。
学校の方を向いて心の中で叫ぶ。
「この私を惚れさせたんだから、絶対に責任とらせてやる! まってなさいよ柊くん。今にあなたのほうから離れられないようにしてやるんだから!」
完結です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
ここまで無事たどり着けたのも、読んでくださった皆様がいたおかげです。
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それでは、また次の物語でお会いしましょう。




