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狂った世界を破壊する革命の狼煙  作者: kanaria
第2章 地下の国

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43.ヤバい気がする

「あれ! あの砦が対象じゃない?」


 煙が上がっているのだから何か問題が起きているのだろう。

 遠すぎて魔族が襲っているのかは見えないが、魔法陣で送られた場所と近い。遊撃部隊が向かっていった方向にあるし、恐らくあの砦が標的で間違いないはずだ。


「でも、どうやって行くんだ?」


 目の前には大きな崖がある。

 ここを下りるには装備が足りない。急に連れてこられたせいで縄の一本すら持っていない状態だ。


「回り道をするしかないわね。魔法を使っても私ではイオを連れて下りられないから」


「……悪い」


 多分ひとりなら下りられるのだろう。

 俺が闇魔法を使えないせいで足手まといになっている。


「気にしなくて良いわ。全部アランが悪いんだもの」


 肩をすくめるマリーは特に怒っていなさそうだ。

 アランに対しても呆れているだけで怒りは去ったらしい。本当に度量が広いと思う。


「他のやつらはここを下りて行ったのか……」


 脳筋の遊撃部隊だ。この程度の崖を下りられないのは俺くらいな気がする。


 俺が遊撃部隊で最弱なんだろうな。


 闇魔法の適性が高くても使えなくては役に立たない。はやく使えるようにならなければという焦燥感だけが強まっていく。


「まあ、イオもそのうち闇魔法を使えるようになるわよ。……私よりもね」


 様々な感情が含まれてそうなマリーの発言に口を閉ざしつつ、崖にそって歩く。


 フローリアが俺たちを置いていったのは、アランが俺たちを危険に巻き込むと心配したからだろう。

 アランなら崖の上から突き落とすくらいはしそうだ。


 目的地との間に大きな崖があると知っていたから、わざと置いていったのかもしれない。

 崖は見渡す限り続いており、下りられそうにない。


 それでも何とか下りられる場所がないか探していると、急に悪寒が走った。


「マリー急ぐぞ!!」


 何かとてつもなく嫌なものが近づいてくるような恐怖に襲われ、俺はマリーの腕を掴む。

 急に腕を掴まれたマリーは目を白黒させつつも、ついてきてくれた。


「なっ、何?」


 足を動かしながらマリーが俺の腕を軽く叩く。

 それだけでマリーの聞きたいことは伝わるけれど、質問に対する明確な答えを俺も持っていなかった。


 だが、嫌な感じはどんどん強くなる。

 このままでは不味い。体も勝手に震えて止まらない。


 俺は下から見えにくいくらい葉の生い茂った木を見つけ、マリーを先に登らせる。

 マリーは地上に潜入していただけあって、器用に登っていく。むしろ俺の方が手間取ってしまった。


 登る間も全身が震える。こんなに恐怖を感じるのは初めてだ。

 何が起きるのか分からないが、強大なものに押しつぶされるような感じがする。


 ひとり焦っていると、マリーが木に登るのを手伝ってくれた。

 そのまま姿を隠すための魔法を使おうとしたので、手で制して止める。普通なら姿隠しの魔法を使った方が良いが、痕跡を残すことすら危険な気がした。


 俺たちが登り終わって一息ついた瞬間、遠くから木々をかき分ける音が聞こえてくる。


「まさか!」


 驚いて声を出したマリーの口を塞ぎ、身じろぎすらしないように注意する。それでも体の震えは止まらない。


「イオ、あんた危険察知系のスキルを持っているの?」


「いや、分からない」


 声を潜めて聞いて来たマリーに首を振る。

 地上ではスキルを調べるほどお金がなかったし、地下では塗りつぶされたかのようにスキル欄を見ることができなかった。


「……そう、よね」


 マリーもスキル欄が見えなかったことを思い出し、力を抜く。

 この音を立てているのが敵か味方か分からないが、もし俺が危険察知系のスキルを持っているのなら敵の可能性が高いだろう。


 呼吸音すらしない静寂の中、現れたのは赤い制服。見間違えることもない。赤鷲騎士団の制服だった。


「……っ!」


 驚きのあまり息を飲む。

 あのまま歩いていたら見つかっていたはずだ。本当に間一髪だった。


 何十人もの赤鷲騎士たちが崖の前で立ち止まった頃、後ろからいかにも歴戦の猛者という筋骨隆々な大男が現れる。

 その隣には線の細い青鷹騎士がいた。森に不釣り合いな繊細な刺繍の施された隊服を土で汚し、汚れを確認しては眉をひそめている。


「へぇ、見事に攻められてるな」


「こんなド田舎の砦を攻めるなんてセンスを疑います」


 興味深そうに煙の上がる砦を眺めている赤鷲騎士と違い、青鷹騎士は砦に興味がなさそうだ。


 赤鷲騎士は体格と良い風格と良い、きっと高位の軍人だろう。隣にいる青鷹騎士も高位の軍人なのかもしれない。

 赤鷲騎士はあごひげを撫でながら何かを考えているようだ。


「なあ、青鷹の。お前は何か策があるんだろ? こんなひでぇ崖があると、俺は下りられても部下の大半が下りられねぇ」


 鋭い眼光で崖を睨んだ赤鷲騎士が青鷹騎士に視線を戻す。

 ぎろりと音がしそうな目力に青鷹騎士は怯んでいたが、尊大に頷いた。


「ええ、貴方方は此処で待機です。連れてきたアレを使います」


「アレねぇ……」


 大男は気乗りしない様子で腕を組む。

 国境を守護する赤鷲騎士団と教皇の一族を守る青鷹騎士団は異色の組み合わせである上に、一枚岩という訳でも無いようだ。


 そんな2人前に1人の青年が引きずり出される。まだ少年との境目くらいのその人物は乱暴に突き出されても抵抗しない。


 綺麗な白い騎士服を着て黒い首輪をつけたその顔を見た瞬間、俺は叫びそうになった。


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