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狂った世界を破壊する革命の狼煙  作者: kanaria
第2章 地下の国

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38.置いてけぼり

「リンダールも軍に居た時期があるの。でも魔族は基本的に頭が弱いでしょ? そのせいで文官にされたらしいわ」


 あの後どれだけゴネても出陣許可が出ず、ムスッとした俺にマリーが説明する。

 俺のせいでマリーも参戦が許されなかったのに、マリーはいつも通りだ。それが嬉しいような申し訳ないような複雑な気持ちになる。


 バディの道連れになるくらい遊撃部隊ではバディが重要視されているらしい。マリーだけでも出陣すると思っていたのに、それさえ裏切られた。


「マリーまで悪い……」


 あの様子だと、俺は闇魔法が使えなければ戦場に立たせても貰えないだろう。

 いや、簡単に死なない程度に強くならなければ許しがでないかもしれない。


「だが、リンダールは宰相なんだろ? なんで出陣許可の取り消しまでできるんだ?」


 普通、軍のことは軍の管轄だ。文官の管轄からは外れている。

 軍の上層部に掛け合ったら出陣許可が下りたりしないだろうか。


「……リンダールは一種の特権なの。先代魔王様の時代から宰相を務めていてね。軍に居た経験もあるから多少の融通が利くの。さすがに全て叶う訳じゃないみたいだけど、イオの出陣許可を取り消すくらいなら簡単よ」


「……そうか」


 やっぱり、リンダールに認めさせるくらい強くならないといけないのか。

 あいつが帰ってくるまでにどこまで強くなれるかだな。


 軍で階級を手に入れるのも良い。偉くなればリンダールでも簡単に命令できないはずだ。


 俺はマリーと別れ、部屋に入る。

 すると消し飛ばしたはずの山が元に戻っていた。


「……はっ?」


 窓の外の光景が信じられず、目をこする。

 それでも山は消えなかった。


「ちょ!! マリー、山が戻ってるんだけど!!」


 別れたばかりのマリーの部屋を猛烈にノックすると、嫌そうな顔のマリーが現れる。

 マリーは山が復活したことに疑問を持っていないようだ。


「山くらい戻るでしょ。魔王様がお力を使ったんだから」


「魔王が?」


 一度も会ったことがない存在だけれど、すごい力を持っているらしい。

 山を戻すなんて脳筋を統べるだけある。


「魔王って凄かったんだな」


「魔王様ね」


「え?」


「魔王さ・ま!」


「あ、ああ。魔王様な?」


 なんか良く分からないが、マリーは魔王が好きらしい。敬愛していると何かのタイミングで溢していた気もする。


 それでもそこまでするか?

 様を付けてるやつなんて殆どいないぞ。


 一応軍に所属しているので、公式の場では様付けしないといけない。だがそれ以外は基本呼び捨てだ。上官のことも呼び捨てなので、そういう文化なのかもしれない。

 俺もアランやフローリアを呼び捨ててるしな。


 恐らく俺より上の階級であろうマリーを見る。

 マリーにも偉そうな雰囲気は全くなかった。生意気な態度を取っても怒られたことがない。


 まあ、アランも偉そうには見えないしな。


 遊撃部隊だとそういうものなのだろう。

 俺はマリーに謝って部屋を後にした。


「それにしても破壊した山を戻せるなんて凄いな。どうやってるんだろ」


 未だに俺が使えない闇魔法は意外と汎用性が高い。火のようにも使えるし、空間魔法や時空魔法のようにも使える。もしかしたら回復だってできるのかもしれない。

 以前、闇魔法しか使えないなんて魔族は大変だと思ったことがあったが、逆に便利すぎる属性の可能性がある。ひとつの属性でこれだけのことが出来るのは闇魔法だけだ。


 俺は寝る前にゼルファイアに魔力を通す。

 相変わらず魔力が流れにくいが、反発まではされていないようだ。髑髏の目も弱い光を放っている。


「やる気がなさすぎだろ。弱い光っていうか死んだ魚みたいな目になってるんだが」


 沢山魔力を流しても力が漲ってくる感じはしない。明らかに弱体化していた。


 拗ねているだけなら早く機嫌を直して欲しい。

 だが、もし一度壊れたせいで不調が生じているのなら何とかしたい。今のままだと、どうすれば直るのか分からなかった。


 ミーナに聞いても分からないようだから、とりあえず手入れを頑張るしかない。

 俺はゼルファイアの古い油を落とし、新しく油を塗る。


 柄は汚れを落とし、清潔に保つことも忘れない。

 まだ巻替える必要はなさそうだ。欠けた時とは違い、ピカピカに輝いている。


「……これ以上どうしたら良いんだろうな」


 元気のないゼルファイアを鞘に戻し、俺はため息をついた。


 明日、出陣することもできないのだからミーナのところに行ってもいいかもしれない。ゼルファイアをどうにか出来れば多少戦えるようになる。

 俺は重い溜息をもう一度ついてからベッドに横になった。


 翌朝、戦場に発つことになるとは予想もせずに。

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