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狂った世界を破壊する革命の狼煙  作者: kanaria
第2章 地下の国

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37.糸口は掴めたのに!

 何度も闇魔法を爆発させ、感覚をなんとなく掴んできたころ、俺たちは不思議な空間から連れ戻された。


「お疲れ様です。闇魔法は使えるようになりましたか?」


 書類を片手にリンダールが尋ねてくる。聞いてきたくせに全く興味がなさそうだ。

 視線が俺を向くことすらない。


「生憎、使えるようになりそうなタイミングで誰かさんに呼び戻された」


「そうですか。貴方がそんなにのんびりしているとは思いませんでした」


 くそっ!


 鼻で笑うリンダールに腹が立つ。

 宰相というだけあって口論に慣れているのだろう。見た目より長い年月、魑魅魍魎を相手にしてきたようだし、俺では相手にならなそうだ。嫌味に嫌味を返す様も手慣れている。


「フローリア、アラン。地上には明日攻め入ることになりました。突入は遊撃部隊です。その後を軍部がついていきます」


「いつも通りね」


「俺に任せとけ!」


 進攻が明日というあり得ないスケジュールなのに2人は動じない。先陣を切れという酷い命令にもアランは楽しそうだ。

 好戦的に笑って腰の剣を撫でる。


「前に出過ぎないように気を付けてください。今回は領地を取るのが目的ではなく、攻められたお返しです」


「狙えたら領地も取るのか?」


 地上に土地を持たない魔族にとって地上は悲願だ。

 取って取られてを繰り返している。


「微妙ですね。当代の勇者は歴代でも強いと聞いています。占領したところで直ぐに奪い返されるかもしれません」


 やる気満々なアランを止めるようにリンダールが書類を机に置く。

 そのおかげでようやくリンダールの視線が俺を向いた。


「イオ、貴方は留守番でも構いません。まだ闇魔法を使えていないのでしょう? 足手まといになられても困ります」


「はぁ!?」


 予想外の言葉につい身を乗り出す。

 詰め寄ろうにも間にある重厚な机が邪魔だ。


 どうして急にそんなことを!


 当たり前のように言うリンダールが許せない。リンダールからしたら闇落ちという貴重な駒をただの報復合戦で失いたくないのかもしれないが、その程度の戦争ならするべきじゃない。戦う以上どうしても死者がでる。守られているだけの存在になんてなりたくなかった。


「当然俺も出る!」


 前回も何とかなったのだし、今回も何とかなるはずだ。死んだとしても残される人はいない。

 一瞬この前の戦争で助けたカレンが浮かんだが、俺は人間に復讐するためにここにいる。一人の少女の為に諦められるほど簡単な気持ちじゃない。


 それとも他に行かせたくない理由があるのか?

 攻め込まれた時は何も言われなかったのに。


 リンダールの真意を探ろうとじっと見つめると、リンダールが細く息を吐いた。


「前回も貴方を出陣させるつもりはありませんでした。闇落ちは育てれば強くなります。それが分かっているのに弱い状態のまま戦争に出して死なれる方が勿体ない」


「……俺は飾られてるだけの存在じゃない」


 そういうのは勇者の仕事だ。

 崇められ、期待され、責任を負う。俺はただの復讐者に過ぎない。


「もしお飾りになりたくないのなら、さっさと闇魔法を使えるようにすることです。闇魔法さえ使えれば貴方は強い。分かっているでしょう?」


「……」


 使いこなせていないのに山を消すほどの威力だ。意のままに操れれば最強だろう。

 言われなくても分かっている。甘えているつもりはない。


 俺はリンダールを睨みつけた。


「もう少し、もう少しで使えそうだったんだ」


 いくら戦争が始まるからといえ、戦わせてくれないのならあの空間に置いておいてくれればよかったのに。

 そうすれば闇魔法が使えるようになったかもしれない。


 悔しくて唇を噛みしめるとリンダールが笑った。


「今回は私も出ます。なので貴方をあの空間に入れておくことはできません」


「えっ? 宰相なんだろ?」


 文官が戦うなんて聞いたことがない。宰相は文官の最上位だ。護身程度はできるのかもしれないが、戦場に出るなんておかしい。

 間違いなく止めた方がいいのに誰も何も言わない。


「私はこの国で10本指に入る強さなので」


 さらりと告げられた言葉に思わず固まる。

 地上に居た時から強いと思っていたが、想像以上に強かったらしい。


 驚いている間にアランが俺を押しのける。


「いつかその席から引きずり降ろしてやるから覚悟しろ」


 舌なめずりをするアランはどちらが暴漢か分からない。間違っても文官にする宣言じゃないだろう。

 だが、リンダールは小さくうなずいた。


「そうですね。軍にはもっと強くなってもらわなくては困ります」


「はん! 偉そうに!」


 アランが好戦的にリンダールを睨んでもリンダールは動じていない。

 負けない自信に満ちているのだろうか。なぜ宰相なんてしているのか分からなかった。

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