34.爆発が直らない闇魔法
魔族側から攻めると聞いたので、闇魔法の練習に力を入れる。
ただでさえ狂剣ゼルファイアが不調なのだ。少しでも備えなければ次は生き残れないだろう。
俺は気合を入れて闇魔法を放ち、爆発を引き起こす。
決め顔で闇魔法を使っても、やはり爆発した。気分や顔の問題ではないらしい。
少し悲しい気持ちになりながら闇魔法を放っては爆発させる行為を繰り返す。
何をしても闇魔法は爆発してしまうらしい。やけになって連発しても爆発が連続しただけだった。
おかげで周りの魔族は距離を取り、俺に近寄ろうともしない。
マリーも今日は完全に別行動をしている。
「闇の玉でも闇の雫でも良いから何かでないかな」
どちらも初級の闇魔法で適性があれば簡単に出せる魔法だ。
特級の俺がまともに使えないなんておかしい。闇魔法の適性が小のマリーですら中級の闇の手を使えるのに。
なんで俺は全部失敗するんだ。
しかも失敗すると爆発するなんてベタ過ぎる。
何かが発動の邪魔をしているようには思えないのに、なぜ爆発するのだろうか。
俺は少し悩み、闇の手を発動してみることにした。
闇の手は中級なので失敗すれば爆発が広範囲になる。間違いなく迷惑をかけるのだが、もし簡単な魔法が難しく、難しい魔法程簡単に扱えるのなら普通に出るはずだ。
そう仮説を立てて今まで試したことのなかった闇の手を空に放つ。
次の瞬間、頭上で大爆発が起きた。
「わぁーお……」
これには他の魔族たちも堪らなかったようで、怒りに満ちた表情で俺を見る。
流石にマズイと思って謝罪をすると、魔族たちは更に距離を空けたところで訓練を再開した。基本個人練習の遊撃部隊で良かった。普通の部隊だったら怪我人がでたかもしれない。
「気を付けて空中に放ったんだがなぁ」
それでもあそこまで爆発するとは思わなかった。
ため息をついてその場にしゃがみ込むと、アランのバディが優雅に歩いてくる。
「俺に近寄ると爆発に巻き込まれますよ」
フローリアはアランのバディだし中佐だ。爆発に巻き込まれたところで無傷の自信があるのだろう。
俺の前で艶やかに微笑んだ。
「今日も良い爆発日和ね。あれ程大きな魔力暴走は初めて見たわ」
「……魔力暴走?」
「ええ、魔力が安定しないのでしょう? 放つ魔法に対して籠っている魔力が多すぎるから爆発をしているの。闇落ちの貴方なら中級でも難易度の高い魔法じゃないと暴走するでしょうね」
くすりと笑うフローリアは当たり前のように言う。
でも俺は目から鱗が落ちた気分だった。
「そうか……。魔力暴走」
魔力暴走なら俺も知っている。未熟な子どもが良く起こすやつだ。
基本不発になるか破裂音がする程度なので候補にも上げていなかった。近しい推測は立てたが、あくまで原因は分かっていない。だが、魔力暴走なら解決方法は簡単だ。魔力をたくさん使う魔法を放てばいい。
俺は嬉しくなって上級の闇魔法を放つ。
成功するビジョンしか見えていなかったが、近くの山が爆発で吹き飛んだ。
「……あれ?」
中級の闇魔法を超える上級の闇魔法を放ったのに爆発した。しかも余波が軍の施設を襲っている。
そのせいで警報がガンガンになっていた。
結界で施設は守られているものの、大惨事だ。
とてもマズイ。
「…………嘘でしょう」
俺以上に青ざめたフローリアが信じられないと言わんばかりに山のあった場所を凝視する。数秒前まで存在した山がそこにはなかった。
「これ、ヤバい?」
今のところ人への被害が確認されていないとは言え、山をひとつ吹き飛ばしたのだ。どんな罰を受けてもおかしくない。
俺は冷や汗をかきながら踵を返す。
しかしそんな俺の首根っこを誰かが掴んだ。
恐る恐る振り返るとそこにはマリーがいる。
うるさく響いていた警報も鳴り止み、誤報だと放送が入った。間違いなく誤報ではないのに誤報ということにするらしい。
俺は小さくなりながらマリーを伺った。
「な・に・を・し・て・る・の・?」
「ご、ごめん」
頑張ればマリーを振り払うことができる。それでも振り払う気にはなれなかった。
この前からマリーの怒り顔ばかり見ている気がする。
般若のような表情のマリーに引きずられて着いたのはリンダールの前だ。フローリアもついてきている。発言の責任を取るつもりらしい。
対面したリンダールはいつも通り良く分からない表情を浮かべている。
「確かに私は闇魔法の練習をするように言いました。ですが、山を消し飛ばせとは言っていないと思います。記憶違いでしたか?」
くすりと微笑むリンダールの瞳は笑っていない。それどころか机を叩く指の音が怒りを物語っている。
「……悪かった」
出会いが出会いだからか、リンダールに敬語を使うのは抵抗がある。
そもそもリンダールがどういうポジションなのか分からない。一度も階級を聞いたことがないので軍人ではないのかもしれない。
「…………はぁ。貴方の闇魔法の暴走は魔力の闇魔法への転換ミスです。元々使えなかった属性ですからコツが分かってないのがいけません」
「本当に?」
先ほど原因をフローリアに教えてもらった直後に爆発したのだ。
人を信じすぎるのも良くない。
そもそもこいつの言うことが信じられるのか?
クルスの捕まっていた懲罰房は真実だったけど。
俺はいまいち掴めないリンダールを前に悩む。また爆発したらもっと厄介なことになりそうだ。
「良いでしょう。特別な練習区域を提供します。これ以上山を消されても困りますし」
「嫌味か」
ちっと舌打ちをした俺にフローリアが驚いた目を向ける。
もしかしたらリンダールは結構上の役職なのかもしれない。そう思っても敬おうという気持ちが湧いてこないのだが……。これが一番の問題だった。
俺の荒い口調にリンダールが眉を片方上げた瞬間、部屋の扉が開く。
「イオ、お前やるな!! 山を消したんだって!?」
ノックをすることすらなく部屋に入ってきたのはアランだ。
その姿にリンダールの我慢が限界を突破したらしい。
冷たい微笑を浮かべると、指をパチンと鳴らした。




