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狂った世界を破壊する革命の狼煙  作者: kanaria
第2章 地下の国

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18/21

18.平和が1番

 その後狂剣と何かあることはなく、徐々に光も弱まっていった。1週間も経った今では装飾が厳ついただの剣だ。

 刀身も黒いけれど、まあ普通の範囲内だろう。きっと。


 ゼルファイアよりも困ったのは、寝ると両親の死に様がフラッシュバックすることだ。

 特に最後の光景が頭から離れない。最近では恨み言を言うようにまでなってしまった。


 2人はそんなことを言う人ではないのに。

 俺もいつまで正気を保てるか。


 少しずつ慣れている日常と夢の乖離が甚だしい。

 おかげで今も目の下に濃い隈があった。


「イオ!! またゼルファイアを置いていったでしょ! そんな普通の剣を振ってないでこっちにしなよ!」


「んー、気分じゃないんだ」


 俺はこの1週間、ゼルファイアではない方の剣を愛用している。今も振っているのは普通の剣だ。

 しかしマリーはそれが気に入らないらしい。わざわざ俺の部屋から狂剣を持ってきて使わせようとしてくる。


 部屋に置いていったのはわざとだ。

 そんな派手な剣は好みじゃない。


 命を預けるのだから少しでも気に入った剣を使いたい。俺の好みはスタイリッシュで切れ味の良い剣だ。


 しかし、そんな思いもマリーには通じないらしい。

 実は魔剣オタクだったのか、睨むように俺を見ている。


「せっかくの適合者なのよ。どうして使わないの?」


「普通に考えて黒い光を放つ剣とか嫌だろ! 髑髏の彫刻もなんか怖いし」


「そこが良いんじゃない! こんなかっこいい剣、他にはないわ。もちろんオハーンとか雨竜も好きだけど」


「雨竜?」


 ひとつだけ違う響きの剣につい反応してしまう。

 偏に魔剣と言っても色々あるらしい。そもそもそのゼルファイアはレプリカという話だ。信じられないけど。


「雨竜は東の方で作られた刀っていう種類の剣なの! ここら辺では一般的な武器じゃないわ。でもそこが痺れるって言うか……。ね、分かるでしょう? 簡単に折れそうな細い剣なのに切れ味が抜群で! その適合者の通った後には血の雨が降るから雨竜って言うの。一度でいいから見てみたいわ!!」


「……ふーん」


 興奮しているマリーはそのまま素振り中の俺に突っ込んで来そうな勢いだ。口調も早口になっている。

 どうやら俺は聞き方を間違えたらしい。


 剣の仲間ということで少し興味があるが、使っている人はいるのだろうか。

 少なくとも地上では見なかった。髑髏の装飾を剣に施すくらいだし、地下は独特な文化が広がっているのかもしれない。


 俺は素振りをやめ、タオルで滴る汗をぬぐった。


「それで?」


 わざわざゼルファイアを持ってきたのだ。何か理由があるだろう。

 そう思ってマリーを見たが、マリーは不思議そうに首をかしげている。


「何? あ、はい、ゼルファイア」


 意図が伝わらなかったのかマリーが俺にゼルファイアを押し付けてくる。そんなに好きならマリーが使えば良いのにと思うけれど、それは違うらしい。良く分からないこだわりがあるようだ。

 仕方なくゼルファイアを持つとマリーの黒い瞳が輝く。俺が狂剣を持つだけで喜んでいるのが可愛い。


「とりあえず素振りの続きでもすれば良いか? 魔剣なんて使い方が分からん」


 ため息をつくと、背後から人の気配を感じた。


「へえ、それなら俺が相手してやろう、か!!」


 声が聞こえたと思ったらアランが剣を振りぬく。

 ぎりぎりで避けたものの、あのまま立っていたら胴体が真っ二つになっていそうだ。


「危ないだろ!!」


 怒鳴り返すと、アランがニヤリと笑う。

 当たっても良いと思っていたのだろう。気配こそ消していなかったが、全く力を抜いていない。


「はん! 先輩としてお前に指導してやるっつってるだけだろ。へっぴり腰が!」


 言いながらもアランの攻撃は止まらない。

 双剣使いだけあって振り回す速度が速く縦横無尽に刃が降ってくる。剣を片手ずつで持っているとは思えないほど重さもありそうだ。


 このままだとマズイ!


 俺は狂剣を鞘から抜いて魔力を通した。

 マリー曰く魔力を通すのが正しい使い方らしい。


「使い方、知ってるじゃねーか! 嘘つきが!」


「魔力を通すと光ることしか知らねーよ!!」


 アランの攻撃をなんとかかわしながら反撃できないか隙を狙う。右から来たと思ったら左からも攻撃が来る。正直、避けられているのが奇跡だ。

 それでも避けなければ、どこに当たっても切り割かれてしまう。


 くそ、両刃の双剣なんて聞いたことねぇよ!

 自分だって危ないだろ!


 双剣使い自体珍しいが、両刃の双剣使いはとてもレアだ。

 力を籠めるときに剣を交差して押し込む双剣では両刃だと刃こぼれしてしまう。振り回した時に自分に当たって切れるリスクだってある。ぶっちゃけ余程の戦闘狂でなければ使わないだろう。


 それでも戦闘中のアランはとても楽しそうだ。


 どうすんだよ……。

 そのうち当たるぞ、これ。


 体力が落ちれば避けられなくなる。アランはこれでも手加減をしてくれているらしい。ぎりぎりだが避けられる程度に調整されている。

 だが、俺が避けられなくなった時、切られない自信がない。訓練では寸止めが一般的だが、アランなら切り割いてくる気がする。


 俺は恐怖も有り、仕方なくアランの攻撃をゼルファイアで受け止めた。ちょうどアランが剣をクロスさせて押し込もうとしてきたので、一か八かの賭けだった。


「ほお、良く止めたな」


 押されつつも両腕で剣を構え、アランの剣を止める。それでも力の限界を表しているのが分かるくらい手も足も震えている。

 アランは褒めていたが、力負けで徐々に姿勢を崩しているのが丸わかりだ。


 このままでもいずれアランの剣が俺を切り割くだろう。俺は奥歯を食いしばってゼルファイアに力を籠める。

 アランも当然押してくると思ったが、アランは俺の足を払う。それだけで俺は転がってしまった。


 俺の倒れたすぐ横にはアランの右手の剣が突き刺さる。目の前にも剣が突きつけられていて絶体絶命だ。


「はい、死亡。お前の負け」


「ぐっ……!」


 鼻で笑うアランは俺の腹を踏みつけてくる。ゼルファイアも遠くへ飛んでしまっていた。


「イオ!! アラン、足をどかして!!」


 心配していたのか、マリーが駆け寄ってくる。ついでにアランにも体当たりをしていた。

 マリーが体当たりしてもアランの足が俺の上から退くことはない。


「いてぇな。何すんだよ」


 腹いせなのか一度俺の腹を思い切り踏んでからアランがマリーに向かう。


「げほっげほっ。マリーに手を出すな」


 鈍く痛む腹を堪えながらアランの足にしがみつくと、アランとマリーが目を丸くした。


「イオ! ダメよ!」


「……お前、悪くないな」


 今度はしゃがみこんで俺の顔を持ち上げたアランは嬉しそうだ。

 玩具を見るような目で俺を見ている。何かがアランの心に響いたらしい。


「特別に俺が面倒を見てやるよ。嬉しいだろ?」


 全然嬉しくない。

 でも嬉しいと言わなければマリーに挑む気だ。


 俺は唇を噛みしめた。


「う、うれしい」


 絞り出すようにそう言うとアランは上機嫌に笑う。

 直前のことなんて忘れていそうだ。


「じゃあ今からお前は俺の舎弟な。鍛えてやるから感謝しろ」


 それだけ言い、アランは俺の襟首を掴む。

 慌てたマリーが止めようと叫んでいるが、アランは歩みを止めない。ついてきたマリーを含め、俺たち3人は軍の建物の中へ戻って行った。


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