17.どの武器も同じに見える
「でも、困ったわね。スキルが分からないと武器を選べないわ」
マリーは悩まし気にそう言うと、武器庫へ向かう。
例え得意武器やスキル補正が分からなくても武器を選んで練習しておく必要があるらしい。ただ、そう言うマリーの武器も何か分からない。
「マリーはどんな武器を使ってるんだ?」
あくまで参考にという雰囲気を出して聞くと、マリーは俺を振り返った。
「私はナイフと籠手ね。近接も近接。弓も使えなくはないけど、工作員よりの仕事ばかりをしていたのよ」
「なるほど。俺もそういう仕事になるのか?」
髪が茶色いマリーが潜入を担当するのは良く分かる。黒髪だと染めても何かあればすぐにバレてしまう。角さえ隠せれば人と変わらないのだからマリーが潜入担当になるのも当たり前だ。
だが、バディがそういう仕事をしているのなら俺も潜入担当になるのだろうか。
できれば前線で神官どもをぶっ潰したいんだが。そのために抵抗しないで魔族の国にいる訳だし。
俺は黒くなった髪を触る。
自分では見えないが、染めるのも大変そうだ。どうするかも含めてマリーを見ると、マリーが眉をしかめた。
「あんたはないんじゃない? あれだけの闇魔法の適性があって潜入捜査は変よ。普通に戦闘員ね」
そう言われてほっと息を吐く。
「それなら剣が良い」
才能がないと父に言われたが、やはり一番練習していたのも剣だ。他の武器なんて使い方すら知らない。
スキルが分かれば良かったんだが……。
まあ、武器のスキルがあるとも限らないし、仕方ないか。
辿り着いた武器庫はとても広かった。奥にも扉があり、そちらにも武器があるのかもしれない。
「……適当に置かれ過ぎじゃないか?」
少なくとも手前の部屋は武器で溢れており、人が通るのすらギリギリだ。整理もされていないのか槍と弓がセットに置かれていたり、剣と斧が交差していたりする。
そのうち雪崩が起きて怪我人がでそうだ。
「使わなくなった武器が山のように放り込まれてるからこんなものよ。拘る人は自分で武器を頼みに行くし」
「じゃあここにあるのは初心者向けなのか」
その割に刃が欠けているものや仕えなさそうなものはない。
すぐに使えそうなのになぜここに置かれているのだろうか。
「うーん、まあ軍の備品ね。持ち主が戦争で死んだものもあるわ。敵の武器を奪ってここにあるものもあると思うし、出所が分からない武器が多いと思う。気になるのかしら?」
「いや、別に」
武器も高く売れるだろうに此処に眠らせておく理由が分からない。手入れがされていないようにも見えないので、管理人もいるのだろう。
費用がかかってそうなのに変だな。
それだけ軍部が入れ替わるということか?
少なくとも地上の騎士は個人で武器を用意する必要があった。
予備の武器は武器庫に用意されていたが、ほぼ置物だと聞く。数もほとんどないらしい。
「とりあえずここから好きな武器を選んでいいのか?」
「ええ、管理人を呼んできましょうか?」
マリーも武器の善し悪しが良く分からないのか、足元に置いてあるナイフをつまみ上げる。
これだけ乱雑に置かれていると本数管理すらしていないだろう。何本かなくなっても気づかない気がする。
「そいつは武器の説明ができるのか?」
本当に管理しているのか疑わしい状態だ。武器に興味のない管理人なのかもしれない。
「…………一応?」
「すっごい、間があったんだが。それなら要らない。適当に選ぶ」
剣なら俺も使っていたことがあるのだ。選ぶくらいならできるだろう。
そう思ったのだが、奥の扉からひょっこりと7,8歳くらいの小さな人が現れた。
「……お客さん?」
びくっと体を震わせたのは長い前髪が顔をかくしている子供だ。声変わりする前の年齢なので男か女かすら分からない。
「あら、ミーナじゃない。起きてくるなんて珍しいわね」
「…………マリー」
「隣にいるのは新しく軍に入ったイオよ。よろしくね」
「よろしく」
とりあえず握手をするために手を出したが、後ろに逃げられてしまった。
やたらとビクビクしているので人見知りなのかもしれない。俺が怖いってことはないよな?
手を引っ込めても子供はマリーの後ろから出てこない。
「ミーナは人見知りなの。許してあげて。でも、武器の修理に関しては魔族の国一番よ」
「本当に?」
こんな小さな子供が一位になれるくらいショボいのか?
振ったら壊れるような剣が普通とか言わないよな。
マリーの紹介に不安を覚えながら、しゃがみ込む。
目の高さを合わせても子供はマリーの後ろから出てきてくれなかった。
「ほら、疑うから拗ねちゃったじゃない。こうみえてミーナははちじゅ「ダメ!!」」
「はちじゅ?」
変なところで途切れた言葉の先が気になる。マリーは一体何を言おうとしたのだろうか。
続きを待ったけれど、教えてくれなさそうなので剣に向き直る。
俺が使えそうなのはそれ程大きくないここら辺だろうか。
ガサガサと武器の山をかき分けていく。
抜き身の武器もあるので下手に手を突っ込んだら怪我をしそうだ。
「お、これなんかいいんじゃないか?」
鞘から抜いて刃こぼれの有無を調べる。刀身に映った俺は本当に黒髪をしていた。
「……それじゃない。貴方の武器はあっち」
今までマリーの後ろに引っ込んでいたミーナが別の方を指さす。
そこには武器でできた山があった。
「はあ? あそこから探し出せって言うのかよ! これで良いんだけど」
握った感じも悪くない。重さも少し重いが、鍛えれば耐えられる程度だ。
「ダメ!! 貴方の武器はアレ」
「なんなんだよ……」
譲ろうとしないミーナにため息をついてから武器の山へ向かう。
ミーナの指さしていた武器の山は剣以外にも様々な武器が重なりあっていた。
「痛っ!」
槍や斧、メイスなんかもあったせいか指が切れて血が出る。出血量が多いせいか、マリーも近づいてきた。
「大丈夫?」
「ああ。見た目は酷いけど浅い傷だ」
俺は流れる血を止める為に布を探す。ハンカチなんて洒落たものは持っていなかった。
「まったくもう!」
「…………適合者」
マリーからハンカチを貰って止血をしていると、ミーナが変なことを言う。
うっとりとした視線を辿ると、怪しく光る剣があった。
「なんだ、これ」
光る剣何て神話に出てくる勇者の剣くらいだ。
この剣はそれとは逆に黒く光っている。中央についている髑髏の模様も禍々しい。
「これは狂剣ゼルファイア…………のレプリカと言われていた剣」
「レプリカ? レプリカでこの威圧感かよ」
魔族の国に来て最初にあった少女の威圧より酷い。
何者にも屈しないという強い意志を感じる。
「でも貴方は適合した」
俺を見ることもなくミーナは剣に見惚れ続けている。
マリーも目を細めて剣を見ていた。
「そう言ってもなぁ……」
良く分からないが、光る剣なんて目立って仕方がない。髑髏も好みと違う。
これを使うのを勘弁してくれないかとミーナを見る。ついでにマリーも見たが、置いていくことを許しれくれなさそうだ。
仕方ない……。
先に見つけた剣も貰っていこう。
俺はしぶしぶ狂剣を手に取った。




