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狂った世界を破壊する革命の狼煙  作者: kanaria
1章 闇落ち

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11.懲罰房

 黒髪の男は闇に潜ったようで、クルスとは違うルートでセントレア教会に侵入する。昼間だというのに男の力が弱まることを知らないようだ。


「貴方、羽のように軽いですね。もう少しちゃんと食事をするべきでは?」


 男が俺を下ろしながら眉を顰める。

 そういう男も筋肉がついているようには見えない。だが、俺を軽々と持ち上げたのだからスキル持ちか細マッチョなのだろう。


「……うるせぇ」


 好きで食べていない訳じゃない。

 俺だって筋肉がつけられるのならつけたい。筋肉に対する憧れはある。ただ、腹筋が割れるほど豊かな生活をおくれていないだけだ。


 余計なお世話だと男を睨むと、男が肩をすくめた。


「あそこ、あの建物に貴方のお友達は居ますよ。私が手伝うのはここまでです」


 なぜか男はそう言い残して闇に溶ける。

 こうなるといよいよ男の行動原理が分からなかった。


 きっとあの男なら楽にクルスの元へ行ける。なのに俺を放り出したのはなぜか。俺の反応を見ようとしているのなら離れる意味が分からない。


「ちっ……」


 掴めない男だ。

 他人を翻弄することに慣れている。恐らく消えたように見せかけて側にいるのだろう。


 事実、誰かに見られているような視線が消えない。

 ただクルスに会いたければ、男の指した建物に行くしか道はなかった。


「本当にここにクルスが居るのかよ」


 ぼやきながら歩いていくと、青鷹騎士団の制服を着た男が建物の前に立っているのが見える。今回はぎりぎり俺の方が早く騎士に気づいた為、近くの物陰に隠れることができた。


 危な!

 気を抜いてたら見つかるぞ。


 クルスとの時も考えたが、セントレア教会に忍び込むのは犯罪だ。どんな罰を受けるか分からない。

 平民の俺なんて殺されてもおかしくないだろう。助けに行ったはずがピンチになるなんて間抜けすぎる。


 俺は緩んでいた気を引き締めた。


「でも、どうするかな……」


 男が指さした建物の入り口には青鷹騎士団の聖騎士が立っている。

 他の建物の入り口には立っていないので、確かに重要な建物のようだ。


 1人ならまだしも2人も立ってるんだよなぁ。

 偶然を装って平民()が近づくのも変な場所だ。


 立っているのが聖騎士なのも嫌な感じがする。青鷹騎士団は基本的に貴族がなる聖騎士しかいないが、聖騎士特有の金の刺繍に嫌な予感がする。


 お貴族様が建物を守るだけの任務に着くことなんてあるのか?

 お飾りみたいなもんだろ。


 俺は青鷹騎士を前に首をひねる。


 貴族は有用なスキルを幼少期から鍛えていたり、魔法適性が高かったりする為、平時ではとても強い。

 ただ、走ることや人を切ることが出来ず、実戦では役に立たないやつらばかりだ。一撃だけ強くても戦場では生き残れない。味方ごと吹き飛ばす殲滅戦で活躍するくらいだ。


 それでもその一撃が大勢の平民を消し去るから畏怖され、特別視されている。平民であそこまで広範囲の攻撃ができる者はいない。

 そんな騎士が建物を守るなんてどうなっているのだろうか。


「見廻りも形だけのようなものだろうしな」


 簡単に侵入できた2回を思い出す。

 他の騎士団が守護していたらこうはいかなかったはずだ。


 かといって軽視もできない。今の俺は小型のナイフ1本しか持っていないのだから剣を持つ騎士相手には分が悪い。青鷹騎士団の聖騎士ということは強力なスキルも持っているはずだ。

 対して俺は自分のスキルも分かっていない。正面からぶつかったら負けるだろう。


 もしかして、あの男は俺が建物に侵入できるかを見てるのか?


 そうだとしたらなぜそんな事をするのだろうか。

 騎士団のスカウトマンなら分かるが、男の髪は黒い。黒髪の騎士なんて聞いたことがなかった。教会に侵入させる試験も存在するはずがない。あまりに危険すぎる試験だ。


 まあ、男の真意が分からなくてもやるしかない。

 考えるだけなら後でもできる。


 俺は改めて建物を守る青鷹騎士を見た。


「俺の独り言が聞こえてなくて、存在にも気づいていないのなら探知系のスキルはないな」


 あったとしても微弱だ。この距離で気づけないのなら活躍しない。

 それなら攻撃スキル持ちだろうか。それはそれでやりにくい。


 俺はとりあえず、石を投げて物音を立ててみた。


「なんだ!? 変な物音がしたぞ!」


 聖騎士たちが顔を見合わせ、音のした方を向く。

 けれど動いたのはひとりで、もう一人は入口に残ってしまっていた。


 やっぱりこうなるか。

 後はあいつをどうするかだな。


 1人なら簡単だっただろうに、2人もいるから厄介だ。


 それでも運は俺に味方したらしい。遠くで女性の悲鳴が聞こえ、残った聖騎士がそちらに足を向ける。

 それほど遠くまで行かなかったが、これなら気づかれずに侵入できそうだ。


 俺は騎士の死角から素早く建物に侵入した。


「人生で一番心臓がドクドク言ってる気がする」


 変に切れる息を整えながら建物の奥へと進む。

 騎士に気づかれては不味いので、急いで入口から離れなければ。


 俺は、静かにけれど足早に建物の中を走る。まだ入り口付近だからか、人影は一切見えなかった。


「なんのための建物だ?」


 外から見た感じでは2階建てだった。贄の棟のように広くもなく狭くもない。間違いなく俺の家よりは広いけれど、貴族の家よりも狭い建物だ。


 ある程度入口から離れたところでひとつの部屋に入る。


 絨毯の敷かれた部屋は使われていないと思えないほど綺麗に掃除されていた。

 壁には絵画もかけられている。その部屋で異常に目立っているのは入ってすぐにある格子だけだった。


「ここ、一部屋一部屋が牢屋になってるのか」


 よく見ると部屋にある窓は小さく、そちらにも格子が埋まっている。

 部屋の中は豪奢なので貴族用の牢屋なのかもしれない。


 あいつ、嘘をついていなかったのか。


 今も陰から見ていそうな男を思い浮かべる。

 この豪華な牢屋。確かに懲罰房の可能性が高い。クルスもこの建物に居るのだろう。


 なんで普通の牢屋よりも見張りが少ないんだ?

 逃げても貴族が平民として暮らすのが難しいせいか?

 それとも捕まっている貴族に配慮してる?


 良く分からないが、平民の入れられる牢屋と違って快適そうだ。これでも貴族にとっては辛いとか……。

 1部屋しかなくても俺の家よりも広そうだ。


 俺は一部屋一部屋確認し、ようやくクルスのいる部屋を見つけた。

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