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アラフィフおじさんの推し活奮闘記  作者: DAI


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第10話

私の名前は田中健二。今年で45才。いわゆるアラフィフだ。






ユイにお酌をしてもらった翌日。

私は『残業』をせずに、真っ直ぐ家に帰ってきた。週末の握手会のことを考えると遠足の前日の子供のようにワクワクした気持ちを抑えられない。


「ただいま。」

「おかえりなさい。」

ああ、愛しき我が家。愛しき家族。

スタドリと出会ってから、家族との平凡な日々も輝きを増している気がする。


「今日は、早かったのね。」

・・・何か棘がある。でも、まあいい。私は幸せなのだ。

「お父さん、お風呂入ってきて。すぐ。」

ユ、ユイまで・・・。一体何が?

「わ、わかった。行ってくる。」

私は、慌てて風呂場に向かった。これは、何なのだ。2人して、私にドッキリを仕掛けようとしているのか?わからない。

私は、急いで風呂に入って出てきた。


妻とユイが並んでダイニングテーブルに座っている。な、何なんだ?

「あなた。はい、ビール。」

妻が、ドンっと缶ビールを置く。

私は、唖然として妻を見る。

「あなた。どうぞ、座ってください。」

「は、はい・・・。」

なんだかわからないが、妻の向かいに座る。そして、ビールに手を伸ばした。呑むのを躊躇してしまう。

「あなた。呑まないの?」

「は、はい!」

妻の顔が、怖い・・・。私はびくびくしながら、缶ビールを口に運ぶ。

ビールが喉を通らない。味も喉ごしも感じない・・・。

「『いつもの』は言わないの?」

「は、はい。この一口の為に生きてるな・・・。」

声が震えて小さくなる。


「じゃあ、私から話すね。」

ユイが、話し始めた。私は手を膝に置き、頭を下げた姿勢で、黙って聞いている。

「最近、お父さん、残業が多いでしょ?私とお母さんは、お父さんの体を心配していたの。」

「・・・はい。」

「私は、あまり言いたくないけど、その、お父さんが、別の人と会ってるんじゃないかって、疑い始めたの。」

「・・・はい。」

「だから、お母さんと一緒に、お父さんの後をけたの。」

「・・・は、はい?」

思わず声がのけ反ってしまった。


「私とお母さんは、会社から出てくるお父さんの後をけた。そしたら、違う駅に降りて喫茶店に入っていった。」

「・・・。」

「私とお母さんも、少し遅れて同じ喫茶店に入ったの。お父さんにバレないように。そしたら・・・。」

「・・・。」

ゴクリ。生唾を飲む音が聞こえた。

「女の人がお店に入ってきた。女の人が奥に向かって手を上げたら・・・お父さんが笑って手を上げてた。」

「・・・い、いや、それは。。。」

「女の人は、お父さんの前に座って、、、ずっと、楽しそうに話してた。」

ユイがスマホを取り出した。

「これが、その時の写真。」

写真を見ると、私と後姿の女性が親しそうに話している。。。これは、アヤ師匠だ。




「ち、違うんだ、この人は・・・。」

私は、否定しようと必死だった。

「何が、違うの?」

妻が、今まで聞いたことのないような低い声で言う。

ペットのタロウは、怯えて出てこない。

「お父さん、これは、決定的だよ。」

ユイも妻に加勢する。完全に私の方が分が悪い。

「彼女は、ア、アヤさんと言って、あ、あの、保険の勧誘員なんだ!」

「保険の勧誘員?」

妻が、今までに聞いたことのないような高い声で驚く。


「そうなんだ。今まで保険に入ってなかったから、家族の為にも保険に入った方が良いですよって、部下や同僚に言われて、この年齢でも入れる良い保険が無いか、知り合いの保険会社の人に聞いてたんだよ。私がもし居なくなっても君たちに苦労は掛けたくないからね。会社では話が出来ないから、喫茶店で話をしていたんだ。君たちが居たなんて、本当にびっくりしたけど、そういうことだから安心してほしいんだ。」

私は、一気に捲し立てた。




「あなた、そこまで考えてくれてたのね。」

妻の目が潤んでいる。

「お父さん、疑ってごめんなさい。」

ユイは、申し訳なさそうにしている。

「2人とも、わかってくれれば良いんだよ。」

私は、心の中でスマンと呟いた。とりあえず、誤解?は解けたので良しとしよう。後のことはその時に考える。


「じゃあ、2人の誤解も解けたし、飯にしようか?」

「そうね、おとうさん。」

「私、急にお腹すいちゃった。」

一家団欒が戻ってきた。今後の推し活は、今まで以上に注意をしなければ。そして、やはり、一番は家族だ。スタドリに熱中するあまり、家族を蔑ろにしていたかも知れない。反省しよう。

「ところで・・・土曜日なんだが・・・」

「休日出勤頑張ってね。」

妻の笑顔が戻った。私は胸をなでおろした。


とりあえず、土曜日の握手会は、大丈夫そうだ。


ピコン!


スマホの通知だ。

アヤ師匠からのメールが来ていた。

「土曜日は、10時半にショッピングモールのCDショップに集合のこと。」

「・・・了解っと。」


初めての握手会。本当に楽しみだ!






しかし、家族の危機が、まだ燻ぶり続けているのを、この時の私は知る由もなかった。








<つづく>

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