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アラフィフおじさんの推し活奮闘記  作者: DAI


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9/15

第9話

私の名前は田中健二。今年で45才。いわゆるアラフィフだ。




今日は、Star☆Dreamスタドリの推し活の私の師匠であるアヤ師匠から、直々にスタドリ指南を受ける日だ。待ち合わせの喫茶店は、アヤ師匠の行きつけで、落ち着いて話すにはいい場所らしい。

商店街の中ほどに、その喫茶店はあった。昔ながらの老舗の喫茶店だ。最近で言えば『昭和レトロ』ってやつか。喫茶店に入ると、アヤ師匠は、まだ来ていないようだ。店の奥のテーブル席に座る。

お客さんはそれなりに居るが、静かで落ち着いて話せそうだ。さあ、アヤ師匠が来るまで待つか。


数分後。


カランコロン。

喫茶店のドアが開いた。アヤ師匠だ。こちらに向いて手を上げたので、私も手を上げてこたえる。


「ケンジくん、待った?」

「いえ、そんなに待ってないです。」

アヤ師匠は、今日も格好いい。

「ケンジくんは、何にする?」

「じゃあ、アメリカンコーヒー、ホットで。」

「私も一緒にしよう。」

そういうと、手際よく注文する。さすが常連だ。慣れている。


それから、私たちはスタドリの新曲のことや、先日のイベントのことなど、いろいろと話をした。

「今度の握手会のことだけど。」

「はい。」

「ケンジくん、握手会は初めてだよね。」

「そうですね。」

「まあ、そんなに緊張しなくてもいいから。大丈夫。」

「握手会って、どんな感じなんでしょうか?」

私は、気になってアヤ師匠に聞いてみた。


「まず、場所は知っての通り、ショッピングモールの広場で。周りはパーテーションに囲まれてる感じ。参加券を持っている人だけが、中に入れる。」

「ふむふむ。」

「握手会の参加券は、ショッピングモールの中のCDショップで売ってる、スタドリのセカンドシングルを買うと先着順でもらえる。」

「ふむふむ。」

「参加券をゲットした人は、集合時間になったら、指定の場所に集まる。参加券に番号が書いてあるから、その順番に並ぶ感じだね。」

「ふむふむ。」

「時間になったら、スタッフに呼ばれるから、一人ずつ、パーテーションの中に入る。」

「ふむふむ。」

「中に入ると、スタドリのメンバーが机の前に並んでるから、メンバー一人ずつと順番に握手をしていく。スタッフに促されたら、次のメンバーに行く感じね。」

「ふむふむ。」

「メンバー全員と握手が終わったら、そのままパーテーションの中から出て、終了。プレゼントとか写真撮影とかは禁止ね。CDにサインは書いてくれるかな。」

「ふむふむ。」

「さっきから、ふむふむ。しか言ってないけど、大丈夫?」

「とても分かりやすい説明でした。さすが師匠。」

「分かればよろしい。なんちゃって。」

アヤ師匠が笑う。私も思わず笑ってしまった。


「じゃあ、握手会は、午後だから、お昼前に集合ね。みんなでCD買ってから、ご飯食べて、握手会って感じで。」

「分かりました。」

「詳細はグループメールで。」

そういうと、私が止める間もなく、伝票を持って行ってしまった。

アヤ師匠。男らしい。私は、すぐに後を追って、割り勘にしてもらった。


握手会か。私にとっては、スタドリに物理的に触れられる初めての機会。このチャンスを最大限に活かさなければ。是非、何かしらの爪痕は残したい。

そんなことを考えていると、あっという間に我が家についた。いかん、気持ちを切り替えなくては。




ピンポーン。


「ただいま。」

「おかえりなさい。」




何か、いつもと雰囲気が違う気がする。

「あなた、ごめんなさい。ご飯、遅くなりそうなの。いつもよりゆっくりお風呂に入ってきてくれる?」

「あ、ああ。わかった。」

妻にしては、珍しい。近所の奥さんとの話にでも夢中になってしまったんだろうか?

風呂は一日の垢も落としてくれるが、疲れも癒してくれる。私は、いつもよりゆっくり湯船につかった。


「いやー、ゆっくりしすぎて、上せてしまったよ。」

「ハイ。ビール。」

「あ。ユイ。ありがとう。」

「たまには、私がお酌するよ。」

おお。我が娘がそんなことを言うようになったか。父はうれしいぞ。

「お願いするよ。」

慣れない手つきで、ユイがお酌をしてくれた。


プシュっ!

トクトクトク。

グビグビッ!

プハーッ!

「この一口の為に生きてるな!」


「美味しい?」

ユイが聞いてくる。

「ユイがお酌してくれたビールは、格別に美味しいよ。」

「お父さんありがとう!」

「たまには娘のお酌で飲むのも良いでしょう?」

妻が料理をテーブルに並べながら言う。でも、どこか棘があるような?気のせいか。


「お父さん、残業は一人だけでやってるの?」

「いや、上司や部下も一緒だよ。」

「女の人も?」

「ん。そうだな。男女平等だからな。」

・・・なんで、そんなことを聞くんだ?ユイは。

「女の人も残業なんて、大変なんだね。」

「そうなんだよ。まあ、忙しいのは良いことだけどな。」

「私。お父さんの体が心配。。。」

ユ、ユイ!本当に良い娘だ!


「大丈夫。お父さんの体は頑丈だからな。」

私は笑って答えたが、、、

妻の目が笑っていなかったことに私は気付いていなかった。。。




<つづく>

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