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決着

<決着>


 痺れて動けない未那を抱いて部屋を出た藤崎は、辺りを警戒しながら別の部屋に入った。藤崎のストーンの力が覚醒した所為なのか、人の気配が手に取るように分かり、迷わずにこの部屋に着いた。部屋に入るとドアのロックをかけ、奥にあったベッドに未那をそっと降ろした。その部屋は医務室のようだった。ベッドの隣の棚には、さまざまな薬が置かれていた。藤崎は、薬の名前を確認すると3種類の薬を用意し、そばにあった冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。ベッドの隣に座ると未那の口に薬を入れ、ミネラルウォーターを自分の口に含むと、未那の唇から流し込む。未那がそれをのみ込むのを確認すると、未那の耳元でそっと囁く。

「茉奈を助けにいってくる。未那が動けるようになったら、来た道を戻って外に出るんだ」

未那は、驚き、目を見開く。

「だめ・・・ひとりじゃ・・・き・・・きけん・・・だわ・・・」

やっとのことで、声を絞り出す未那。

「大丈夫だよ。必ず茉那は助け出すから」

そう言うと、未那の唇に藤崎がそっと触れる。暫くの間そのままでいると未那から力が抜けていった。藤崎は薬の中に睡眠剤を入れていたのだ。少量なので痺れが取れる頃には気がつくだろう。静かに寝息を立てる未那を残して藤崎は部屋を出た。外からドアノブを握るとドアのロックがかかった。


 藤崎は息を殺して茉奈を見つめていた。先ほど美優に襲われた部屋に戻っていたのだった。茉那は膝を抱え、じっと眼を閉じて動かずに座っていた。茉那の周りの球体に変化はなかった。

その時、白衣を着た一人の男が茉那の捕えられている部屋に入ってきた。顔はよく見えないが周りの研究員たちは姿勢をただし、男に頭を下げている。かなりの地位にいるものなのであろう。そして、その男は茉那の作りだした球体に触れ、中を覗き込む。明かりが男の顔を照らしだす。

(・・・黒川博士!!)

藤崎は思わず声をあげそうになった。

そこにいたのは未那たちの指導者的立場にあった黒川博士だった。

黒川は茉奈を見ていた視線をこちらに向ける。

あわてて、計器の陰に身を隠す藤崎。

(彼は、俺が此処にいることに気が付いている。しかし、なぜ彼が・・・)

混乱する頭で答えを探していた時、突然天井のスピーカーから黒川の声が流れてきた。

「藤崎君、黒川だよ。私は手荒なことはしたくないので、こちらの部屋に足を運んでは頂けないかな?来なければ、ここにいる君の大切な娘に君を呼んで貰うしかないのだが・・・」

「その必要はありません・・・そして、茉奈に触れさせる訳にはいきません。黒川博士!」

扉を開け、隣の部屋から入ってきた藤崎が叫ぶ。左手には渦巻状の赤い光を纏った刀が握られていた。

「ほう、ストーンの力を覚醒させたのですね。君の力が強くなれば、そのストーンも進化します。・・・それにしても凄い力ですね。君にストーンを預けたのは正解でしたね。今まで、そのストーンを装着した者の中でそこまで力を引き出した者はいませんよ。しかし、そのストーンは返していただかなくてはなりませんね」

藤崎は黒川の言葉には答えず、静かに口を開く。

「茉奈は、返していただきます」

刀を黒川に向けたまま、前に進む。部屋の中にいた研究員たちは身動きできずにただ、立ちすくんでいた。黒川は、不気味な笑みを藤崎に向けていた。

そして、その藤崎の背中をじっと見つめる視線があった。その者の手には一本のダーツが藤崎に狙いをつけていた。そう、田辺美優がそこにいた。

しかし、藤崎は美優の存在に気付いていないようだった。

美優の手からダーツが放たれる。

一発の銃声が部屋中に反響する。ダーツが銃弾にはじかれ、計器盤に突き刺さる。

銃を構えた未那が、美優に狙いをつけていた。

藤崎は何事もなかったように黒川に向かって歩き続けている。

そう、美優が後ろにいたことも、未那が来ることが分かっていたかのようだった

藤崎の覚醒した力は、それほどまでに凄かった。

黒川が舌打ちして、右手を前に突き出す。黒川の手が青く輝きだし、上に向けた掌に青く光る球状の物が浮かび上がる。

そしてそれは、だんだん大きくなり、やがて黒川の手をのみ込み・・・。

「な、なんだこれは・・・!?」

驚きのあまり黒川の顔が引きつる。

しかし、青い光はそのまま膨張を続け、黒川の腕をのみ込み、徐々に体も呑み込んでいく。

「ば、ばかな・・・この力は・・・」

その時、未那が叫ぶ。

「茉奈!」

未那の叫びに、藤崎が茉奈に目を向ける。

茉奈を護っていた球体は消え去り、目を見開き、黒川に両手を向ける茉那が、そこに立っていた。

「茉奈・・・茉那の力なのか・・・」

そして、黒川の体全てが青い光に包まれ、今度は青い光が収縮を始める。

やがて青い光は、拳ほどの大きさになり、光が失われると黒川が取り込んでいたターコイズがあらわれた。

すると、美優が突然意識を失い倒れる。そして、部屋にいた研究員たちも次々と倒れだす。

未那は美優に駆け寄る。

「美優ママ!」

美優の体を揺さぶり叫んでいた。

藤崎は思い出したかのように茉奈のほうを振り返ると、茉那がこっちに向かって駆け寄ってくる。藤崎は、茉奈を抱きとめた。

「お父さん・・・会いたかった・・・」

泣きじゃくる茉奈の頭を優しく撫でる藤崎。

「よかった、茉奈・・・無事でほんとによかった」

そういいながら、茉奈を連れて未那のほうへと向かう。未那は美優のそばで心配そうに顔を覗き込んでいる。しかし、茉奈に気がつくと立ち上がり、茉奈を抱きしめた。

「茉奈、大丈夫だった?」

未那の問いかけに頷く茉奈。

「未那ちゃん?・・・藤崎君もひさしぶりね」

未那と藤崎が振り返ると、美優が体を起こしていた。

「ねえ、ここは・・・どこなの?」

美優は辺りを見回し尋ねた。黒川に操られていたのか、今までの記憶はないらしい。

「美優ママ、話は後にしてここから出ましょう」

訳がわからず頷く美優。

すると、倒れこんでいた研究員たちが目を覚まし、立ち上がり辺りを不思議そうに見回している。どうやら研究員たちも黒川に操られていたらしい。

「みなさん、ここから出ましょう。私たちの後に続いてください」

未那はそう言うと、美優、茉那、藤崎と共に部屋を出た。



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