弐『ギヤ』
※『歯車』のオマージュのような何か
※偶数段は人工知能の推測を活用しています
一、
僕はある知り人の葬儀祭式につらなるために鞄を一つ下げたまま、東海道のある停車場へその奥の避暑地から自動車を飛ばした。
二、
そこで僕は一人の女に出会った。その時彼女は僕の傍に坐って僕に向って自分の経歴を話した。僕は彼女の話した事のうちで、特に彼女の職業について注意して聞いた。
「私は何でも屋ですわ」と彼女は云った。
「何でも屋?」と僕は聞き返した。
「ええ。そうですわ。何だかこう、一通りでない事をみんなやるんです」
「そりゃ御苦労でしょうね」
「いえ、それほどでもありませんわ。私なんか楽な方ですもの」
「だって、あなたは――」と言いかけたが、僕は黙ってしまった。
三、
(この女はよくよく注意しなければならないな)
僕は得体のしれぬ女の妙な所作に警戒した。だが、それと同時に脳裏に稲妻が走ったような心地がした。
長く錆び付いたままのギヤが徐に回り出す様だった。
四、
僕は彼女が何をしているのかよく分らなかった。すると彼女もしばらく口をつぐんでいた。それから急に笑い出して、「まあ、いいじゃありませんか」と云いながら、自分の前にある皿の上のものを指した。見るとそれは生牡蠣であった。
この時、僕は自分の席を立ってこの女と一緒になった。そしてこの女は間もなく僕の妻になった。
僕は新婚旅行として京都に行った。京都には三日ほど滞在した。その三日目の晩、僕ら夫婦は夜遅くまで起きていた。
五、
閨の中での睦言は、筆舌を尽くすに及ばない。読者諸氏の想像に任せる。
いやはや歯溝も歯幅も違うギヤでも、組合せ次第で不思議と噛合うものである。




