ビンの真実
八話「芸術家」
山に一軒のログハウスが建っていた。あかりはそこに住んでる茅野モミジに話を聞きに来た。
ジリリーンとドアベルを鳴らす。
「茅野モミジさんいらっしゃいますか?湯田中サクラの大学の先輩だった野沢あかりです。」
中からモサモサ頭の女性が腰をかがめて出てきた。
「えっと、、何のご用でしょうか?」
「植木人志さんをご存じですか?彼について少しお話をお聞きしたいのですが」
茅野モミジはなぜいきなり彼の名前が出てきたので疑問符を頭に浮かべていた。
「今、植木さんの行方を探していまして。茅野さんが以前、彼と同じ職場だとお聞きして、何かご存知のことがあればと思いまして。いかがですかね?」
「んー、、確かに彼とは同じ会社でしたがそんなに関わったことはないので協力はできないと思います」
と茅野は扉を盾にするかのようにしてビクビクした様子であかりに対して警戒していた。
おかしい、茅野さんは植木さんと何度も飲み会に行ってるはずなのにどうしてこんな嘘をつくんだろう。
「少しでもいいので何か植木さんのことについて知りたいのでお願いします」
頭を下げるあかりを迷惑そうにしていると、あかりの後ろの方から下駄の音が近づいてきた。後ろを振り返るとそこには白い着物を着た白馬ユキが風呂敷を持って立っていた。
「あっ野沢さんどうしてこちらに?」
「私は植木さんのことについて同じ会社だったモミジさんに話を聞こうと思って、白馬さんこそどうして?」
「私はモミジにちょっと話があって、、その、、これを」
と白馬は持っていた風呂敷を軽く持ち上げた。
「ユキ、、それって」
モミジはそれを見て顔を青ざめさせた。その風呂敷をよく見ると植木の遺体発見現場に落ちていた風呂敷と同じ模様の色違いだった。
「私はモミジ、ちょっと中で話させてもらえるかしら?野沢さんもいいですか?」
動揺するモミジを尻目に行くユキに続いてあかりも家にあがらせてもらった。
家に上がるなり、ユキは持っていた風呂敷を木のテーブルの上に広げた。
「野沢さん先に私の方から話を始めてもいいでしょうか?」
「ええ、まあ、、どうぞ」
あかりは動揺するモミジの顔を見て植木の話が聞けるような状態ではないことを悟り、ユキに譲った。
「ユキ、、その、、」
「モミジ、この風呂敷はあなたのよね、濡らしたら紅葉の柄が浮かび上がったわ。それに春雪のシリアルナンバーを書き換えたでしょ」
ユキは鞄の中から今日、あかりが公園で見つけた春雪を取り出し、瓶の底に書かれているシリアルナンバーを見せた。そこには”197”と書かれていた。
「野沢さん、本当はここ197ではなく177なんです。ここの9のところ見てください、わかりにくいかもしれませんが少し削ってあるんです」
「え?」
確かに数字のところを見ると新しいく削られている跡があった。
「本当だ、、では私が見つけたあの春雪は白馬さんのではなかったってことですか?」
するとモミジがいきなりユキに向かって土下座した。
「ごめんなさい!春雪を持って行ってごめんなさい!」
「モミジさんどうしてそんなことを?」
あかりの言葉に口ごもるモミジを見てユキは優しく肩に手を置いた。
「モミジ、私は持って行ったことはもう咎めないわただ、どうしてそんなことをしたのか教えてほしいの。このままだと私はあなたに裏切られた気分になって悲しいわ」
ユキの言葉に顔を上げたモミジの目には涙が溢れ出ていた。
「ヒグッ、ウウッ。実は、、ウミのお腹の中に赤ちゃんがいて、、」
「それだったら言ってくれれば、、」
「だって!あの日私もはじめて知ったのウミに写真見せてもらってはじめて、、」
「何?モミジ、はっきりしてちょうだい、なにを知ったの?」
泣きべそをかいてたモミジは覚悟を決めたかのようにユキの目を見てはっきり言った。
「ウミのお腹の子の父親は植木くんなの!」
その言葉を聞いた瞬間、ユキはモミジの肩から手を離し、後ろに倒れそうになる。
「危ない!ユキさん大丈夫ですか?」
倒れるすんでの所であかりが支え、ユキを見ると絶望した表情だった。
「、、、嘘、、嘘よ!」
「ユキ、ごめんなさい、、」
ふたりは少し話したいと言って奥の部屋に行った。その間、あかりは出されたお茶を飲んで話が終わるのを待った。
それにしても植木人志はひどい男だな。婚約者がいるのに子供を作っていたなんて、一応門さんにメールしておくか。と、自分のスマホを見て思い出した。ユキのスマホに載っていた植木の写真は全部、横顔や後ろ姿ばかりで目線があるものやツーショットの写真が一枚もなかった。
そう考えると植木の本命はウミなのではないかと思った。
「まさかね、、だとしたら詐欺師だな」
「あの、、野沢さんでしたっけ?先ほどは取り乱してしまってすみません、お話ってなんでしたっけ?」
奥の部屋から目を真っ赤にしたモミジが出てきた。
「もう、お話は終わったんですか?」
「はい、ユキはもう少しかかりそうですけど、、」
「ちなみに白馬さんが持ってきていた春雪は今どこに?」
「あれは持ち帰った時に割れてしまったんです。だから自分の家にあったものと交換して。番号も誤魔化せそうだったので削ってあの桜の木の下に置きました」
モミジは鞄の中から白髪のカツラと紫色のお婆さんが着るような服を取り出した。それは公園ですれ違ったお婆さん着ていたものと同じものだった。
「そうだったんですか。あれはあなただったんですか」
その時、あかりの電話が鳴った。
「ちょっと失礼します。はい、門さん?どうしたの、、え?安達社長が逃げた!?」




