遺書
六話『シリアルナンバー』
あかりとサクラはユキの部屋で日本酒「春雪」を見つけたことの報告をしていた。
「それでは、これで間違いないか確認をお願いします」
ユキは風呂敷を解き、中の酒瓶を手にすると逆さまにして瓶の底を見る。その時、ユキは一瞬、手を止め瓶の底を凝視していた。
「ユキさん?どうしました?あ!もしかして違いましたか!」
「え?あ、いえ、間違いありません。無くした春雪です。あかりさん、ありがとうございます」
「いえ、見つかってよかったですよ」
「よかったねユキ!」
「うん、、サクラもありがとう」
「あの、今、瓶の底見てましたけど何かあるんですか?」
「あ、はい、こちらです。瓶の底にシリアルナンバーが書いてあって、こちらで管理しているリストと照合することができるんです」
瓶の底には確かに番号が入っていて”197”と削られていた。リストも見ると番号の横に手書きで人の名前や自治体の名前など誰に渡したのかがわかるようになっていた。
「そうなんですね。それにしても197って随分早い番号ですね。もっと千とか行ってるかと思いました」
「この春雪は瓶が特注品なので年に数個しか作れないんです。なので数があまりないんですよ」
「へーえそうだったんですね。それにしてもリストに載ってる人たちの名前が凄すぎますね。大臣に海外のお偉いさんまで有名人の名前ばかりだ、、、」
「いえ、、そんな、、」
「あ!そうだ、ユキ。みんなにも早速、知らせよう!」
「そうね、みんなにも心配させちゃったわ、私の方から連絡するわ」
リリーンリリーン
あかりの電話に門から連絡が届いた。内容はユキに届いたという遺書を見たいということだった。その時、あかりはユキの気持ちを考慮して、また後日にしようかとしたがこれをきっかけに自分もその遺書の話について聞けるだろうと思い聞くことにした。
「あのーユキさん、、その、、彼氏さんから届いたという遺書についてなのですが、、見せていただく事って出来ますか?」
「はい、是非お願いします!彼から届いたのがこれです」
ユキがスマホの画面をあかりに見せ、それをあかりは門さんに送った。
「これが遺書ですか、、婚約者さんのお名前やご職業などは?」
「植木人志です。仕事は以前まではIT企業に勤めていたんですが、そこを辞めてここ最近はうちの酒造場で跡継ぎのために働き始めてたんです」
「跡継ぎ?ということはお二人は結婚するんですか?」
「え!?そうだったの?」
「うん、、実は昨日の花見の時にみんなに言おうと思ってたの。でも、昨日の事があったから言えなくって、、」
「そこでこの遺書ですか、、」
「そっ、その遺書なんですが、彼からのものとは到底思えないんです!」
「それは、どういう事ですか?」
「こんなことを言うのもおかしいと思われるかもしれませんが、彼は一度も私のことを”愛してる”なんて気恥ずかしいと言って、言ったことがないんです。それにこんな遺書を残すような気が回る人じゃなくて。でも、ここ一週間、音沙汰がなくて、、心配で、、グスッ、、」
ユキの目に涙が流れる。
「植木さんの写真とかってありますか?」
「はい、こちらです」
ユキのスマホの画面には植木が仕事をしている様子が写っていた。あかりが誤ってスマホの画面を写真一覧の画面に戻る。サクラが一覧に載っていた一つの写真を見つける。
「あ!これ、昨日の花見の写真?」
サクラがユキのスマホの写真一覧に載ってた一つを開くと桜の木の下で笑う四人の女性が料理を囲んで肩を並べていた。
「あ、みんなに送るの忘れてたわ、ごめんなさい。今送るわ」
ユキがスマホを操作して、みんなに写真を送る。
「バタバタしてたから仕方ないよ、気にしないで、、それよりあかり先輩!ユキの彼氏さんを見つけてください!もし、遺書が彼氏さんのじゃないのだとしたらどこかにいるってことですよ!ね、ユキ!」
あかりはその望みは叶わないことを知っている。ユキに見せてもらった写真の植木人志と公園で見た死体の男性が同一人物である。だからユキに真実を伝えなければいけないと分かっているが、それを言って彼女を傷つけたくはない。
どうすればいいのかと悩んでいると、門さんから電話が来た。
「はい、どうかしたの門さん?」
門からは植木が前いた職場に行くのであかりも一緒に行くかと言う誘いだった。
「分かった。私も行くから下で待ってて」
あかりは通話を終えるとユキのほうを向き、ユキの手を握った。
「ユキさん。必ず、探偵野沢あかりが婚約者の植木さんを探し出して見せます。心配しないでください」
「、、、ほんとですか?」
「ユキ、安心して。先輩はね探偵業でも一番得意なのが人探しなんだよ!昔行方不明だった女の子をすぐに見つけたりしてすごいんだよ。だから、植木さんもきっと見つかるよ、ね」
ユキはその言葉を聞くと安堵の表情で頷いた。あかりはその表情を見て罪悪感が湧いたが今はこれで彼女の心を安定させるしかないと自分を納得させた。
そして、あかりはユキ達に見送られながら門さんと共に植木人志の前の職場に向かった。




