雪
五話『写真』
あかりと門さんは公園から車で十分ほどのところにある酒屋「白馬酒造」に着いた。入り口でサクラがあかりを待っていた。
「あかりセンパーイ」
「サクラ、ごめんね待たせた」
「いえ、ユキは中にいます。ん?先輩、後ろの人は、、」
「あっ、刑事の門さんと部下の人たち」
「警察?え?まだ捜索願いは出してないって言ってたんですけど、、、どうゆうことですか?」
あかりはサクラに公園であった事件のことを説明した。それを聞いて、サクラは動揺した。あかりに帰るように言われたがユキが心配だからと同席を願った。
「お願いします。今のユキは本当に精神状態が不安定なんです!だから、、刑事さんお願いします!」
「んー、、わかりました。ただ捜査の妨害をするようなら退席してもらいますが、いいですか?」
「はい!ありがとうございます」
話がまとまった三人はサクラの案内で酒造の中にある事務所に入った。部屋にはユキと灰色の生地に銀の刺繍で出来た雪の結晶が散りばめられた着物に「白馬酒造」と刷られた紺色の法被を羽織った女性が一緒に座っていた。
「雪路さん、こちらが探偵の野沢あかりさんです」
「初めまして野沢あかりです。今回、ユキさんから依頼を受けて参りました」
「白馬酒造当主 白馬雪路です。ユキからお話は聞いております。あの、後ろの方々は?」
雪路はあかりの後ろに立っていた門さんたちを見て不審な目で見た。
「申し遅れました。湯田警察署の門です。後ろのは長谷と谷川です」
「警察?どう言うこと?ユキ、植木くんのことはまだ警察には言ってないはずでは?」
雪路がさらに厳しい顔つきになると隣にいたユキが恐縮し始めた。その様子を見たあかりは咄嗟に門さんの前に出た。
「あの〜私が言ってしまったんですよ!」
陽気に話すあかりを周りは驚いた顔で見る
「だって〜遺書なんて聞いたら驚きじゃないですか、この門さんなんですけどね、すごく頼りになるんでなんでも言ってください!ほら、門さん達もそんな怖い顔してないで笑顔、笑顔〜」
「あ、アッハハ、、はい、なんでもどうぞ」
ぎこちない笑顔を浮かべる門さん達を雪路は呆れたようにため息をつく
「わかりました。それで、一体なんの御用なんですか?」
「その前に、門さん。私は雪さんからご依頼の話を聞こうと思うので、門さん達はお母様と話しててください。ユキさん、どこか別の場所で話すことってできますか?」
「え!?えっと、、」
ユキが雪路の様子を伺う。
「ユキの部屋をお使いください。ユキ、ご案内して」
「はい、お母様。あかりさんこちらへどうぞ」
ユキに案内されあかりとサクラは事務所を出て敷地内にある自宅へ向かい、事務所には雪路と門さん達が残った。
「それで、お話とは一体なんですか?」
「実は今朝、近くの公園で身元不明の男性遺体が発見されまして。現在こちらで働いていると言う若い男性だという目撃証言がありまして。写真などがあれば拝見させていただきたいのですが」
雪路の顔が青ざめ、後ろの棚にあった写真を手に取って門さんに見せた。
「社員全員で撮った集合写真です。真ん中の雪の右側にいるのがうちで一番若い社員の植木人志です」
写真には白馬酒造の法被を着た社員が、その中で満面の笑みを浮かべるユキさんと若い男性が腕を組んで写っていた。その男性の顔は公園にいた遺体と同じ顔だった。
「実は彼から今朝方、娘のところに連絡が来て、そこに遺書のようなものが書かれてたんです。刑事さん、、、まさか、、、その公園で亡くなられていたというのは彼のことでしょうか?」
雪路はさらに青ざめた顔で門さんの顔を覗き込む。
「それはわかりません、何か植木さんの私物などはありませんか?」
「それならロッカーに何かあるかもしれません。えっと、、白木さん!白木さんいる?」
雪路は事務所の扉から顔を出し、店の方にいる中年男性に声を掛ける。
「はい、奥様」
「ちょと植木くんのロッカーに刑事さん達をご案内して。白木は植木の上司なのでなんでもお聞きしてください」
「ありがとうございます。長谷、谷川、行ってくれ」
『はい』
白木に案内され、更衣室に向かう二人を見送ると、門さんは雪路と話を続けた。
「それで、植木さんからの遺書の内容はどのようなものだったんですか?」
「ええ、、確か、ー罪を犯したからもう一緒にいれないーみたいなことだったと思います。詳しい内容は娘のスマホの中にありますが、、」
「わかりました。それならあかりの方に聞いてみます」
と言ってスマホをを取り出し、あかりに連絡をする。
ーピロン♪
すぐに返信が来た、内容を確認するとスマホの画面の写真が写っていて、そこに遺書の内容が書かれていた。
(愛するユキへ 実は君に謝らなければならないことがある、僕は君に対してずっと嘘をついていた。君という素晴らしい女性がいるのに嘘をつき続けるのが辛くなった。死んで詫びることにするよ、こんなことで許されようなんて思わないが、自分勝手なことをしてほんとにごめん、愛しているよ)
と謝罪の言葉が書かれていた。
「植木さんと娘さんは恋人関係だったんですか?」
「はい、付き合ってもう一年以上で、二ヶ月ほど前に婚約者になったばかりだったんです。だから後を継げるように勉強も始めたばかりで、それなのにこんなことになるなんて、、、うう、、」
雪路は顔を手で覆い肩を震わせる。
「ここに書かれている罪について白馬さんは何か心当たりはございますか?」
「いえ、全く。娘に聞いてもわからないようで、それに、彼は好青年で罪なんか犯すような子ではないんです!」




