春雪
二話「消えた酒」
『結婚!?』と一同一斉に驚きの声をあげた。
その声を聞くとサクラは嬉し恥ずかしそうに頬を染めた。その様は後ろに咲く満開の桜のようだ。
「今日はこの事を一番にみんなに言いたくって集まってもらったの、あ。式の段取りとかはまだ決まってなくて、みんなにはぜひ来てもらいたいんだけど・・・どうかな?」
「もちろんだよ!行くに決まってんだろ!なあ、みんな」
「そうよ、そうよ、絶対に行くわ。なんて言ったってサクラの晴れの舞台ですもの、あ!私メイクしに行ってもいいかしら?」
「あ、じゃあ。ウチは思い出のスクリーン作る!」
「嬉しい!私からもお願いしようと思ってたの。ユキとモミジにもお願いしたいことがあるんだけどいいかな?」
「あら、何かしら?」
「ユキには着物を選んで欲しいの、モミジには当日飾る絵を一枚お願いしたくって、どうかな?」
「フッ、もちろんいいわ。私がやるからには最高の物を選ぶわ、ほかの皆の着る物も選んであげる」
「私も大丈夫です。もう、インスピレーションがいっぱい浮かんできてます!是非やらしてください!」
「ありがとうみんな、嬉しい!」
「よし!そんじゃあ、今日はお祝いだな」
「あ、ちょっといいかしら。私、いいものを持ってきたの」
ユキは持って来た風呂敷を鞄から引っ張り出す。しかし、ユキは次の瞬間驚きの表情に変わった。
「ユキどうしたの?」
「ないの、無くなってるの。ちゃんと鞄に入れたはずなのに、、、」
「だから何がないのよ」
「今日、みんなと会うからって母が持たせてくれた一升瓶の春雪<はるゆき>なんだけど、、、」
それを聞いたみんなも驚きの表情を浮かべた。無くなったという一升瓶の春雪はユキの実家の酒蔵で作られている日本酒で一本百万もすると言われる最高級の日本酒。瓶は桜の木が浮かびあがったところに雪の結晶が白い粉で吹きかけられている芸術的なデザインで、例え瓶だけだったとしても数十万はすると言われている。
「どうしよう、、」
「どこかに転がってたりしてたり、、、」
「そうね、まずは周りを探してみましょう」
みんなで一時間ほど周囲を探し回ったがどこをみても日本酒は出てこなかった。元の場所に一人戻ったサクラはどこかに電話をし始めた。
電話から十分ほどすると、野沢あかりがサクラのもとに駆けつけてきた。
「先輩、忙しいのにすみません」
「いいよ、ちょうどお昼休憩だったから。それに、、あの金賞を取った日本酒。春雪が行方不明となれば黙っていられない!そう、これは探偵の腕の見せ所!私に任せなさい!」
「先輩、ありがとうございます」
急に張り切り出したあかりはまず状況確認を始めた。
一人目 湯田中サクラ 老舗和菓子の湯田中堂の三人姉弟の次女。新婚。
「それでは、サクラさん。まず、春雪は最初、どこにあったのですか?」
「えっと、確かユキが鞄の中に入れて持って来て、私と会った時にいいもの持って来たって言って、私に見せた後はここのシートの上に置いて、公園の桜の写真を撮りに行ったので私がここでずっと見てました」
「ふん、その間誰か鞄に近づいたとかは?」
「まあ、通り道なんで横を通る人はいましたけど、、鞄に近づいた人はいないですね」
「そうか,,その後は動かしたりした?」
「うーん、、ちょっと分からんですね。ユキに聞いて見ないと、、」
「そのユキちゃんは今どこにいるの?」
「来た道を戻って探すって言ってたんで、、電話して呼んでみますね」
サクラはユキに電話をかけ事情を話し、呼び戻した。
「今、戻ってくるそうです。すごく焦ってたけど大丈夫かな、、」
「そりゃあ、あんな高級品無くせばね。そういえば、なんでユキちゃんはそんな高級品持ってたの?」
「ああ、ユキは春雪を作った酒造の子なんですよ」
「え?あの白馬酒造の?」
すると、サクラたちの元にユキが戻ってきた。
二人目 白馬ユキ 白馬酒造の一人娘 彼氏持ち
「改めまして、野沢あかりと言います」
「白馬ユキです。私の不注意のせいでご迷惑をかけてしまい申し訳ありません」
「いいんですよ。それに春雪は最高級の日本酒。この探偵あかりが必ず見つけ出してみますのでご安心を!」
「ありがとうございます。サクラもありがとう・・」
「ううん、気にしなくていいよ困った時はお互い様なんだから」
「早速ですが、ユキさん春雪を最後に見たのはいつですか?」
「ええ、、そうですね。最後に見たのはサクラが乾杯の挨拶する前に鞄に入ってるのを確認したのが最後です。その後にサクラの結婚の報告を聞いたから、乾杯をしようと思って鞄の中から出そうとしたら無くなっていたんです」
「ん?サクラ、あんた結婚するの?誰と?」
「あっ別所ですよ。ミステリーサークルにいた別所」
「は?何、あんたらいつの間に付き合ってたの?」
「ハハ、まあ・・先輩に相談した時ですかね」
「あ〜あの時か、、」
「あの〜サクラの結婚相手って二人の知り合いなんですか?」
「ええ、そうなんですよ。その別所っていうのがうちのサークルの後輩なんですよ。でもそうか、あの時の二人がね」
「もう、私のことはいいですから、それよりも無くなった春雪の事に戻りましょう」




