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歓楽街を禁止された男爵庶子、言葉の通じない娘を買う 〜実は彼女は日本から来た異世界人?〜   作者: 三多来定


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84.ユレシア、まとめる

 ランドン伯爵家別邸のエミールの私室。


 室内のエミール、アリエノール、サツキ、カロリーヌ、ルル、テシア、キサラは、ユレシアの話を聞いていた。


「まずは妖精の目的ですが、『人間と楽しく暮らせる国を作る事』です。しかし、妖精はサツキにしか見えません。サツキに触れると見えるし話せますが、四六時中そんな事をしていたらサツキの体が持ちません。つまり、妖精の国を作り、妖精が人間と楽しく暮らすのは、無理なのです」


 ユレシアはキッパリと言い放つ。

 全員、頷いている。


「しかしサツキは妖精の願いをなるべく叶えてやりたいのです。これは、初代ルナベルもそうでした。きっと何か切り離せない繋がりがあるのでしょう」


 ユレシアがサツキを見るとウンウンと首を縦に振っている。

 アリエノールも頷いているので、アリエノールにも分かるのだろう。


「サツキはこちらの言葉を話す事がまだあまり上手くありませんが、妖精と19年間関わりがなかった事、元いた世界の知識や常識がある事などで、妖精がサツキを利用していると理解した上で折衷案を打ち出しました」


「ユレシア様、すごい! 好き!」

 サツキは拍手をする。

 

 ユレシアは「好き」がつい出てしまうサツキに微笑む。


「サツキが話せない時から、常に表情や仕草を読み取っていたし、サツキの食べ物の好き嫌いもいつも観察していたしね。誰よりも理解している自信はあるよ!」


「いや、キモいわ!」

「それ、ストーカーですよ!」

 キサラとルルが即座にツッコミを入れる。


 カロリーヌとアリエノールとテシアはクスクスと笑っている。


「とにかく、いちいち告白し合うな! ユレシア君、続けてくれ」

 エミールは呆れたように言う。


「はい。その折衷案ですが、広さを限定し、妖精と触れ合える場所を作ることです。サツキは王城くらいと言いましたが、もっと狭くてもいいと思いますし、日にちや時間も限定してもいいと思います」


 カロリーヌは「なるほど……」と小さく呟く。


「問題は、『サツキに触れないといけない』というところですが、サツキは自身の検証によりサツキの血が有効と実証しました。しかしこれはサツキの命に関わります。ここにいるメンバーはサツキの体に傷をつける行為を良しとはしません」


 ユレシアは全員を見渡す。

 もちろん、全員大きく頷く。


「そこでサツキの提案は、血を水に混ぜて薄めて、その水で育てた植物に同じ効果があるかどうか、そもそも、サツキの血液の成分に他の人と違う何かがあるのか、などを調べたら、血液を大量に必要としなくて済むのではないかということですが、この研究に関しては血液採取や保管、分析など専門的な知識と設備が必要となります」


 ここまで話したところで、カロリーヌがスッと立ち上がり、挙手をした。

 どうやら絶対に発言したいようだ。

 ユレシアは苦笑しながら「カロリーヌ様、どうぞ」と言う。


「サツキの血液の研究と実験ですが、わたくしに任せていただきたいですわ。先程も申し上げましたが、わたくしは以前、遺伝に関する研究をしておりましたので、秘密厳守できる方々で医学チームを結成して契約しておりますの。もちろんエミール様とユレシア様にもお会いいただいて、新たに作成した契約書で再契約になりますが、人員の選定が不要のため絶対に良いと思いますわ」


 カロリーヌは興奮を抑えきれないのか、早口で一気に話す。

 サツキは聞き取れなかったのか、ポカンとしている。


「そうだな。そちらはカロリーヌ嬢に任せよう。契約書はユレシア君が作成して、医学チームメンバーには全員会わせてもらおうか。血液の大量採取禁止と秘密厳守とサツキに手を出さないことが大前提だ」

 エミールは腕を組みながら真面目な表情で言う。


 相変わらずの溺愛ぶりに、ユレシアとテシアとキサラは顔を見合わせて苦笑する。

 カロリーヌは嬉しそうに「承知しましたわ」と言いソファに座る。

 

「私も契約書の作成は承知しました。この件に関しては、研究結果により方向性が変わりますので、再度話し合いたいと思います。次に明日のヴァルモン公爵への聞き取りの件をエミール様からお願いします」

 ユレシアはエミールが頷くのを確認してから着席する。


「明日は王城でルーファス様立ち会いの下、ヴァルモン公爵の聞き取りをする。こちらは私とユレシア君とキサラ君で登城しようと思うので、テシア君とエルレン君で女性たちを守って欲しい」


「承知しました!」

 テシアは立ち上がって返事をする。


 ユレシアとキサラも「はい」と姿勢を正す。


 エミールは頷くと、アリエノールとサツキを見た。


「アリエノール様とサツキは、決して悪いようにはしないので、こちらに任せて欲しい。あと頼めるのなら妖精にこちらの情報をニイナ・ハミルトン公爵令嬢に話さないで欲しいと……」


「それはおそらく大丈夫ですわ。妖精たちは人間関係には全く興味がありませんもの」

 アリエノールはふふっと笑う。


「興味ない割には……なあ、ユレシア君」

 エミールはユレシアに目線で訴える。


 取り込み中を妖精にバラされた事を言っているのだろう。

 確かに興味ない割には、ユレシアとサツキの事も知っていた。


「そうですね。お見通し感がありましたね……」

 ユレシアも目線でエミールに返事をする。


 サツキは2人のやり取りを見て、パンと手を叩いた。


「分かった! やるとき、見ないで、言っとく!」

「サツキさん! お二人が隠して話していたのに、言ってしまってます!」

 ルルは慌てて目の前のサツキの口を押さえようとする。


「言ってない! エッチ言ってない!」

「今ハッキリ言いましたよ!? この片言失言妖精姫はっ!」

 ルルは頭を抱える。


「大丈夫ですよ。そちらも妖精は興味ありませんわ。先日はきいたから答えただけでしょう」

 アリエノールは冷静に答えている。


「ああ、なんか、もういいか、その件は……。ええと、質問がないのなら終わりにしようか」

 エミールは疲れたように言い、全員を見回す。


 結局特に質問もなく、アリエノール以外、各々エミールの部屋を出ていったが、キサラだけは部屋を出てすぐに、サツキに「妖精に見られても平気なんだ?」と余計な事を尋ねている。


「キサラ兄さん、サツキに変な質問は……」

「へいき!」

 

 サツキの堂々とした返答に、ユレシアは「平気なの!?」と声を上げる。


「まじか! 俺が見てもいいの?」

「ダメ。キサラ様、じゃま!」


 どうやら、サツキの中では、邪魔かそうでないかの問題らしい。


「わたくしが家具と一体化して決して邪魔をしなければ拝見しても?」

 カロリーヌまで参戦する。


「カロリーヌ様!?」

「お嬢様!?」

 ユレシアとルルが声を上げる。


「……カロリーヌ様、見られる、恥ずかしい」

 サツキは少し考えて答えている。


「あら、残念ですわ。仕方ありませんね。テシア様にも断られましたしね」

 カロリーヌはサラッと爆弾発言をする。


 そういえば、テシアとエルレンの行為を見学したいとかなんとか言っていた! とユレシアは頭を抱える。


「カロリーヌ様、お気持ちは察しますが、ご自分も見られるのはお嫌でしょう」

 テシアはこんな話題でも真面目に答えている。


「わたくし経験がないので分かりませんが、人の嫌がる事をしたい訳ではありませんわ。潔く諦めます。ああ、そうですわ。医学チームにお手紙を書かなければ……」

 カロリーヌは残念そうだが、無理を通す気はないようだし、今やるべき事が優先なのは相変わらずである。


「カロリーヌ様、私も契約書を作成する上で内容についても確認したいので、ご一緒してもいいですか?」


 カロリーヌはユレシアに「もちろんですわ」と言い、結局護衛の観点から、全員でユレシアの客室に移動したのだった。

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