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第二話 騎士の矜持

 ゲームスタートを宣言したが、勝手がわからない。

 一体、何をすれば良いのか……


 「あれ、サクラさんですか?」


 聞き覚えのある声だ。

 夜龍じゃない、ふれぐらんすでも、アリスでもない。だけど、聞き覚えのある声。


 振り返ると、純白のマントと甲冑のようなものを纏った典型的な騎士の風貌をした男が立っていた。


 そして、俺はその人を知っている。


 顔は見たことないけど、その雰囲気が、ある人と酷似しているんだ。


 「アルス……さんですか?」


 「そうですよ。

 "騎士オーダー"のクランリーダー、"アルス"です。」


 第一村人が知り合いで良かった。

 安堵で胸を撫で下ろしているとアルスが不思議そうな顔で見てくる。


 「おかしいですね、ハル君、リン君、カルマさんはもう既に街を発ってますよ?」


 遅かったか……

 まぁ、焦っても仕方ない。アイツらが簡単に死ぬとは思えないから俺は死なないように冷静に追いつけば良い。


 「諸事情があって参戦が遅くなりまして……

 追いつきたいんですが、勝手がわからなくて呆けていたんですよ〜」


 「そうなんですね!

 でしたら、こちらへ、ギルドでこの指輪をもらう事でゲームの第一歩に立てますよ」


 そう言ってアルスは自分の人差し指に嵌められた指輪を見せながら手招きをする。

 指輪を付けるとなにがあるというのだ……

 と考えながらもアルスについて行くことにした。


 「なにか、聞きたいことはありますか?」

 

 歩きながらアルスが質疑応答を始めてくれた。

 聞きたいことはたくさんあるが、まずは初歩の質問から行こうかな?


 「この街の名前ってなんなんですか?」


 「"聖なる街ラヴィンス"ですよ

 他の街の名前や地名などはギルドで地図を見ながら説明しましょう。そっちの方が分かりやすい。」


 「ラヴィンス……ありがとうございます。

 あと、ちょっとしたアレなんですが、アルスさんは何故、最初の街に留まっているんですか?願いを叶えるためには先に向かわなければならないですよね?」


 結構気になっていた質問を投げかけてみた。

 すると、アルスは歩みを止めて振り返り、こちらの顔を見てきた。

 「あれ、地雷踏んだ?」と思ったが、別に悪い雰囲気を顔から感じ取れないし、なにか言いにくい理由があるのかもしれない。


 「あ!ずけずけと……すみません。」


 「いえ、大丈夫です。

 簡単な話ですよ、私は……」


 アルスが辺りを見渡して街を行き交う人々を見守るように見渡したから口を開いた。


 「攻略を諦めたプレイヤーを守るためにここに残ったのです。

 死を恐れるのは普通のこと、死を恐れ、籠るものに私は敬意を示し、この安寧を守ると誓ったんです。」


 ハッとした。

 NPCだと思っていた人々だが、その指には皆、指輪が嵌められている。アルスと同じものだ。


 つまり、ここにいる人達はゲームだと思って起動した結果、強制転移させられ、死の恐怖に怯えて街に留まった人達なんだ。


 「まぁそれに、向こう側、攻略に向かったメンバーには"騎士王"がいますからね」


 アルスは冗談まじりにそう言った。

 騎士王、なるほど、"彼"も参加しているのか、このゲームに。


 「まぁとにかく、お互い考えることは一緒なんですね」


 「え?なんです?」


 「あー、いや、なんでも……ないですよ。」


 アルスは俺の何かを隠したような顔と態度を見て何かを察したのか、小さく頷き、また歩き始める。

 

 「サクラさんは、結構ロールプレイが上手い人だったんですね」


 「え?」


 「普段のゲームプレイは何というか、激しい……じゃないですか。

 これが、サクラさんの本性……本質なんですね」


 本性て……

 まぁ、確かにそうかもしれない。

 ゲームしている時はどんな外道行為でも嬉々として行えるけど、現実だとそんなことはできない。

 ゲームだからこそ、やりたいことが出来て、やりたいことが出来るからこそ、いつもと違う自分が出せる。


 「こういう俺も、ゴミプレイする俺も、どっちも俺ですよ」

 

 「そうでしたか……そうですよね。」


 ーーー


 ある程度歩くと、木造建築の建物の前に着いた。


 「ここがギルドです。」


 「はぁ……」


 そういえば、このゲームのジャンルって何だ?MMORPG?


 「あぁ、職業は無いですよ。

 ここも、ギルドという名前をしていますが、本質はチュートリアル用の施設です」


 そう言うアルスにエスコートされるように中に入る。


 中は簡単な作りで、カウンターとちょっとの席、薬局みたいな感じになっている。


 「ようこそ、ギルドへ

 こちらでこの世界のご説明を致します。」


 カウンターに立っている女性がお辞儀をして、そう言った。


 「聞いてきてください。私はここで待ってますので」

 「はい。」


 カウンターの前の席に座ると、目の前の女性が説明を始めた。


 「この世界は"四体の龍に支配"されています。」


 相槌は打たなくていいか、話を遮らないように一旦、聞くフェーズだ。


 「四体の龍はそれぞれ、

 春の大地に巣食う【春天龍】。

 夏の大地に根付く【夏天龍】。

 秋の大地に蔓延る【秋天龍】。

 冬の大地に渾なす【冬天龍】です。」


 春夏秋冬の名を冠した地名があって、それぞれに龍がいる感じか。


 でも、そこじゃない。


 四体の龍を相手にする……つまり、四回も死線を潜り抜けなければならないということ……か。

 

 「そして、その四体の龍を使役するのは、時空断層の先に存在する"古の帝国ディスガルドの皇帝"です。」


 皇帝……ラスボスか?

 だからエンペラー……ゲームなのか?だとしたらあまりにも安直……まぁいいや。


 「貴方には、旅人としてこの地を巡り、四体の龍を倒し、時空断層の先に座する皇帝を倒してほしいのです。

 もし、皇帝を倒せたのなら、この世界の神がどんな願いでも叶える。と告げています。」


 大体、予想通りか。

 なら、俺の出す回答はこれだ。


 「任せておけ。俺が、龍畜生を刈り尽くして、この世界を救ってやる。そして……全員を生きて帰られせるんだ!!」


 その宣言に女性は驚く様子もなく、「はいはい、いつものね。」みたいな態度でカウンターの下に手を伸ばした。


 「これが、"ステータスリング"です。

 これを指に嵌めると、ステータス等が見れるようになります。

 説明しましょうか?」


 うーむ、正直、自分で触ってみた方が頭に入るから、一旦いいか。

 わからなくなったら聞きにこよう。


 「説明はいらない。

 これを嵌めればいいんだな?」


 回答を待たないまま、人差し指に指輪を嵌めてみた。


 「……で、どうすればいいんだ?」


 初手から詰まった。

 女性は呆れた表情を浮かべながら丁寧に説明をしてくれた。

 多分、この流れをしたのは俺だけじゃないな?


 「ウィンドウを出すぞって思いながら人差し指を動かす……」


 うぉ、ウィンドウが出てきた。


 あー、持ち物はこの中に入れられるんだ…


 ん?てか、職業は、本当に無いんだな……

 装備欄は、頭、腕、胴、腰、足……普通だな。

 アクセサリー系は?……あ、無いんだ。


 で、スキル……は、無くて?武器スキル的なのは有る……と。


 レベルは1で、

 ステータスは、攻撃力、魔法攻撃力、素早さ、HP、MP……

 スタミナとか幸運は無いのか。リアル嗜好……てか、リアルなのか、これ。


 手のひらを開いて閉めて、感触を確かめる。


 全部の精度がVRじゃありえない。

 全部、現実なんだ。と実感させられる。


 「まぁ、とにかく、何となくわかった。

 で、武器は?」


 「鍛冶屋で指輪を見せれば二つ、配給してもらえますよ」


 「ありがとな。」


 そう言って席から立ち上がり、この場を去ろうとする。


 「あ、待ってください!」


 引き止められた。


 「なんです?」


 「これ、支給金です」


 金貨を何枚か貰った。至れり尽くせりだな……


 「ありがとう。ありがたく貰って行くよ」


 金貨をウィンドウのストレージに入れて

 アルスが座っている隣に座る。


 「じゃあ、地名等の説明をお願いします」


 「分かりました」


 アルスが地図を取り出してテーブルに広げる。


 その地図には大きな大陸と小さいのと中くらいの離島が描かれていた。


 「まず、この大陸の西端に位置するのがここ、"聖なる街ラヴィンス"です。この周辺は"聖なる地"と呼ばれています。」


 地図に指を指しながら説明が始まった。


 「このラヴィンスから東南の方向に街道沿いで向かうと到着するのが、"春の街"があり、その近くに"禁足地"と呼ばれる地点があり、そこに【春天龍】が居ます。

 そして、"禁足地"を中心とした辺り一帯が"春の大地"と呼ばれています。」


 最初に向かう場所はここだな?

 把握した。


 「次に、"春の街"から東側に向かう街道を行くと、"海浜街"に到着します。

 そして、"海浜街"から出航している船に乗り、南側に向かうとこの小さな離島に到着します。この離島には一つの町があり、"彼岸街"と呼ばれていて、そのさらに南にある孤島に【夏天龍】が居ます。

 "海浜街"、"彼岸街"を含む離島と孤島を合わせたのが"夏の大地"です。」


 海の向こう側に有るんだ。

 今は一旦、考えなくていいか。


 「そして、"海浜街"から北に向かう街道を進むと"オータム大森林"が現れ、その森林の入り口に"秋の街"があり、森林の中に【秋天龍】が居ます。

 それらをまとめて"秋の大地"と呼ばれています。」


 森林か……なんかヤベェのが居そうだなぁ


 「最後に、この森林を迂回する街道を進み、北へ向かうと"対冬の街"に辿り着き、その街から船に乗り、この離島へ行くと"前線基地"があり、その基地を超えた先、離島の大半が【冬天龍】の縄張りになっています。

 "対冬の街"、"前線基地"を含む離島が"冬の大地"と呼ばれています。」


 どうですか?と言う顔をしながらアルスが俺の顔を覗き込んでくる。


 「わ……かりました。何となく分かりました」


 「よかったです。よろしければ、この地図、お譲りいたしましょうか?」


 「あ、いいですか?」


 「はい!」


 「では、頂戴いたします。」


 地図を受け取り、ストレージにしまう。

 やるべきことは分かった。向かうべき場所も分かった。


 まずは"春の街"に向かう。

 そこに行けば三人に追いつける。


 「じゃあ、僕は鍛冶屋に向かってこの街を発ちます。

 親切にありがとうございました。」


 「え……えぇ……はい。

 では……お元気で」


 俺はギルドを後にして鍛冶屋に向かった。


 外はいつの間にか夕方になっていた。


 ーーー


 街の中で迷子……

 いや、これは散策したとしておこう。


 散策してようやく鍛冶屋に辿り着いた。


 「すみませーん、武器を貰いに来たんですけどー」


 店に入りながらそう言うと、奥から皮エプロンをつけた女の子が出てきた。


 「おう!武器を取りにきたんだな、新人!

 遅かったじゃねぇか、もう昨日のうちに皆んな持っていっちまったぜ!まぁ、新人の分はあるから心配すんな!」


 そう言って店主……?は店の端に並べてある多種多様の武器を指差した。


 目移りしそうだが、俺はしない。

 だって決めていたから。


 「太刀と、鎌を頼む」


 「お!スパッと決めたな!いいぜ!そう言うの好きだぜ」


 そう言って店主…だよな?…から武器を受け取る。


 鎌をストレージに入れ、太刀を握る。

 何かのアシストのおかげでこんな鉄の塊みたいな武器を軽々しく持てている。


 軽々しく持てているが、これはれっきとした"武器"。

 人も殺せる……凶器だ。


 これで守るか、奪うかは俺次第。

 なら、俺は、これを皆んなを助けるために使う。


 「よし、オッケーだ。」


 自分の中のスイッチを入れ、太刀をストレージに入れた。


 ーーー


 その後、俺は店主から雑貨屋の場所を聞いて向かうことにした。


 「そういえば、アルス以外の騎士オーダーのメンバーとまだ出会っていないな。」


 なんて呟いていたら目の前からアルスと同じようなマントと甲冑を身に纏った女が現れた。


 「……あっは!んー、なるほどねぇ、君がサクラか。不思議だねぇ、そんな顔してるのにあんなプレイをしているなんてさ〜」


 騎士オーダーで軽薄な態度の女……


 「あぁ、"エクリプス"か。」


 「ん!よく分かったねぇ……

 そう。私がエクリプスだよ」


 エクリプスは騎士オーダーの二番手で、あらゆるゲームで弓を扱っていた。

 ああ、あと、とあるゲームにおいて後方職とされていた強弓という大きく重い弓を持って最前線で戦い、固定概念をぶち壊して無双していた。と聞いている。


 「で、そんなエクリプスが何か用か?」


 エクリプスはあざとく人差し指を口元に持っていって頭を傾げる。


 「んー、これと言った用が無ければ話しかけちゃダメなの?」


 「ダメ……じゃないけど」


 「良かった!」


 「でも、先を急いでいるから、これで……」


 足早にその場を離れようとする。


 「あ、待って!」


 エクリプスに手を掴まれる。


 「え、なに?」


 「ん……とね、一つ、気になってさ……

 なんで、サクラは先を急ぐの?そんなに叶えたい夢があるの?」


 そう聞くエクリプスの目は俺を品定めするようなものだった。

 まぁ、ここはしっかりと返答しよう。


 「"皆んなを家に返すためだよ"。」


 「……どういうこと?」


 「"神は一度も、ゲームをクリアしたら現実に帰れるなんて言っていない"。」


 「……神?ん、あの声のことかな?

 でも、それって本当?聞き間違いとか、聞き落としとかじゃなくて?」


 「ああ。しっかりと聞いた。そしたら、アイツは笑ったんだ。

 よく気がついたねって。」


 「……マジなの?」


 「ああ。面と向かって話したんだ。保証する。」


 エクリプスは何かを考える様な仕草をして肩をすくめた。


 「まぁ……分かった。信用するよ」


 これで、エクリプスは……


 「そして、それがサクラが先を急ぐ理由なんだね、引き止めて悪かった。」


 エクリプスは掴んでいた手を離して、ニコッと笑った。


 「じゃ、またね!ばいばーい!」


 エクリプスは俺の進行方向とは反対側に走っていった。


 空はもう、完全に夜になっていた。


 ーーー


 雑貨屋で回復薬を最低限購入し、聖なる街の門前に立つ。

 

 ーーーここから先は死と隣り合わせの完全なる未知だ。


 震える手を掴んで抑える。


 「…ふぅ……よし、行くか。」


 俺はこの旅の第一歩を踏み出す。

 

 「待って下さい。」

 

 また、同じ状況だ。

 また、俺は足止めを食らった。


 「なんですか?アルスさん」

 

 腰に手を当てながら振り向くと、目の前にアルスと、エクリプスが立っていた。


 「……アルスさんに……エクリプスも、どうしたんですか?」

 

 その問いに対してはエクリプスが答える。


 「さっきの話、アルスに話したんだよねぇ…

 それが君の思惑だよね?人を使役するみたいに動かすなんて、悪い人だなぁ

 まぁ、それに乗っかる私も私か」


 エクリプスが怪しく笑う。


 「何のことか……」

 

 はぐらかそうとすると、アルスが割り入ってきた。


 「話は聞きました。

 サクラさんが急ぐ理由にはちゃんと筋が通っている。

 だから、決めました……いや、やっと心に決められました。」


 アルスがゆっくりと前に歩み出てくる。


 「騎士として、サクラさんを……いや、貴殿を"春の街"まで送る。

 貴殿は、私達を救う希望となる。そう確信しましたので……」


 それは、最高の騎士からの最高な申し出だった。


 「いいのか?」


 「ええ。

 ここで貴殿をただ送り出すだけでは、騎士としてこの地に残った意味がなくなる。

 騎士としての矜持に反する。

 だから、案内させて下さい。

 この死と隣り合わせの世界で、"ノーデス"を誓った貴殿の助けになりたい。」


 ……アルスだって人だ。

 死と隣り合わせのフィールドに出るなんて怖いだろう、辛いだろう。なのに、この人はあまりにも騎士として完成され過ぎている。


 そんなアルスが不敵に笑い、手を差し伸べる。

 俺はその手を取り、握手を交わす。


 俺はこの人みたいに高潔にはなれない。

 だけど、対等でいたい。だから、


 「アルス、敬語はやめよう。」


 そう言うとアルスは朗らかに笑い、頷いた。


 「ああ。よろしくなサクラ。」


 「おうよ、信じてるぜアルス。」


 ーーー


 「じゃあ、行ってくるので、エクリプスは"リエル"と"シエル"と共に街を頼む。

 サクラを春の街に送ったら帰ってくるから、3日くらいで帰還する。」

 

 「ん、わかったよ。

 ……死なないでね?」


 「死なないよ」


 エクリプスとアルスはハイタッチを交わす。


 「じゃ、行くか」

 俺がそう告げ、歩き出す。


 「わかった。」

 それにアルスが続いて行く。


 【騎士オーダー】のリーダーと、

 【夜龍ナイトワイバーン】のリーダーが、

一度限りのドリームパーティーを組んで、聖なる地を翔ける。


 門を潜る。


 ここから先は、いや、ここから先も、ゲームではないーーこれは、現実だ。

ご精読ありがとうございました。


第二話、騎士の矜持でした。

アルスはウルトライケメンマンです。


それと、サクラの初期装備は古い旅人風のローブです。

描写し忘れた気がするので書いておきます。

描写してなかったら、5話くらいで触れる気がします


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